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大陸西部に広がる大平原の南端、ヴェロマティア山脈のふもとは小規模な村が点在するだけのさびれた土地だ。
大陸中央部から西の海まで続く草原地帯は、年中穏やかな風が吹き抜け、安定した気候と豊かな土壌が実りをもたらす、人に住みよい地域である。灰色の岩と浅緑の野草に覆われた大地に、ときおり透き通った水をたたえる小さな河川が流れ、その流域沿いには獣たちの住まう木立が連なっている。どこまでも果て無く続くかに思える草原地帯から北に目を凝らすと、はるか遠くに”大内海”の群青の水平線が見えるかもしれない。
そして背を向けて南を見やれば、地平線の向こうに雄大なヴェロマティア山脈の土色のシルエットと、深緑色の長い帯に飾られる、すそ野を眺めることができるだろう。雨季を除けば雲も少なく、一年を通して青空の広がる平野部と違い、山岳地帯に恵みをもたらす豊富な雨が、深緑の森を育てて大地を彩っているからだ。
こうしてヴェロマティア山脈のふもとには、高木のまばらな草原地帯から一転、枝の密度も高く、昼も暗く、人の姿など生い茂った藪に隠されてしまいそうなほどに奥深い、鬱蒼とした森林地帯が広がっていた。
人々は森の中に点在する湖沼と、山々から流れ出し、北の大草原に恵みをもたらす幾筋かの大河に沿って、小さな集落をなし、大半は水運の利を生かした林業を営み、平野の国々へ絶え間なく材木を供給しながら暮らしている。
その森林地帯でもさらに南の果て、いよいよ山の勾配が険しくなりゆき人が住むには適さなくなってくる境目の地に、トエルと呼ばれる小さな村があった。住人は百もいないほどで、林業を営むにも人手が足りず、わずかな畑を耕す他は森の恵みに頼って生きている。年中、土と獣の匂いにつつまれた、特色もないよくある辺境の村である。
そのトエル村の二十戸ばかりの木造の家屋の一つから、薬草かごを手に抱え、一人の黒髪の少女が現れた。長い髪を頭の両端で縛って下げている。歳は十よりは少し上といったところだろう。丸っこい顔立ちと大きな紅玉色の瞳、はっきり長い睫毛だけを見れば器量よしともいえるだろうが、鼻の少し丸く低いところを見ると、長じても顔立ち鋭く鮮烈な、めざましい美女とはなりそうもない。しかし田舎の素朴な娘といったいでたちで、よく目を凝らせばいとけなさの中に純真な乙女らしさが見え隠れし始めつつある少女、といった風だった。
少女は広場で休む幾人かの狩人衆に声をかけ、貯蔵庫から多少の乾燥させた草花を持ち出すと、村のはずれにある、屋根にまで蔦が張って人が住んでいるかも定かでないようなぼろ小屋に入っていった。
小屋の壁には一面に、様々な薬草、匂いの強い枝葉、染料になる花弁、色鮮やかな果実を干したもの、獣の肝の詰まった土瓶、その他、森で採れて薬になりうるすべてのものが、所狭しと飾られていた。座敷の真ん中に小さな卓を出して、腰の曲がった老婆が一人、肩に杖を立てかけて、複雑な文様の入った濃紫の羽織を身につけて、つまりは村の医療と神事と魔術に関わる種々のことを引き受ける、まじない師の格好をして坐っていた。
「お婆様」
と、少女が声をかけた。老婆はそれに軽くうなずいた。
「昨日の夜になってアーデの姉婿が儂のところに来おった。娘っ子が熱を出したそうじゃ。熱さましと喉の腫れの薬を作ってやらにゃならん。今年は森の風が好くないからして」
老婆はそう言って少女を促して座らせ、後は手元の卓に置いた道具をいじって薬を練り始めた。香草をつぶす擂り粉木から苦みを伴う匂いが立ち込めて、少女の鼻を刺激した。
少女はそれに慣れた様子で抱えていた薬草かごをかたわらに下ろし、老婆と同じように薬づくりを始めた。季節はそろそろ秋の半ば。色づいた落葉が地面を彩り、代わりに空からは枝の合間を縫って光が降りてくるようになる。冷たい風が吹き出せば、もう薬の原料を採ることもできない。収穫を終える支度をして、冬に向けて薬の備蓄を作らねばならない時期だった。
擂り粉木のこすれる音の他には何の音もない静けさの中、黙々と作業をこなしつつ、少女は卓の向かいに座る老婆の顔を盗み見た。幼いころの記憶より、しわが増え、頬のたるんだ不愛想な表情。少女がこの老婆に師事し始めて七年になる。村の薬師兼まじない師である老婆は長らく弟子を持たなかった。老齢に差し掛かり、お前に何かあったときにはこの村にまじない師がいなくなってしまって困るから、と村で唯一老婆より年上だった村長に頭を下げられて、ようやく彼女は弟子をとった。一人は自分の妹の孫娘を。それともう一人、村の子供の中で最も小柄で発育が悪く、つまり最も家庭の仕事に向かなさそうな、体の弱い子供を選んで、薬の技とまじないの技、簡単な魔術をいくつか教え込んだ。それが少女である。
