第19話
俺は鶴見家の関係者を倒した。
それは間違いない事だが、もちろん物事はそこで終わらないので今現在は後始末の最中だ。
具体的には俺に木刀で手足の骨を叩き折られた重傷者ばかりのため、状態整理役の生徒会連中と治療を行えるものとして学園勤務の上級治癒士である流々原先生が呼ばれた。
木刀を打ち込んだ俺の感覚としては、あいつらに骨折ぐらいしか無いはずだが専門家から診たら、また違うのか?
「…………うーん、鶴見君」
「何でしょう?」
「やるわね」
「は?」
「迷いのない打撃を手足へ正確に打ち込んでる。しかも、十数人全員が骨折の激痛と打撃の衝撃による痺れで、命に別状はないけれどきれいに戦闘不能になっている。見事としか言えないわ」
「ええっと……、ありがとうございます?」
「どこで、こういう戦い方を習得したのか、ぜひ聞きたいわね」
「どうせ、家の誰かから習ったんだろ」
流々原先生が言うと、システィーゾが面白くなさそうにつぶやく。
「システィーゾ、あいにくと僕は落ちこぼれでしたので、あの人達にきちんとした何かを習った事はありませんよ」
「何……? それなら、なぜあんな戦い方ができる?」
「偶然がいくつも重なった結果ですね」
「…………素直に答える気はないようだな?」
システィーゾはイラついた表情になり身体に炎をまとった。
まあ、システィーゾの反応も理解できるが、別の世界で死んだ俺の魂と死にかけた秋臣の魂が出会って俺が秋臣の身体に共存する形で生き返ったなんて説明しても信じられないだろうから、ここはごまかすしかない。
「システィーゾ君」
「何だ?」
「ケガ人を診ている私のそばで騒ぎを起こす気かしら?」
「チッ、わかったよ。おい、鶴見」
「何か?」
「必ずお前の秘密を暴いてやるからな‼︎」
システィーゾは俺をビシッと指差して宣言した。
その様子を見て俺が、どこまでシスティーゾっていう感じだなと感心しながらうなずいていると、システィーゾは拳に炎をまとわせ始める。
「お前のその態度、無性に腹が立つぞ」
「流々原先生、離れた場所か小規模なら構いませんか?」
「…………あなた達に戦わないっていう選択肢はないの?」
「ありませんね」
「そんなものない」
「はあ……、治療の邪魔にならないよう静かに戦いなさい」
「わかりました」
「フン、良いだろう」
俺とシスティーゾは流々原先生の言葉を受けうなずいてから、一歩踏み出せばお互いに触れる距離まで近づく。
そして、どちらからともなく木刀と炎をまとった打撃での攻防が始まった。
◆◆◆◆◆
俺とシスティーゾは、だいたい十分間くらいやり合ったわけだが……。
「ハア……、ハア……、ハア……」
「システィーゾ、接近戦強くなってますね」
「ハア……、クソが……、何でお前は、ハア……、あれだけ高速で動いて、ハア……、息が切れてない……?」
「そこら辺は慣れです。システィーゾも鍛錬を続ければ、いずれ到達できますよ」
「チッ」
「というかですね、システィーゾ。近づいて戦う事が主体の僕は、基本的に中遠距離が得意なあなたに負けられません」
「フー……、うるせえよ。どんな状況だろうと俺はお前に勝つ。必ずだ」
「楽しみにしてます」
「…………チッ」
ヒュンッ‼︎
俺の言い方が気に入らなかったのか俺から顔をそらすシスティーゾの様子から、前の世界でもやる気のある新人傭兵はこんな感じだったなと微笑ましく思っている時、遠くから俺に近づいてくる風切り音に気づく。
バッと音の聞こえた方を振り向き確認したら、飛んできているのは槍のような長さの矢だった。
まあ、特に問題なく両手でつかめたが、前に片手でつかんだ下っ端の放ってきた矢とは速さ・衝撃ともに歴然の差だな。
「鶴見⁉︎」
「この通り、きちんと対応しているので大丈夫ですよ、システィーゾ」
「不意打ちを仕掛けてきやがったのは、どこの誰だ⁉︎」
この場にいた全員が矢の飛んできた方をにらむと、正門の向こうから歩いてくる奴らがいた。
その中には秋臣の記憶で見た奴もいるな。
「不審者を学園に入れる事はできない。そこで止まれ」
生徒会長の龍造寺と他の生徒会役員達が、近づいてくる奴らに立ち塞がる様な位置どりになり、龍造寺は警告をするがあいつらはいっさい耳を貸さない。
龍造寺達も、あいつらが素直に従うとは思っていなかったようで、すぐにそれぞれが能力を発現させる。
……うん? 何でシスティーゾと鈴 麗華は俺の前に移動してきたんだ?
「もう一度言う。そこで止まれ。それ以上近づくなら敵対行為とみなし排除する」
龍造寺の宣言を聞いたあいつらの内の一人が立ち止まり、身長ほどの大きな弓を生み出して槍の様な矢をつがえた。
そして、その矢を空へ放つと無数に分裂して俺達へ落ちてくるが、これも無意味に終わる。
なぜなら、まずシスティーゾの炎と鈴 麗華の氷で完全に迎撃された後、龍造寺のパチンという指を弾く音が響き渡ると全てかき消されたからだ。
「小手調べなのか何なのか知らないが、この程度の攻撃しかできないなら大した事はないな。鶴見家」
「おい‼︎ 俺の炎だけで良かっただろ‼︎」
「それは私のセリフです」
「クソガキどもが……」
さすがにここまで完全に封殺されるとは思っていなかったのか、あいつらは苦虫を噛み潰した顔になる。
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