第8話
「今日の決闘は勝ちました‼︎ 次の決闘も勝ってみせます‼︎」
「…………そうですか。がんばってください」
「はい‼︎ ありがとうございます‼︎ それでは失礼します‼︎」
今日の学内決闘で勝ったらしい俺の戦いで必要な説明を受けた内の一人がバッと大きく頭を下げた後に、俺とシスティーゾと鈴 麗華の食事している席から離れていった。
ここ最近の昼食時の恒例行事になりつつある光景を見て、システィーゾは感心したという顔になる。
「本当にあいつらは心から鶴見の弟子になってるな」
「正直に言って師匠扱いされるのは、むず痒いぞ……」
「そばで見てると心温まるわ」
「その生暖かい視線を止めろ」
「俺としては他の奴らがどうするのか気になるところだ」
「他の奴ら?」
「ああ、鶴見の弟子が強くなった事で底辺に落ちた奴らがいるだろ?」
システィーゾの言っている奴らが誰なのかわかった。
まあ、どんな組織も多層構造で一番下の奴らが上へ登れば、下から二番目だった奴らが最弱の立場になるのは当たり前の事。
俺は基本的に秋臣以外は割とどうでも良いから思い浮かばなかったな。
あいつらが勝ち続けるごとに別の奴らから数種類の視線が俺に集まり始め、その中でもあまり数が多くないチラチラと俺に話しかける機会をうかがっている奴らがいるのは、そういう事か。
何とか俺と関係を持ってどうにか強くなりたいって感じなんだろうが、あいにくと今の俺の近くにはだいたいシスティーゾと鈴 麗華がいるから話しかけづらいらしい。
ただ、強い目的意識があるならほとんどの不利は跳ねのけられるはずだから今俺の様子をただ見ているだけの連中は、少なく俺達の席に近づいてくるあいつよりも本気度合が低いのだろう。
システィーゾと鈴 麗華も気づいたようで俺達三人の視線を向けられたあいつはウッと怯んだが、すぐに頬を叩いて気合を入れた後に再び歩き出し俺達のもとへやってきた。
「お食事中のところ失礼します。私に皆さんの時間を少し頂けないでしょうか?」
「用があるのは鶴見に、だろ?」
「あ、いえ、その…………はい、その通りです」
「鶴見君、どうするの?」
俺は不安そうな目で見てくる図書館で本を読んでいる方が似合いそうな見た目の女子生徒を観察する。
…………身体も小さくおそらく性格的にも戦いには向いてな、いや、本番になったら切り替わる奴もいるから一概には言い切れないか。
「構いませんよ」
「本当ですか⁉︎」
「はい。それで僕への用とは?」
「ええと、私は強くなりたいんです。でも、どうしたら強くなれるかがわからないんです……。何をしたら良いのか私に教えてください‼︎」
ふむ、一目で真剣だとわかるからやる気も問題なさそうだ。
あと必要な確認と言えば……。
「学園長、僕が動いても大丈夫ですか?」
「「え?」」
「おい、鶴見、何を言って……チッ‼︎」
俺の発言に鈴 麗華と女子生徒は困惑して、同じく困惑していたシスティーゾは視線を俺達の席から一番近い壁を見た後に俺を肩で担ぎ上げつつ跳び退いた。
まあ、いきなり壁に周りの影が集まり扉になったら、この反応はしょうがないな。
両開きで横幅は大人が余裕で四、五人は並べ高さも食堂の床から天井まである影の扉が音もなく開くと、そこは学園長室につながっていて車いすに座った学園長の黒鳥夜 綺寂とその車いすを押す流々原先生に、聖隊長の武鳴 雷門と副隊長の入羽 風夏がいた。
食堂にいた俺以外の全員が唖然としている中、四人は影の扉を通り抜けて食堂にやってくる。
「突然ごめんなさい。話は聞かせてもらったわ。あなた」
「は、はい‼︎」
「強くなりたいという気持ちも、吾郷学園で最強の鶴見君に頼ろうとした気持ちも理解したわ。でも、学園の教官達にチャンスをくれないかしら?」
「は、はい‼︎ ……え?」
黒鳥夜 綺寂の言葉を聞いた女子生徒は自分の耳を疑っていたが、俺達も同じような反応をしていると気づいて混乱し始めた。
