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仙の道  作者: たくあん
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橘蓮

「小紫ののこ、、さん?」

入ってきた男が話しかけてきた。男は見た目20代前半、身長が170cm程、細めだった。特徴のない体型とは裏腹に、その目は人を見通すような鋭さを持っているように感じられ、その立ち振る舞いは20代前半にしては波乱万丈な人生を何度も経験してきたかのような特別な雰囲気を漂わせていた。そして顔はまあまあのイケメンだった。

彼の着てる服だけは偶然か必然か黒田徹のものと全く同じようだった。そして、同じような剣を背負っていた。


「あ、、、はい、小紫ののこです。あなたは?」

急展開にはもう慣れたかのようにののこはすぐに切り返した。同時に、木の枝を持っている手をまた少し強めに握った。同じような服装の男がここに入ってきたことがなにを意味するのか、ただの偶然なのかわからなかった。


「ぼくは橘蓮たちばな れんです。数分前まで六本木あたりの自宅で本を読んでいました。あなたは黒田さんですね。すみません、少しだけ会話が聞こえました。」

蓮と名乗る男は徹に向き、言った。


「はい、黒田です。よろしくお願いします。」

黒田は言いながら少しだけ首をかしげた。この橘蓮という男はどこかであったような気がしてならなかったが、それがどこかは全く思い出せなかった。


「黒田さん、小紫さん。ぼくの推測が間違っていなければ、私たちはなんらかの未知の方法で瞬間移動、もしくは転生、召喚、記憶改変のようなことをさせられました。そしていまは古代中国のような場所にいます。」

蓮はあたりを見渡しながら急に話し出した。


「古代中国?」

徹は聞いた。

「それは少しあとに話します。最後の記憶は何年何月何日何時何分でした?」蓮は聞き返した。

「2022年4月4日22時半ごろ。」

「私も同じくらいです。」

二人は返した。


「ぼくもです。どこにいました?」

蓮は続けて聞いた。

「池袋駅前のコンビニ」

「有楽町周辺のタクシーのなかです」


少しだけ間をおいて蓮が話し出した。

「ぼくたち3人はある程度近いとは言え、数十キロ離れた全く別の場所で同時に東京からここにきました。気温からしてここは赤道に近いか、もしくは季節は真夏。外がまだ明るいということは、あの太陽が偽物でない限り、ここは日本ではないか、もしくはいまはもう2022年4月4日ではないです。それに、記憶にギャップはないので気絶して目覚めたわけでもない。こんなことができる人間の技術にはないと思います。」

蓮は意識の上か常に他の二人と一定以上の距離を保ちながら、他にもヒントになるものがありそうかあたりを探りながら話した。


「ということは、時空間転移のようなものってこと?だれが、どうして。。」

今度はののこが聞いた。脳をフル回転してことの因果関係を整理しようとしているが答えが出ていない。


蓮は背後の剣を抜き出して、その鋭さを試すかのようにその辺に積んである木の枝に向けて切り込んだ。木の枝はすべてすっぱり切られ、その綺麗な切断面を見るに、かなりの鋭さの本物の剣に間違いはなかった。


蓮は続けた。

「だれが、どうして、どのような方法でやったかはまだわかりません。なにかのゲームかもしれませんし、別の儀式等の目的かもわかりません。ぼくたちは古代中国のような服を着ていて、持ち物も全くありません。顔は自分のものみたいですが、髪型は古風なスタイルに変わっている。それに、ぼくは右手に傷跡があったのですが、それがなくなっています。ほくろの位置も変わっています。。。これは自分の体ではないような感じです。」

そう聞くと、二人は即座に見える範囲の体を調べた。


「本当だ、よく見たら着てる服も違うし、ほくろの位置も違う!まさか、、違う体ってこと、、、?」

徹は驚きを隠せず大声を出し、ののこもひどく動揺した。

ここで改めてののこが気付いたが、男二人の平素とも言える服装に対して、ののこの服は女性美を少しも無駄にしない上品な古風の黄緑色のワンピースだった。髪には古風の精巧な髪留めも入っていた。髪留めもみずみずしい紫色を呈していた。

蓮が言うように、自分の知っている体じゃない証拠は無数にあった。傷跡、ほくろ、爪の長さ、体つき。。。自分たちにとんでもないことが起きていると、彼女らは嫌でも認識し始めていた。

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