妄想の帝国 その72 カルト一掃葬
9月の終わり、ニホン国首都トンキョンの武道館では、アベノ元総理のジコウ党葬が行われ、国内外から大勢の人々が集まっており、取り巻きのダカイチ議員らは浮かれていたが…
残暑厳しい9月終わり。ニホン国トンキョンの武道館では、国内外から大勢の人々が集まっていた。
「さすがアベノ総理のジコウ党葬、やはり人は多いわねえ」
と目を細めるのは故アベノ元総理のご贔屓議員スギタン・ミャクミャク。隣に座る同じく、アベノ元総理が後ろ盾だったダカイチ・バナエ議員も嬉しそうに
「ほほほ、リベラルの馬鹿者ども、クラウドファンディングだって4500万円も集まったのよ、さすがに元総理の葬儀なのよ」
元総理にしては少ない金額であるし(実はジコウ党の下請けビジネスネット極右が政党助成金をもとに出したとのうわさもある)、そもそも、もう家族葬が行われ、某宗教モドキのカルト集団トン一協会施設で隣国でも行われた、アベノ元総理の葬儀。
なーんで、国葬なの、数百億?そんだけの外交効果は見込めないでしょ、値上げに、新型肺炎ウイルスの蔓延での医療崩壊で、国民の生活息も絶え絶えなんだから、とさすがに反対もあり、所属していた与党ジコウ党葬となった。とはいえ、各国の人々が参列。しかし、
「う、うーん、やっぱり、あの隣国の〇×元大統領とかきてるけど、なんで、現大統領とかがきてないのかしら」
「やっぱり、あの、トン一協会の関係者?」
「し、ダカイチさん、まだ野党だのリベラルだのから追及受けてんのよ、私たち。まったく、トン一教会関係者に票集め依頼したのが、なんでそんなに悪いの?」
「トン一教会が、学生たちを大勢で拉致るような真似して洗脳して勧誘したとか、霊障がとかいって高額なお祓いをさせたとか壺を買わせたとか、合同結婚させてニホン女性を韓国人の、同国の女性からもつまみ出されるDVアホ男の奴隷状態にさせたとか、噂があるからなんでしょう、カルトとか言われてるし。カルトって何なのかよくわかんないけど」
「そんなの騙された方がわるいのよ~。議員になるのに票集めが大事なのよ~」
「それにい、ハギュウダンさんとか、まあアベノ元総理もそうだけどお、トン一協会への捜査をやめさせたとか、名称変更して旧悪がバレないようにしたとか、有利に法律を作ったとかいう話もあるし」
「そんなこといったって、ダカイチさんだって祝電とか講演とかしたじゃない」
「スギタンさんだって…、あら、入り口に立ってるの警備の人ってトン一協会の人?」
「そういえば、着てる制服がちょっと違うわね。節約でトン一協会のボランティアを頼んだのかしら」
とおしゃべりしている間に式典が厳かに始まった。
武道館の舞台にはたくさんの菊の花に飾られたアベノ元総理の写真
が
「あら、しゃ、しゃしんが」
「す、スクリーン?」
映ったのは現トン一協会のトップ、教祖の奥さんであるお月様マンマである。
『アベノ元総理の葬儀にご参列の皆様、こんにちは。本日は偉大なる故アベノ元総理のためにお集りいただきありがとうございます。まことに惜しい方をなくされ…』
と喋り続けるお月様マンマ、呆然とする参列者たち。
「な、なんであの人、アメリカから中継してんの?」
「そ、それに白装束で椅子に座って動かない…あれ?なんだか縛られているみたいにみえるんだけど」
とヒソヒソ話をするスギタン議員とダカイチ議員。
とまどう参列者をよそに、お月様マンマの話はトンデモナイ方向にいっていた。
『…皆様、故アベノ元総理とともに往きましょう、新たなる世界へ旅立つのです。このサタンの国から、さらなる高みへと』
「へ?」
「は?」
と、議員らだけででなく、参列者が口をあんぐりと開けると同時に
バタン、バタン
非常口を含む各出入り口の扉が閉まり、
トン一協会からの派遣と思しき警備員たちが扉の前を固める。
「な、何が」
「ど、どうなって」
と二議員の言葉と同時に
プッシュ―
白い煙が天井から壁からアチコチから立ち込める。
「ギャー、何よ、これ、ど、毒ガス」
「まさか、しゅ、集団自殺ってやつ?アブナイ宗教にありがちなアレ?」
「と、トン一協会との癒着報道が過熱化して、し、信者から金を巻き上げにくくなってるとは聞いたけど―」
