第11話
迫り来る炎の壁を切り裂いた斬撃、乱れ飛ぶ炎の弾丸を避ける機動力……治癒室担当ゆえに映像でしか見れなかったけれど、私の目には鮮やかに焼きついている。
確かにアラン=システィーゾの炎は圧巻の一言ではあったけれど、それでもなお私が思い起こすのは彼の一挙手一投足。
「鶴見 秋臣君か。……興味深いわ。ぜひ近くで観察したいものね」
そんな思いを膨らませながら治癒室で待機していると、扉の外でドサッという人が倒れたような音が聞こえ、急いで扉を開けたら倒れていたのは鶴見君だった。
願い事っていうのは叶う時は叶うものらしい。
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治癒室に運び込みベットに寝かせボロボロになった戦闘服を慎重に脱がして診察した結果、重傷なのは身体前面の火傷に数々の打撲や切り傷だとわかった。
これだけのケガでよくあそこまで動けたものだと感心してしまいそうになるけれど、治療に携わる身としては重傷を負って動いた負担で内臓損傷や骨折などになってないか心配なので、最速最適の治療を施すために私は鶴見君の胸に手を置いて深く呼吸する。
「仙法、内功活性・外功強化」
大気に満ちている気を呼吸によって身体の中に取り入れ、増幅・純化した後に私の手を通して鶴見君の身体へ送り込んでいく。
すると、すぐに私から気を受け取り鶴見君の身体がぼんやりと光り始める。
これによって彼自身の自己治癒力が高め、さらに一時的に身体そのものを強くする事で超回復を促す。
さすがに身体が作り変わるくらいの異常な回復はさせないけど、鶴見君の傷ついた身体は超回復を必要としてるのは間違いない。
◆◆◆◆◆
数分後、火傷、打撲、切り傷が治ったので送り込む気の量を抑える。
さらに数分後、鶴見君の身体の中を巡る気の動きに淀みもなくなったの確認して治療を終わらせた。
あとは深く眠り疲労を取って自然に目が覚めるのを待つだけなのだけど、…………それにしても不思議だわ。
どうして反射神経が良いとか特別な筋肉をしているとかの目立った特徴がないのに、あの動きができたのかしら?
私はカルテに鶴見君の容態を書き込みながら考え込む。
◆◆◆◆◆
1度部屋を出て鶴見君に関する諸々の報告を済ませてから治癒室に戻ると、ちょうど彼が目を覚ましたところだった。
……うん、淀みなく受け答えできていて、身体を診察しても問題ない。
少し記憶が飛んでるみたいだけれど、あれだけ激しく戦った後ならしょうがないし、充分許容範囲内ね。
私は鶴見君に今後の説明をして、再び身体を休ませるために眠らせる。
すぐに眠りに落ちた鶴見君の寝顔は、あれだけの動きを見せた者と同じとは思えない年相応の幼さだ。
少しの間、うなされないかや妙な発汗はないかなどを確認した後、異常はないと判断し私はデスクワークに戻った。
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