第7話
相変わらずの警戒態勢の中、今俺は学園内の闘技場にいた。
何をしているかと言えば、もちろん決闘なのだが相手は二人で一対二の変則形式になっている。
肝心の対戦相手は、もはやいつもいっしょにいると言っても過言ではない俺を護衛しているシスティーゾと鈴 麗華だ。
「おらあ‼︎」
「はっ‼︎」
システィーゾの炎をまとった拳と鈴 麗華の氷で武装した指先を突き出そうとしていたから、俺はその前に両手を加速させ二人の腕を上へ弾く。
そして腕を弾かれシスティーゾと鈴 麗華の体勢が伸びたのを確認し、まずはシスティーゾの蹴り飛ばして距離を作ると鈴 麗華との一対一を意識した。
俺の意図が鈴 麗華にも伝わったのか、鈴 麗華はシスティーゾをチラリとも見ず俺へ再び攻撃を仕掛けてくる。
鈴 麗華の接近戦の戦い方は氷で身体を覆い手足を刃物化した上で手刀や貫手などを放ち、相手の身体の切断や貫通を狙ってくるものだ。
また自前の氷で身体を包んでいるため防御力も高く、よほど接近戦に自信がなければ何もできず一方的に瞬殺されるだろう。
…………鈴 麗華自身の異能力で生み出された氷とは言え、固体である氷で身体を覆いながらここまで滑らかに動けるのかは謎だな。
まあ、おそらく鈴 麗華に聞いてみても何となくやできるからとしか答えが返ってこないと思うし、異能力者は自分の異能力を自由に操れるからと納得するしかないな。
俺は鈴 麗華の斬撃や刺突のような攻撃を避けながら小さくうなずいた後、鈴 麗華の方に一歩大きく踏み込んだ。
すると、鈴 麗華の顔に一瞬迷いがよぎったのがわかった。
これは俺と鈴 麗華の位置関係が手を伸ばさなくても届く超接近戦になった事で、鈴 麗華にこのまま格闘を続けるか身体を包んでいる氷を変形させて俺を攻撃するかの選択肢が生まれたためだ。
普通の相手であれば何の問題もないものの、相手が俺なら話は別。
鈴 麗華にできたほんの少しの隙をつき身体を加速させながら回転し右ひじを脇腹へ叩き込むとバキンッという氷の砕けた音が響き、鈴 麗華は崩れ落ちる。
「やらせねえっ‼︎」
「おっと」
俺は鈴 麗華へ追撃をしようとしたが、それは鈴 麗華を囲むように炎の壁が吹き上がってきたため断念した。
もちろん身体を加速させて炎の壁を突き抜けても良かったが、今回は炎を背中から噴射させ高速で近づいてくるシスティーゾに意識を向ける。
これは接近戦におけるシスティーゾの炎を身体にまとわせた状態で手足を振り回せばそれだけで衝撃波や熱波が生まれるという厄介さのためだ。
しかも、あえて制御していないのか攻撃のたびに衝撃波と熱波の範囲が増減するから面倒くさい。
「お、あ……」
「敵に力を出させるわけがないだろ? 正面から封殺させてもらう」
俺はシスティーゾが殴りかかろうとしたらその手を弾いて攻撃の起点を潰した。
手足を振るだけで衝撃波と熱波が出るなら、俺の方へ振らさなければ良い。
「チッ、この化け物が‼︎」
「身体を炎で包んでる奴が化け物なんて口するな」
「異能力に身体能力と技術だけで勝っているお前の方が、どう考えても化け物だろうが‼︎」
「…………そう言われたら否定はできないか。鈴 麗華、お前はどう思、う?」
問いかけた瞬間、氷で武装している鈴 麗華の腕が炎の壁を突き破って現れたが、すぐに腕を引き戻した。
システィーゾに対応しながら、その動作の意味を考えていたら炎の壁の中に炎とは違う煌めきがあるのに気づく。
…………あれは鈴 麗華が生み出した氷だよな?
炎の中に氷を入れるのに何の意味が……?
