第15話
さらに数日が経ち、秋臣の丁寧な口調にも、この世界の学生生活にも完全に慣れた俺だが、今現在深刻な悩みについて考えながら朝食を食べている。
「…………」
「ずいぶん考え込んでますが、何について悩んでるのですか?」
声の聞こえてきた方を見ると、鈴 麗華が両手でトレーを持って立っていた。
お盆の上に秋臣の記憶にあった麻婆豆腐が湯気を上げている事から、これから食べるようだ。
もっとも、今は朝で場所が食堂とくれば食事をするのは当然か。
ちなみに俺は、秋臣の好物である焼き鮭・味噌汁・ごはん・漬物がセットの定食を食べている。
「鈴先輩、おはようございます」
「おはようございます。相席しても良いでしょうか?」
「どうぞ」
「ありがとうございます」
鈴 麗華は礼を言いながら俺の正面に座ると、手を合わせていただきますと小声で言ってから麻婆豆腐をレンゲですくい静かに口に運ぶ。
そして、しっかり味わうと烏龍茶で口の中をさっぱりさせ、また食べ進める。
見るからに辛そうな色だったが休む事なく一通り食べ終わると、レンゲを置いて俺に顔を向けた。
「それで何について考えていたのですか?」
「たいした事じゃないですよ」
「…………」
鈴 麗華が俺を探るような視線で見てくる。
俺は、なんとなく隠す事でもないし下手に誤魔化して余計な火種になるのを避けたいため、素直に悩みを打ち明けた。
「休日の今日と明日を、どうやって潰そうかなと悩んでました」
「……そこまで悩まなくても良いのでは?」
前の世界で俺は戦場から戦場へと渡り歩く日々で休日はほとんどなく、稀にあったとしても鍛錬で剣を振って1日が終わっていた。
今更、身体を動かさなくて良い平和な休日の過ごし方はわからない。
ここは聞いてみるのが一番か?
「ちなみに鈴先輩は休日をどのように過ごされてます?」
「そうですね……、私の場合は自室で授業の予習と復習をしたり、図書館での読書や、友人との外出でしょうか」
「なるほど、そうやって過ごすんですね。うーん、それならせっかくの休日なので外出してみます」
「……わかりました。良い休日になるよう祈ってます。それではお先に失礼します」
鈴 麗華は言い終わると席を立ち足早に食堂から去って行った。
おそらく俺の監視体制を整えるためだろう。
まあ、それはそれとして、どんな休日になるか楽しみだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
また「面白かった!」、「続きが気になる、読みたい!」、「今後どうなるのっ……!」と思ったら後書きの下の方にある入力欄からの感想・★★★★★評価・イチオシレビューもお待ちしています。