「え? あ? その? あれ?」
「驚くのも無理はないわ。でも、鶴見君の教え方を見て分析した成果をあなたに確かめてほしいの。どう?」
「ええと……」
「もし教官達の指導で強くなった実感がわかなかった場合は、学園長権限で鶴見君にあなたの指導をしてもらうから安心して」
「…………わかりました。お願いします」
「ありがとう。あなたの思いに答えられるよう学園としても全力を尽くさせてもらうわ。一応、今すぐ始めたいと思ってるなら始められるけれど、いつからが良いかしら?」
「今日の……放課後からで」
「わかったわ。あなたを担当する教官へ伝えておくわね。あとで端末に連絡がいくからそのつもりでいてちょうだい」
「はい。よろしくお願いします」
女子生徒は黒鳥夜 綺寂とシスティーゾに担がれている俺へ頭を下げ自分の席へと戻っていき、それを見送った黒鳥夜 綺寂達も影の扉から学園長室へと帰っていった。
突然来て唐突に帰るんだなと思っていたら、黒鳥夜 綺寂が車いす越しにこちらを向く。
「鶴見君、システィーゾ君、麗華、食事が終わったら学園長室は来るように。それじゃあ、また後で」
俺達の返事を待たずに影の扉は閉まりフッと消える。
「拒否権はないみたいだな……。まあ、学内待機で授業以外は暇だから良いか」
「そうだな」
「そうね」
俺達は自分の席に座り直すと他の生徒の視線を集めながらも黙々と食べ進め、十分後には食堂から出ていく。
◆◆◆◆◆
学園長室へ入ると、さっきの四人に加えて香仙もいてソファーに座っていた。
ああ、あの中途半端な空間系になった奴と治癒系になった奴の尋問が終わったみたいだな。
「三人とも来てくれてありがとう」
「何かわかったか、動きがあったのか?」
「その通り。でも、まずは鶴見君にお礼を言わないといけないわ」
「お礼? 何の事だ?」
「あの子達の実力を引き上げてくれた事に対してのお礼よ」
「その事か。俺はあんたから頼まれた任務をこなしだけで、あいつらが学内決闘を勝ち続けているのはあいつらの努力の結果。俺にいう事じゃない」
「それでも実戦に耐え得る器物級の戦力が増えた事は確かだから感謝しているわ」
黒鳥夜 綺寂が器物級の戦力と発言をした瞬間、流々原先生、武鳴 雷門、入羽 風夏、香仙の気配が一瞬強ばる。
なかなか厄介な事が起きているらしい。
「器物級と強調するという事は、魔導級と精霊級に何が起きているのか?」
「この国で確認されていた魔導級と精霊級の異能力者の異能力の消失が合わせて五件起こっているわ」
「なるほど器物級を魔導級と精霊級にできるなら、その逆も可能なわけだな。どういう異能力かわからないが戦力の増減が自在なのは面倒くさい」
「本当にね……」
「学園長、その異能力が消失した五人に共通点は?」
「今のところわかってないわ」
「この学園の関係者はいたのか?」
「五人とも吾郷学園とは関係ないわね」
「それなら……、学園外の戦力を削りつつ、この学園には魔導級か精霊級になった奴らが潜んでるって事か?」
「その調査は香仙に任せているわ」
俺が香仙を見ると、香仙は何とも言えない表情をしていた。
「私の匂いで隠している力があるなら使うように誘導しているけど、今のところ本当に隠していた人はいないわね。…………ただ私も学園内にあの二人以外にも潜んでる奴がいるとは思ってる」
「あの二人の尋問は?」
「前にあなたが倒した槍使いと同じで重要な情報は何も知らなかったの。でも……」
「何だ?」
「あの二人が強い異能力を与えられたのは、吾郷学園に入学してすぐだとはわかったわ」
「あ?」
思ったよりも遥か前から敵の手が秋臣の身近に迫っていた事実を知り、俺は殺気をあふれさせてしまった。
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