白蛇の祟り【短編ホラー】
小学校の時、白蛇を見たことがある。尤も、それは野生ではなく、博物館の、檻の中にいる白蛇を、だが。
「白蛇は、神聖な存在。その由来は……」
檻の横には、色々書かれているが、幼い時分にはよく理解できなかったし、ほとんど覚えてない。ただ、すぐそばに来た父が。
「兄貴……お前の叔父さんはな。昔蛇に憑かれたことがあるんだ」
「え?」
私と同じ目線にしゃがみ、話し始めた。その話は、しっかりと覚えている。いや、忘れられないと言った方がいいだろうか。
「白蛇が道端に居てな。叔父さん、蛇が苦手だったから石投げて殺しちゃったんだよ」
「神聖な存在なのに?」
「だからかな、呪われたんだ。その日の夜。全身に鱗みたいな痣が出てきて、高熱でのたうち回ってた。明け方、落ち着いたかと思うと、虚ろな目で何もせず、ただ部屋の隅を見つめるようになった。けど、すぐにまた苦しんで……というのを3日くらい繰り返したんだ」
叔父にはもちろん何度も会ったことがある。けど、そんなことがあったなんて知らなかった。痣なんて残ってないように思うし。
「病院にはいかなかったの?」
「もちろん医者に診てもらったけど、原因はわからず、薬も効果がなかった。で、父さんがお婆ちゃんに言ったんだ。白蛇を殺したって」
「それで?」
「大騒ぎさ。すぐに白蛇を死体を探しに行ったけど見つからなくてな。近所の人達も協力して探したけど見つからなかった。で、その間に叔父さんは家を抜け出して木に登ってたんだ」
「なんで木に?」
「さぁ。けど、すぐに叔父さんは木から落ちた。3メートルほどの高さで落ちて、命が助かったのは本当に奇跡だったと思う。両足が折れて救急車で搬送されて、本当にもう叔父さんは助からないと思ってた。けど、ようやく白蛇が見つかってな。なぜか叔父さんが殺したところとは全く離れた場所にいて、すぐに埋めて供養した。すると、痣や熱が嘘だったかのように消えてな」
「じゃあ、やっぱり白蛇の呪いだったってこと?」
「父さんたちはそう思ってる。叔父さんはその時の事を覚えてなくて、ずっと蛇の目に見られている夢を見ていたらしい」
「ええー怖……」
「お前も、もし白蛇を見つけてもちょっかい出すなよ」
今でも、白蛇の話を聞くと叔父の話を思い出す。白蛇が神聖と言われている理由は様々だが、私も白蛇に限らず、謂れのあるものに不用意に近づかないようにするべきだと思う。
完