プロローグ
蝉の音と傾いた日差しを浴びながら、200段を超える石段を駆けていく。
体からは留めなく流れる汗は着ているシャツへ不快感を与える要因となっている。
不快感からの連想ゲームで頭の中には嫌な思いがいっぱいとなる。
思い出したくないから駆けだしたのに、思い出してしまう。
いなくなった女の子を思い出しながら切れた息で続く石段の途中で足が止まる。
駆けるときには、石段ばかりだった目の前には鳥居が見えて遠くには本殿もみることが出来た。
彼女のことを思い出す。初詣に行った時のことだ。
「神様なんていない」
賽銭を入れる直前に笑えないことを言った。
あっけにとられて何も言えない僕に彼女は追撃を行う。
「いてもそれは多分世界のシステムだろうから、個人の想いを叶えてくれるなんてナンセンスな事だとおもうんだ」
ケラケラ笑いながら言う彼女。近くにいる神主さんは苦笑いをしていた。
その時、僕はどんな顔をしていただろう。
その彼女はもういない。
思い出に浸りながら、賽銭箱の前に立つ。
ポッケに入った小銭をゴミと一緒に投げ入れる。
叶わない願いをする。彼女がいたらと考えるがもういない。
「また会いたい」
手と手を合わせて呟く。
応えるような突風が後ろから突き抜けた。
この日より僕の人生は彼女とハンブンコになった
楽しんでもらえたら幸いです