「喰らいやがれ‼︎」
叫んだシスティーゾが炎の壁の火力を上げると、炎の壁が氷の入っていた辺りから不自然に膨らんでいくのを見た。
俺は色と音のない世界へ入り、その膨らみの大きさが増すよりも速く飛び退く。
ボガンッ‼︎
十分に離れた状態で元の世界へ戻った時に起きたのは、システィーゾの炎の壁も吹き飛ばすほどの大爆発。
ちなみにシスティーゾと鈴 麗華が至近距離で爆発をもろに受けた事に一瞬焦ったが、よく考えたらシスティーゾは炎と熱に対して桁外れの耐性があり、鈴 麗華もシスティーゾの炎に耐えられる氷を生み出せるから大丈夫かと思い直したら、案の定晴れていく煙の間に二人の姿が見えた。
どう考えてもこの規模の大爆発を自力で起こせるこいつらの方が化け物だよな?
「なるほど、鈴 麗華の氷をシスティーゾの炎で熱して水蒸気爆発を起こしたのか。即興なのか事前に合わせてたのかは知らないが、俺じゃなかったら死んでもおかしくない攻撃だ。他の奴らにはやるなよ?」
「…………鶴見、どうしてお前がそこにいる?」
「うん? 爆発が起きる前にここまで離れただけだが?」
「いくら何でも人間離れしすぎよ……」
「そうか? そんな事より俺には聞きたい事がある。戦闘前、お前は肉弾戦を主体で鍛錬したいと言っていたのに、いきなり爆発を起こしてどういうつもりだ?」
「「う……」」
「はあ……、その様子だと俺に勝ちたかったから、その勢いとノリでやったっていう感じか?」
「「…………」」
俺の予想は当たっているようで、システィーゾと鈴 麗華は気まずげに視線をそらす。
「それで、どうする?」
「…………何がだ?」
「このまま続けるのか? 続けるなら何でもありに変えるのか? それかあくまで肉弾戦でやるのか? どれだ?」
「「続ける‼︎ 何でもあり‼︎」」
「わかった。これが地面に落ちたら再開する」
俺が足もとに転がっていた爆発でできた小石を拾いシスティーゾと鈴 麗華に見せると、二人はうなずいた。
そしてピンッと指で上へ弾き飛ばした後、俺が黒い木刀を出現させれば二人も大量の炎と氷を生み出す。
カッ……。
小石の落ちた小さな音がした瞬間、俺の最速と二人の最大物量が激突した結果……。
「くそがあ‼︎」
「負けた……」
システィーゾと鈴 麗華の最大物量を俺は全て避けるか斬り捨てながら二人に接近し、システィーゾの首に木刀を鈴 麗華の首に葛城ノ剣を触れさせて俺の勝ちとなった。
二人も負けた事は悔しいが納得はしているらしく荒々しかった気配が鎮まる。
「チッ、鶴見の護衛になってから何度も戦っているのに勝てねえ……」
「少なくとも武鳴 雷門と同等の速さを持つか、俺の長所を全て潰せる手札を持たない限りは勝てないぞ」
「このまま負け続けるつもりはないからわかってるわ」
「鈴、後で反省に付き合ってくれ」
「私から頼もうと思ってたから大丈夫よ。ところで鶴見君」
「何だ?」
「あの人達の事はどうするの?」
「あー……、あいつらな」
鈴 麗華が指差した闘技場の観客席の最前列には、俺達の決闘を始めから食い入るように見ていた参加者達がいた。
「あいつら、俺を見てくる目力がどんどん強くなってるんだよな……」
「付き合ってやれよ。あいつらは鶴見の教えを受けてから学内決闘を勝ち続けてるらしいからな。お前にその成果を見せたいんじゃねえか?」
「師としては鼻が高いんじゃない?」
「黒鳥夜 綺寂に頼まれた任務として、必要な知識を説明してから必要な体験をさせただけだぞ。そこまでありがたがる意味がわからない」
「鶴見君にとって大した事のないものでも、もがいていた人にとっては救いの手だったのよ。一度関わったんだから最後まで、ね?」
「…………はあ、わかったよ。行ってくる」
「俺達は端の方で見てるから情けない姿を見せるなよ?」
「誰に向かって言ってやがる」
俺はシスティーゾと鈴 麗華が離れていくのを見送った後、参加者達へ降りてこいと手で合図をする。
うわ、あいつら観客席から飛び降りてきやがった。
やる気が前のめり過ぎだろと呆れはしたが、やる気が全くないよりは良いかと思い直し頭を切り替える。
そして、それぞれ武器を出現させた状態でかかってきた参加者達と一人当たり数回打ち合ってみたのだが、システィーゾの言っていた通り学内決闘で勝ち続けているだけあって全員あの時よりも動きが良くなっていた。
俺の任務に意味があった事を実感しつつ、俺は木刀を叩き込んで参加者達の意識を刈り取り最短で終わらせる。
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