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一度死んだ男は転生し、名門一族を追放された落ちこぼれの少年と共存する 〜俺はこいつが目覚める時まで守り抜くと決意する〜  作者: 白黒キリン
第3章 異世界の男は遠征する

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第10話

 時間が経つごとに視界の揺れや胸の痛みが強くなっていく。


 前の世界の戦場でくらった毒とは別物だな。


 侵食されているのが自分の精神、もしくは魂か? そういったものだとなんとなく理解できる。


『邪仙よりも、はるかに汚れた気に満ちている。あなた、正気なの?』

「その言い方からすると端末の向こうにいるあなたは仙人ですか。僕はいたって正気さ。ところで良いのかな? この場はどんどん僕の色に染まっていくよ?」

『く……、仙法、破邪静音(はじゃせいおん)。浄‼︎』


 流々原(るるはら)先生が、もう一度浄化の術を発動してくれたので、身体の異常はマシになった。


「本当にすごいな。だけど、相殺には遠く及ばない。そこで、この子達が弱っていく様子を聞いてると良い」

『させ、ないわ。仙法、破邪輪音(はじゃりんおん)。転‼︎』


 新しい流々原(るるはら)先生の術により身体の異常は、ほとんどなくなるが、その代わりに端末越しに聞こえる流々原(るるはら)先生の呼吸音が激しくなっている。


「術というのは発動させるのが自分から離れた場所であるほど、制御の難しさも負担も大きく跳ね上がる。しかも、何の準備もしてないなら余計にね。いくら悠久の時間を生きられる仙人と言えど、寿命が削れて死ぬよ?」

『生徒を、守るのは、教師の務め。そして大人は、子供を、守るのが、当たり前なのよ‼︎』

「へえ」


 不審者は感心したようだが、同時に小馬鹿にもしている感じだ。


「立派な心がけだね。でも、あなたはこの場にいないから時間稼ぎしかできない。何の制限もせずに放つ僕の呪いは、精神的に弱いもの、無防備なものから命を刈り取っていくんだ」


 俺は不審者の言葉が気になった。


 精神的に弱いもの、無防備なものから命を刈り取る……?


 おい、秋臣(あきおみ)


 うん? 秋臣(あきおみ)、聞こえるか?


 …………秋臣(あきおみ)


 どれだけ奥底へ呼びかけても秋臣(あきおみ)から返事がこない。


 秋臣(あきおみ)は目覚めつつあるが奥底で休んでる状態だ。


 それはつまり、ほとんどの人が寝ている時に何も抵抗できないのと同じで、呪いを耐えるという行動が取れないという事。


 …………は? 秋臣(あきおみ)が死ぬ?


 こいつに秋臣(あきおみ)の命が刈り取られる?


 ……………………ふざけんな。


 秋臣(あきおみ)がやられる前に殺す。


「ひ……」


 あ? こいつは何で俺の殺気を浴びて怯えているんだ?


 殺される覚悟もないくせに、他人に危害を加えてるのか?


 …………カスが。


 俺は無理矢理身体を動かし不審者に全力の一撃を打ち込んだ。


 しかし、俺の一撃は不審者の身体の表面からにじみ出てきた粘液野郎に受け止められてしまう。


「ひ、ひはははは‼︎ 驚かせないでほしいな‼︎ 僕の人形達がいる限り、君の攻撃は僕に通じないんだよ‼ ︎このまま何もできずに死ねば良い‼︎」


 不審者が手を広げながら叫ぶと、俺の周りに粘液野郎が何体も出現する。


 そして俺にまとわりついて呪い殺そうとしてきたから、俺は全力の殺気を俺やシスティーゾ達に襲いかかってくる粘液野郎達へ放った。


「ひ、バカな……。僕の人形達が逃げていく……?」

「お前は俺の殺気に恐怖した。それならお前が生み出した呪いも俺の殺気を怖がるのも当然だろ?」

「嘘だ‼︎ 人形に意思は無いんだ‼︎ 逃げるなんて行動を取るわけが無い‼︎」

「知らねえよ。死ね」

「へ? ギャバッ‼︎」


 なぜか、全ての粘液野郎が俺から離れていったせいで丸裸になった不審者へ、今度こそ全力の一撃を横薙ぎで叩き込んだ。


 よし、不審者を吹き飛ばせたな。


 あのガリガリの身体の不審者から数本の骨が折れる感触と音があり、吹き飛ばした先の樹へ激突したため必殺になったはず。


「…………た…………て」

「あれで死ななかったのか……」


 そうだった。


 前の世界でも絶対に死んだなっていう状況から、どういうわけか生きて帰ってこれる奴らがいた。


 そして、それが敵だった場合、本当に念には念を入れないとダメだったな。


 俺は、かすかに聞こえた不審者のうめき声にイラつきながら不審者へ近づく。


 目的は、もちろんとどめを刺すため。


 さすがに、どれだけしぶとい奴でも頭を砕かれて生きてた奴を、俺は見た事がない。


 不審者はそばにきた俺が何をする気なのかわかったらしく、少しずつ俺から離れようとしている。


 そんな不審者を俺は冷めた目で見下ろしながら木刀を振り上げた。


「きっちり死ね」

『…………て』


 何のためらいもなく木刀を振り下ろそうとした瞬間、小さな声が聞こえたため、俺は動きを止め耳を澄ます。


『そ……は……メ』


 かすかに、それでもはっきりと奥底から聞こえた声は秋臣(あきおみ)のものだった。


 俺は、ずっと目覚めるのを待っていた秋臣(あきおみ)の声に意識を集中しようとしたが、その前に不快な気配を察知する。


「何でも、ためらった奴、から死ぬ、んだよ‼︎」


 不審者がフラつきながら立ち上がり再び俺の周りに粘液野郎を呼び出し攻撃してきたため、俺は粘液野郎を全て斬り捨てた後、不審者の顔面をつかみそのまま強引に足を払って後頭部を地面へ叩きつけた。


 …………よし、今度こそ気絶して動かなくなったな。


 てめえごときが、待ち望んでた秋臣(あきおみ)とのやり取りを邪魔すんじゃねえ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


また「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら後書きの下の方にある入力欄からの感想・★★★★★評価・イチオシレビューもお待ちしています。

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