「あ、アメリカとか隣国でも逮捕者が出てるしー、ゴホゴホ。に、ニホン国でも検察がーとか言ってたわああ、そ、そういえば」
「ゲホッ、さ、さすがに、じ、ジコウ党議員もトン一協会と距離…、検察とかの追及をと、止められないとか」
「は、ハギュウダン政調会長なんて、ゴホ、か、神の国を一緒に作る…とか、トン一の、…しゅ、集会で、信者を…前にいったとか」
「だ、だから、あの人ら、…ゲホゲホ、し、信者に恨まれ…、ま、マスコミもいたわよね、トン一と関わりあい…ある人、だから不利なこと言わなかったけど…、今はそうもいかなくて…」
「そ、そういえば…マスコミの役員とか…トン一関係者も、…ここに、みんな」
「ジコウ党も…ほかの党とか…芸能人…ヨツウラとかハシゲンとか…トン一にかかわりのある」
「人、全部…参列…ジコウ党とかで…招待…」
ダカイチ議員の口が閉じて椅子に崩れ落ちると同時に
パターンとスギタン議員が倒れる。
周りで、いや式場となった武道館の全員が倒れた、警備員たちも。
スクリーンに映ったお月様マンマだけがにこやかに笑っていた。
そのころ某米国、政府秘密情報部。
「あー、これで、トン一協会の関係者全員始末できたかな」
「まあな。アベノ元総理の葬儀だから、政財界の大物、特にトン一教会の信者、癒着していた大物たちが集まってくれた。国際外交?とかいってたが、実はアベノのお仲間はほぼトン一だからな」
「奴が引き入れてたんだろう、アベノの祖父はトン一協会に肩入れ、いや利用しあう仲だったからな。アベノいやギジ家全員、そうだ、アイツら全部集まってくれて本当に都合よかったよ」
「我が国やほかの国からもトン一関係の議員たちが参列してくれて助かったよ。トン一との癒着を暴いても開き直る、のらりくらりと逃げるで完全に排除できない。まったくカルトなんぞと関係するとは国民に悪影響を及ぼすだけでなく防衛上も問題だ」
「そんな危険な奴らを一掃できるとは、アベノ元総理ジコウ党はホントにありがたかったよ。始末されるとも知らずに、各国から要人が来るーとか喜んでいたジコウ党の奴らはマジでアホ集団だな」
「だいたい票集めにとカルトとくっつく奴らだ。金をもらえば何でもありのうちのドランプ元大統領もひどかったがな。ま、アイツも消えてくれて助かった」
「まったくだ、トン一カルトの集団失踪ということにすれば、アイツらが全員いなくなっても辻褄があう。消えた奴らの財産をトン一の被害者たちの損害賠償に充てれば、リベラル連中やジャーナリストたちも追及しなくなるだろう」
「しかし、拘束したお月様マンマや分派サンクチュアンリを率いていた奴は独房暮らしとはいえ、武道館の連中や、ほかで眠らせた奴らはどうする?」
「ま、いくらでも使い道はあるさ。お月様マンマやサンクチュアンリのトップには、拷問やら刑務所内でのリンチから守ってやる代わりに信者どもを誘導する映像を撮影させているからな。教主様の有り難いお言葉どおり、生まれ変わって第二の人生とやらを送るよ。原発廃炉処理だの、汚染物回収だの」
「あんなカルトを信じる連中だから、お言葉通り救われるためにはなんでもやりそうだな。しかしドランプだの、ジコウ党議員だのも素直に従うかなあ」
「被害者の苦しみなんぞお構いなしにカルトに擦り寄る連中だ。従わなければ、本当にあの世行き、わが身可愛さでなんでもやるよ。お仲間がカルトとどうかかわっていたか、証言すれば命だけは助けるといえば何でも言うし、やるだろうよ」
「そうだな、国会議員のくせに国民の生活も苦しみもどうでもいい、議員という地位で甘い汁を吸う、トンデモ自説を振り回して悦に入る、そういうことだけ関心のある最低連中だからな。自分のためにどんな卑劣なことでもやるだろうよ、そして裏切りあって仲良く堕ちるわけだ」
「いっそ、ホントにアベノ元総理に殉じる奴は…でないだろうな、意地汚く、矜持もなく刑務所でびくびくしながら生き残ろうとするだろうよ」
遠い国での、こんな会話が聞こえたのか、スギタンとダカイチはうなされつつ深い眠りにおちて行った。
どこぞの国では、まがい物というか、いい加減な国葬モドキを強行しようとしているようですが、まばゆいばかりの本物の国葬さまのすぐ後にやったら、見劣りしまくって大恥ですねえ。みっともない葬儀として後世にのこりそうですが、故人が喜ぶのでしょうか、そんな葬儀。