第7話
俺と秋臣の今の状態について考えていたらドアが開き誰かが部屋の中に入ってきた。
秋臣の能力で出していた黒い木刀を消し部屋に響く音に耳を傾けると、部屋に入ってきた誰かは俺の方に近づき俺の寝ているベッドを囲むカーテンに手をかけて静かに開けた。
艶やかな肩まである艶のある黒髪、強い意思を感じさせるキリッとした目に俺の目が吸い寄せられる。
……印象的なこの2点を除いても、体型・しぐさ・雰囲気を見ても、高嶺の花という言葉が浮かぶものすごく綺麗な女性だ。
前世でも男性以上に有能な女性と話した事があるが、その人達に勝るとも劣らない有能さを感じる。
「あら、目が覚めたのね。どうしてあなたがここにいるかわかるかしら?」
「システィーゾとの戦いが終わった後に自分で歩いてきて……扉を目にしてからの記憶が無いです」
「そこまでわかってるなら意識ははっきりしてるわね。本当にいろんな意味であなたには驚いたわ。鶴見 秋臣君」
「……僕は気が抜けて気絶したんでしょうか?」
丁寧な言い方は背中がかゆくなるが、早く秋臣の言葉遣いになれないとダメだな。
「私の見立てもそうね。さっきまで戦っていた精霊級に勝った器物級のあなたが、この治療室の扉の前で倒れたから運び込んで、私がケガの診察と治療をした後にベッドに寝かせたのよ」
「……ご迷惑をおかけしました」
「どれも私の仕事だから気にしなくて良いわ。ああ、自己紹介がまだだったわね。私は上級治癒師で、この第2治療室担当の流々原 流子よ。よろしくね」
治癒師……それも上級か。
秋臣の記憶によると、治癒師は再生や復元などを他者に対して使える異能力者が厳しい国家試験と審査を突破して初めて名乗れる資格で、さらに上級になるには精霊級である事が必須条件となっている。
秋臣のいるこの国の異能力者人口がどれくらいかはっきりしないものの、少なくとも俺の目の前にいるこの人は国に認められた希有な存在の異能力者であり、この学園で考えても最上位に近い立場の人だろう。
「僕は器物級の鶴見 秋臣です。こちらこそよろしくお願いします。……あの、僕はどれくらい寝てましたか?」
「そうね……、4時間くらいかしら」
「そんなに……」
「あの激戦とケガの具合から考えたら短い方だと思うわ。あなたも起きた事だしせっかくだから診察するわね」
「お願いします」
流々原先生が俺の身体に聴診器を当てたりや瞳孔の動きなどを確認した後に、指が何本見えるか、俺の耳元で小さく指を弾く音が聞こえるか、目を閉じた状態で指先で触れられた部分を答えたりした。
異能力だけでなく医学の知識と技術もしっかり身につけているようで、さすがに手際が良い。
「うん、ケガは問題なく治ってるし身体の方は大丈夫ね。ただ疲労や精神的な負担は私の能力じゃ無くせないから、1週間は激しい運動や戦闘は禁止。それと1週間後にもう1度ここに来る事」
「わかりました」
「素直でよろしい」
「あの、いつから日常生活に戻って良いですか?」
「今日はこのままここで身体を休めてもらって、明日からは普通に過ごして良いわ」
「かなり早いですね」
「ケガ自体は私の能力で治せてるからよ」
「なるほど」
「軽い消化に良い食事なら後で持ってくるから、それまでもう一度寝てなさい」
流々原先生に促されて目を閉じると、すぐに意識が遠ざかっていく。
なんだかんだで疲労が溜まっていたようだ。
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