第22話
異能力図鑑、才歪、紋綴りの猛攻を受けて数分経つわけだが、何というかちゃんとしている事に感心してしまった。
まず異能力図鑑は五人の内の一人目と二人目が光線を頭上に放ち、三人目と四人目が生み出した空間の歪みで光線を曲げ俺を狙ってきて、最後の五人目は切り札の準備のためなのか目を閉じた状態で図鑑に手を置きぶつぶつと何かをつぶやいており、戦いにおける役割は後衛の固定砲台だ。
次に才歪だが、こいつは常に動き続け伸びる手をフル活用した突きの壁を作り出し俺を牽制しつつも隙狙ってくる中衛の遊撃手と言える。
そして紋綴りはと言えば、強化した巨体と修復できる身体の特性を活かして俺の視界を制限しながら俺を足止めする前衛の壁役だな。
それに紋綴りも中途半端な異能力者なら巨体と剛力で押し潰せて、さらに手足を振り回す時に発生する瓦礫は十分殺傷力があるから耐えるだけの肉壁ではないと注意しておく必要はある。
「うおおおおおおおっ‼︎」
「シッ、シッ、シシッ、シシシシシッ‼︎」
「「「「ぬう……当たれ‼︎ 当たれぇぇぇ‼︎」」」」
まあ、こんな風に俺が冷静に異能力図鑑達を評価できているのは全ての攻撃とその余波を避けているからなわけで、それに加えて俺が五人目の異能力図鑑の方へ視線を向けているため異能力図鑑達は焦りの色が強くなっていた。
そろそろ俺からも動くかと思ったら、四人の異能力図鑑がサアッと顔を曇らせる。
「「「「才歪、紋綴り、退がるのである‼︎」」」」
「バカ野郎‼︎ こいつにほんのわずかでも時間を与える方がまずいだろうが‼︎ 異能力図鑑、俺ごとこいつをやれ‼︎」
「…………私も手足の一本、二本なら問題ないわ」
「「「「ク……、致し方ない、か‼︎」」」」
紋綴りの巨体越しに強い発光が見えた。
どうやら異能力図鑑は四人で光線を放ってくるようで、紋綴りは俺を押さえつけようとつかみかかってきて、才歪は俺の頭上へ跳び上から今までで最速最多の突きの壁を繰り出してくる。
二人とも何とか俺の動きを制限し異能力図鑑の光線を当てようとしているみたいだが、俺は身体を加速させて紋綴りを才歪の方へ蹴り上げ、その後跳んで二人を全力で蹴り飛ばして着地した。
…………うん? 着地する瞬間を狙ってこなかったな。
俺は発射寸前のまま光線を撃ってこない異能力図鑑に首を傾げてしまう。
「どうして撃ってこなかったんですか?」
「「「「それはこちらのセリフである。なぜ、才歪と紋綴りを我輩の射線から弾いたのだ? こちらに貸しを作ったつもりであるなら勘違いもはなはだしいというもの」」」」
「そんなつもりはありません。ただ……」
「「「「ただ?」」」」
「真っ向勝負であなたの攻撃を打ち破ろうと思っただけです」
「「「「くははは‼︎ 何という傲慢さ‼︎ やれるものならやってみよ‼︎」」」」
四人の異能力図鑑が叫んだと同時に、俺は右足を前に出して半身となり異能力図鑑に背中を見せるように上半身を捻って力を溜める。
異能力図鑑の掌の光球が一際強く光った瞬間、俺は全力で木刀を振り切った。
その結果……。
「「「「「そんなバカな……」」」」」
「予想した以上の結果になり僕も驚いています」
俺へと向かってくる光線は俺の斬撃により真っ二つとなり霧散し、さらに光線を放ってきた四人の異能力図鑑も胸の辺りからズレて消えた。
光線は斬れると思っていたが、まさか離れている異能力図鑑まで斬撃が届くとは思わなかったな。
まあ、これで遠距離攻撃の手段が手に入ったと喜んでおこう……っと、待て。
新たな自分の成長というか発見に驚いていたら、異能力図鑑の数が増えていない事に気づく。
今までだったら五人まとめて消えてもすぐに復活していたのに、何で四人は消えたままなんだ?
