第8話
炎が飛んできた方を見たら、予想通りシスティーゾが俺へ手を伸ばして立っていた。
…………というか今は授業中なのに、何でシスティーゾはここにいるんだ?
俺が根本的な疑問を考えていると、後ろからパキパキッとかジュウッという音が聞こえてくる。
「……しまった」
俺が避けた後の炎の行き先を完全に忘れていたため、急いで振り返ると氷の壁ができていて、そこにシスティーゾの炎が当たって水蒸気が発生していた。
「鈴先輩、すみません。避けた後の事を忘れてました」
「この程度の事は構わないわ」
システィーゾの炎を受け止めた鈴 麗華が、何でもないというような感じで言ってくるが、それを面白く思わない奴もいて炎の勢いが増していく。
「俺の炎を下に見るとは、ずいぶん舐めてくれるな。鈴 麗華」
「アラン=システィーゾ、私の氷があなたの炎程度にどうにかできると思われている方が心外ね」
システィーゾが溶かそうと炎の熱量を上げたが、それ以上に氷が炎を凍らせていく。
さすが学園上層部直属の実行部隊「聖」に選ばれてる実力者だけはあるな。
「ク……」
「そろそろ炎を止めないと、あなた自身まで凍るわよ?」
「チッ」
システィーゾは自分の炎が凍らされるという事実が気に食わないものの、このまま続けても負けるとわかっているため炎を消した。
こういう引き際をわかっているところは、俺に絡んできた五人とは違うな。
俺は、イラつきながら鈴 麗華をにらんでいるが、とりあえず話を聞ける雰囲気になったシスティーゾに聞いてみる。
「システィーゾ」
「何だ?」
「今は授業中なのに、あなたは何でここにいるんですか?」
「…………」
俺が質問をすると、システィーゾの顔がさらなるイラつきから苦虫を噛み潰した感じになった。
「システィーゾ?」
「…………た」
「え?」
「………れた」
「よく聞こえないんですが……」
「お前に次の授業の場所を教えるよう頼まれたんだ‼︎」
「システィーゾがですか……?」
「そうだ‼︎」
俺の通信端末へメッセージを送るとか他にやりようはあったはずなのに、何で教官はシスティーゾに頼んだ?
「ああ、そういう事ね」
「鈴先輩は何か知ってるんですか?」
「簡単な事よ。学園側は鶴見君とシスティーゾをセットで考えてるの」
「……つまり?」
「学園側は、あなた達二人にできるだけ連れ立って行動してほしいみたい。だから、片方が離れてたら、もう片方へ探すように言うみたいよ」
「ふ、ふざけるな‼︎ なぜ、俺がこいつとセットなんだ⁉︎」
「あなた達がいっしょにいるように誘導した方が監視の手間が省けるし、もしいきなり戦い始めても介入しやすいもの」
「それは逆じゃないですか? 僕とシスティーゾを離すべきですよね?」
「鶴見君は、それでも良いけど、システィーゾは下手に鶴見君と会うのを邪魔すると暴発する可能性が高いっていう学園側の判断よ」
「なるほど」
「クソが……」
俺が納得していると、システィーゾは反論できないためかギリギリ奥歯を噛んでいた。
「それじゃあ、ここの後始末は私に任せて、あなた達は授業へ行きなさい」
「それは……」
「鶴見君が、あの公園で見たように聖の仕事の一つだから気にしなくて大丈夫よ」
「……わかりました。よろしくお願いします」
「うん、素直でよろしい。システィーゾ、わかってるわね?」
「わかっている‼︎」
おお、システィーゾが渋々とはいえ返事をした。
「……何だ?」
「システィーゾも誰かの言う事を聞けるんですね」
「あ? ケンカを売るなら買ってやるよ」
「システィーゾ?」
「チッ、おい鶴見‼︎ 行くぞ‼︎」
「わかりました。それでは鈴先輩、失礼します」
「ええ、またね。それと私達が監視してる事を忘れないで」
「はい」
ははは、私達ときたか。どうやら俺は宣戦布告をされたみたいだな。俺は秋臣を守る事を最優先にしているが、この世界の強者と戦うのも悪くない。そして、今もそういう奴らに注目されているのならば、これからが楽しみだ。
「……おい」
「システィーゾ、どうしました?」
「お前を倒すのと正体を暴くのは俺だ。俺以外の奴に倒されたら殺すぞ」
「楽しみにしておきます」
「チッ」
俺とシスティーゾは次の授業がある教室へ移動して行った。
ただ……、俺とシスティーゾが並んで歩いてるだけなのに、すれ違う教官や生徒と他の教室から俺達を見た奴らがギョッとした後、すぐに戦えるよう構えるのは何なんだ?
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