第12話
システィーゾとの決闘から1週間が経過して、流々原先生の再診でも問題のなかった俺は日常生活に戻っていた。
まだまだこっちの生活に驚く事も多いが、俺が秋臣ではないとボロを出さない程度には慣れてきたらしいと授業を受けながら思う。
前の世界で何かしらの教育機関に所属できるのは、いわゆる王族に貴族なんかの上流階級や裕福な商人のみ。
俺はどうだったかと言えば、戦場の前線に出される奴隷同然の傭兵だった俺は、当然まともな教育を受けた覚えはない。
そんな俺が何の支障もなく読み書きができて、授業についていけてるから秋臣には感謝しかないな。
「ようし、これまでの「異能学」をまとめるぞ。間違いなくテストに出るから、少なくとも書き写し漏れがあったなんて事はないようにしろ」
この教官の言った「異能学」とは異能力について研究し、なぜ異能力持ちが現れたか、異能力がどのような原理で現象を起こして世界に干渉するのかなどを研究する学問なのだが、秋臣の在籍している中等部ではそこまで専門的な事はやらない。
せいぜい一般的な異能力の分類や対処法に、この世界に異能力持ちが現れてからこれまでの歴史を学ぶ程度だ。
しかし、この世界の外からやってきた俺にとっては、もっとも重要な授業の1つだと言えるだろう。
「まず異能力の分類についてだが、基本的には器物級・魔導級・精霊級の3段階に分かれている。各級の説明をすると、器物級は物質を生み出し、魔導級は何かしらの特殊な性質を持つ物質を生み出し、精霊級は火・水・風などの自然物を生み出したり一般に奇跡と呼べるような事を起こしたりもできる。鶴見、全人口中の異能力持ちの割合と、全異能力者における各級の割合を言ってみろ」
「はい」
俺が教官に呼ばれて立つと周りは一瞬ピリッと緊張する。
どうやらシスティーゾとの決闘の最中に突然動きが変わり格上の精霊級を倒した事から、キレると危ない奴みたいな感じに思われているらしい。
まあ、ケンカを売られない限り俺から何かする気は今のところないが、すまん、秋臣。
俺は秋臣の記憶を思い出しながら先生に答えていく。
「現在の世界人口は約70億人で、その内の30%に当たる約20億人が異能力持ちと言われています。次に各級の割合ですが、器物級80%、魔導級15%、精霊級5%です」
「正解だ。それじゃあ異能力の系統は答えられるか?」
「戦闘系・補助系・製作系・治癒系・特殊系に分かれています」
「そうだな。さらに詳しく付け加えるなら、鶴見の言った系統は後半になるほど割合が低くなり、治癒系にいたっては3%以下で特殊系は1%を下回る。一応お前達に言っておくが、その少なさから製作系・治癒系・特殊系は優遇されているのは確かだ。しかし、決して戦闘系・補助系が劣るというわけではない事を肝に銘じておけ。級や系統で一喜一憂するな。ひたすらに己を鍛えて高めろ。良いな」
この教官は中々に良い事を言うなと感心して授業を受けていたらチャイムが鳴った。
「よし、座学はここまでだ。次は実技の授業だから全員着替えて外に出ろ。鶴見は流々原先生から聞いている通り、激しく動くなよ」
「わかりました」
さて待ちに待った時間がやってきた。
秋臣と同年代の実力を確認する意味でも楽しみだな。
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