疑問を解消するため俺が一人だけ残っている何かの準備を続けているはずの五人目の異能力図鑑を見ると、五人目はただただ呆然としていて思考が止まっているからだとわかった。
……それならそれで一気に畳み掛けられるから良いか。
それにそんな状態でも無意識に何かの準備を続けている事からも、その何かは本当に重要だとわかるからそれを潰せるという意味でもこのまま攻め切るべきだ。
俺がそう決め異能力図鑑の隠れている本体を炙り出すため全力の殺気を放とうとした瞬間、頭上から落ちてくる気配を感じたため俺はその場から飛び退いた。
ズドーーーーン‼︎
それが着地すると大きな着地音と土煙と瓦礫を撒き散らす。
これは下手したら隠れている異能力図鑑の本体も瓦礫を被っているだろと思いつつ落ちてきた奴を警戒していたら、落ちてきた奴がいる方とは別の方向から殺気を感じたため身体を加速させもう一度飛び退く。
すると、加速した俺と同速のものが何発も土煙を突き破ってきた。
とにかく速い。
落ちてきた奴もこの攻撃を放ってきた奴も想像通りなんだろうが、ここからは気を引き締めるべきだな。
「ヂッ、ヅブゼナガッダ……」
「…………ぞごまで簡単な相手じゃないのば、わがっでだごど」
土煙が晴れ姿を表したのは才歪と紋綴り。
ただし、その様子は俺が二人を蹴り飛ばす前とは激変している。
まず才歪は体格が一回り大きくなって、さらに手足が通常時より長さと太さが倍以上になっていた。
次に紋綴りだが体格は最大強化の大きさに戻っているものの、何というか仕草から見える雑さが消えて見上げるほどの巨体を完全に制御できている。
おそらく才歪が紋綴りの運動神経や反射神経なんかの出力を上振れさせ、紋綴りは才歪の身体自体を強化したんだろうな。
一人一人の強化じゃ俺に敵わないから、二人の異能力を合わせて自分達を限界突破させるとは、とことん後先考えない無茶をする。
二人の戦線復帰で正気に戻った異能力図鑑も俺と同じ気持ちになったようで、ワナワナと震えながら叫び始めた。
「才歪、紋綴り‼︎ お前達は何をやっているのだ‼︎ お前達は我輩の目的達成に必要な人材なんだぞ‼︎ それなのに自滅を選ぶとは何を考えている⁉︎」
「…………自滅を選んだわげじゃない。ごれば覚悟」
「ごごでがでないなら、いみがないだろ‼︎ おまえごぞ、いつまでじゅんびにじがんがががってやがる‼︎ ざっざとおわらぜろ‼︎」
「…………私ど紋綴りが動けなぐなる前に終わらぜで」
「うぬ……」
異能力図鑑は明らかに迷っているみたいだが、それでも才歪と紋綴りの言う事を正しいとも理解できている。
ここからが本当の総力戦なら、こちらも全力を出そう。
俺は深呼吸をし音と色のない世界へ入ろうとした。
しかし、息を吸おうとしたら才歪の太く長い腕での突きが顔へ高速で伸びてきたため、俺は身体を半身にして避ける。
そして迎撃として才歪の伸びた腕に木刀を叩き込もうとしたら、いつのまにか俺の背後に移動していた紋綴りが拳を振り下ろしてきたので身体を加速させて紋綴りの股の間を抜けて距離を取った。
すぐさま才体勢を整えて歪と紋綴りを視界に入れたが、二人はいつでも最速で動き出せるように構え終わっている。
「…………ぞれば絶対にさぜない」
「おれだぢをなめるなよ」
確かな実力に確かな覚悟、これがあるなら下に見て良い相手じゃなくなったな。
俺は異能力図鑑の切り札に少しワクワクしていた自分を消し去り、今は才歪と紋綴りへ集中すると決めて殺気を放ちながら構えた。
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