曜日違い
月曜日だと思ったら、火曜日だった。
授業のノートを忘れたと思ったら、カバンの中には教科書とノート。
一般的かつ模範的な生徒として置き勉をしている身でありながら、カバンの中にはそれらがある。
朝の荷物が重かった要因に今更気づく。
カバンから教科書とノートを取り出し、手持ち無沙汰からクラスを見回す。
サヤが死んで早、二週間。
サヤとは別クラスであったため、ウチのクラスの雰囲気は当たり前を取り戻し、同じ地区の同じ生徒が死んだなんて事実なんてなかったと思わせる。
小学校の頃、サヤはよく嘆いていたことを思い出す。
「みんな忘れて生きていくんだね」
クラスで飼っていた金魚が死んだ時のことだ。
校庭に穴掘って亡骸を埋めた上げたとき、感受性の高いそうな女子が泣いている中で、サヤだけが泣かず真顔だったことを覚えている。
それから一週間経った時、僕も含めてみんな金魚なんかいたことなんか忘すれていて金魚なんかいなかったように振舞っていた。
サヤは違った。
埋めた場所に彼女は手を合わせて祈っていた。
埋めたときには泣いていないサヤがそこまでやる理由がわからず、思わず聞いた。
その時、言ったのだ。
「みんな忘れて生きていくんだね」と。
当たり前のことだと思っていたけど、サヤにとっては違った。
みんながその場の感情を涙という形で清算する中で、サヤだけは胸に抱えていた。
「あんな風にはなりたくない。でも、忘れちゃうよね。」
泣きそうになりながら言った彼女に自分は強く惹かれた。多分、サヤと仲良くなったきっかけはこれだろう。
思い出に浸っていたためか黒板は文字いっぱいで始め書かれていた言葉たちは消されてしまい、授業は置いてきぼりを食らってしまっている。
あとで友人にいけばいいとノートを開く。
昨日もあった国語の授業。覚えがないのでノートを取っているかは不安しかない。
恐る恐るノートを開く。
汚く、蛇行する自分の字の途中からよく見た薄く、整い、真っ直ぐな文字をみた。
よく見たサヤの文字に驚きを隠せず、ノートに書かれた文面を読む。
殆どは昨日行われた授業の内容だったが、最後に一文。赤いアンダーラインを添えて
よくわからないことばかりですが、家に帰ったらノートにまとめてみようと思います。
意味が分からない現状ではあるが、ノートを見ることが先決だ。
カバンの中をゴソゴソと探してみるが、いつもは置き勉している教科書たちがあるばかりで求めるノートは見つかりはしない。
思い悩む中、右の肩を叩かれる。
右を向くと隣の女子が当てられていることを告げてくる。
先生もこちらに気づいたとわかり一言。
「おい、聞いているか。聞いているなら答えてくれ。
わからないならわからないでいいぞ」
先生の後ろにある黒板に書かれていることは先ほど見た文字は何一つなく、授業は進み時間は授業は開始から三十分が過ぎていることが判断できた。
「すいません。聞いてませんでした。
あとトイレ行っても大丈夫ですか?」
前半は申し訳なさそうに、後半はより申し訳なさそうに言葉を出す。
先生はため息をつきながらも、行ってこいと言ってくれたので、右向け右と向きを駆け足気味に廊下へと出た。
トイレといったが、家に帰るこの選択肢しかないだろう。
下駄箱から通学靴ではないなく、運動靴を取り出し、学校からいなくなったことが悟られないように上履きは花壇の裏に隠す。
周りに人がいないことを確認して外に出て家へ向かった。
家は徒歩二十分で、走れば十五分。
勝手に帰ったことがバレれば家族への電話は逃れられないので、急がないといけない。
息が切れながら家へ戻ったときは、次の授業開始時刻と同時刻をだった。
心配してクラスメイトが探す未来が見えたが、適当にフォローしてほしいものである。
自分の部屋へと戻り、とりあえず机の引き出しを引いた。
覚えのない見知らぬノート。
よくある大学ノートで、表紙には何も書かれてはいない。
ページをめくると見知った文字で、
私は誰でしょう。
そんなことが書かれていた。
楽しんでいただけたら幸いです