第16話
寮の自室に戻りシャツとデニムに着替えて薄手のアウターを羽織り、携帯端末をポケットに入れ最後に小さめのリュックを背負い外出の準備が完了する。
寮の玄関を出た時に携帯端末で時間を確認すると午前9時30分で、目的地へと向かうバスの発車時刻には余裕があったため、広い学園内を歩いて正門まで行く事にした。
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バス停に着いて数分するとバスが来て止まったので、乗り口のすぐ横にあるセンサーに携帯端末を読み取らせながら乗り込み空いている席に座る。
ふむ、あらかじめ秋臣の記憶で知っていたものの、やはりバスという前の世界に無かった乗り物を使うのは違和感があるな。
……まあ、それを言えば俺の存在そのものが、この世界で最大の異物だという認識を持つと、一瞬自分の存在をどう考えるべきなのか疑問で頭がいっぱいになった。
しかし、どれだけ考え抜いても絶対に結論は出ない上に、この秋臣の身体を秋臣が目覚めるまで守り抜く事に比べたら割とどうでも良い疑問ではある。
俺はすぐに疑問を頭の中から消しバスの窓から見える景色を楽しんだ。
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10分ほど経ち目的地に近いバス停に到着したためバスから降りると、俺を人や車の発する音が包んだ。
秋臣の記憶によれば今日は祝日でも祭りの日でもない、ただの休日なのに多くの人々が行き交っている。
この世界と前の世界とでは、明らかに人口が違うようだな。
それに前の世界の町や村で感じた戦乱による人々の精神のすり減りも感じられないから、安心して平和を謳歌できる良い時代と国なのだなと実感しつつ、俺は秋臣の記憶を頼りに歩き出す。
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「……にぎやかだな」
バス停から数分歩き目的地が見えてくると、俺の口から思わず感想が漏れた。
バス停付近よりも何倍も多くの人々が行き交い、様々な食べ物の匂い、遠目から見ても質の高そうな雑貨、聞き心地の良い音楽が流れている。
ここは通称「学生通り」と呼ばれ、異能力者育成機関である吾郷学園の多くの生徒が放課後や休日なんかをすごす場所だ。
秋臣はあまり来る事はなかったらしいが、どこで過ごすかは個人の自由だから特に言う事はない。
まあ、ジッと立っているのも時間がもったいないから、いろいろ見て回るか。
俺は初めて見る物ばかりの「学生通り」に足を踏み入れた。
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