老婆の髪は少女と同じ黒色だ。ほとんどの村人の髪は赤みがかった茶色か、それよりは淡い金色をしていて、黒髪であるのはまじない師の証である。幾種類かの木の実と草をすりつぶした汁を塗り、元の色を黒く染め上げる。歳をくった老婆の髪は傷んでしまっているのか、肩から落ちて胸にかかる、その毛先の色が落ちて紫になっていた。
葡萄渋のような紫に少女は、ああ、お婆様も歳を取ったなと考えていた。老婆に選ばれて薬師見習いになった日のことは今も思い出せる。川辺の泥のような匂いがする染料を髪にわしわしと塗ったくられて、どうして私が薬師なんぞになるのだろうかと訝しんだこと、染料を塗る老婆の手が真っ黒に染まっていたことを覚えている。頭から漂う気分の沈む青臭い匂いに耐えかねて、その日は一晩中眠れなかった。
以来、少女はこの無口でぶっきらぼうな老婆の元で手習いをしている。
七年過ぎた今はもう、自分の境遇に慣れてしまって、己の役割を恨むこともなくなった。老婆とこうして薬を練るのももはや毎年の恒例だが、それも長くは続かないだろう。昔老婆に頭を下げた、老齢の村長も今は亡き人となり、森の温かな土の下に眠っている。あと数年の内には、少女は老婆の孫である姉弟子とともに、このさびれた村のまじない師を継いで生きていかなければならない。それは少女にとっては疑うこともない当たり前のことだった。
半日作業に没頭し、日が暮れるころ、そろそろ夕餉の支度をするべきだろうかと少女がぼんやり考えていると、老婆が水薬を瓶づめにする手を止めて、しわがれた声でぽつりと言った。
「今年の祭りの巫女だがね、オシトコ、お前がやんなさい」
オシトコ、と呼ばれた少女はポカンと口を開けた。
「私が? お婆様、アーデ姉様と私を見間違えてはいませんか?」
「人を年寄り扱いしおってからに。わしはまだそこまで耄碌しちゃいないよ。お前さんにやれといったんだ」
村では毎年秋の半ばに、豊作と狩人たちへの加護を祈る祭りがあった。小さな村の、年でも数少ない催しごとだ。祭りの終わりに祈祷と舞を捧げるのは、村のまじない師の役目であり、すなわち老婆の役目である。
「儀式の手順は七年も見てりゃわかるだろう。衣装はアーデに頼んで仕立ててもらいな。大したことはしないんだから適当にやりゃあいいのさ。祝詞の読み上げと舞の練習くらいはしとくんだよ」
老婆はこれだけ言って、話は終わりだというように手を振って少女を追い払った。それはいつもの仕事終わりの合図だった。偏屈な老婆はこの合図の後には一切のことに答えてくれない。そのことをよく知っていたので、少女は急な言いつけに呆然としながらも締め出されるように外に出た。
* * * *
オシトコというのは少女の名である。この名は痛み止めの軟膏の材料に使われる、赤く、かわいらしい花を咲かす多年草に由来する。彼女が生まれた時、名付け親を頼まれた老婆がそう名付けた。彼女の紅玉の瞳を見ての名づけであろうが、これはいささか風変わりな名前であった。
老婆が名付け親を頼まれたのは、彼女が村では数少ない、字の読み書きができる人間で、教養ある人物と思われているからだが、オシトコの後に老婆に名をつけられた人間は誰もいない。つまりは、そういうことである。
オシトコ自身、風変わりというにも多少滑稽な(と、オシトコは思っていた)名をつけられた恨みを除けば、老婆のことはさほど嫌ってはいなかった。仕事に関わる最低限のこと以外、多くを語らない物静かで頑固な老まじない師は、村人たちからは気味悪がられているが、その余計なことを話さないところがオシトコの気に入っていた。オシトコも人と姦しくしゃべるよりは黙々と手を動かすのが好きな性質である。生まれた時からそうだったか、老婆の弟子になったからそうなったのか、もう分からなくなってしまったが。
オシトコは自分が無能な弟子だとも思っていなかったが、正式に老婆の跡継ぎになるのは姉弟子のアーデだと思っていた。七年前亡くなった老婆の妹の孫であり、老婆のもう一人の弟子である。
アーデはオシトコより歳が五つは上なので、オシトコは彼女のことを勝手に姉弟子だと思っているが、実際に仕事を習い始めたのは同じ頃である。にもかかわらずオシトコが、跡継ぎはアーデになるだろうと考えていたのは、アーデの方が薬師としての腕が上だからだ。優秀な姉弟子は、器用で、物覚えがよく、オシトコより丸一年は先におおよその仕事を身につけていた。
何より、アーデは老婆の血縁である。自身に近い血を継ぐ者に立場も継いでほしいのは、当然のことだろうとオシトコは思う。オシトコは自分を姉の補佐か代理人程度に考えていた。昨日までは。
だが老婆が祭りの巫女にオシトコを据えるということは、オシトコが老婆の後継者として示されるにも等しいことであった。日常の薬づくりのような実益あることに比べれば、まじない師としての祭りの巫女役など、とオシトコ自身思わないでもないが、この小さな村の中で神事とか信心に関わることがどのくらい暗に有難がられているか――ないし、畏れられているかということも、オシトコはよく理解していた。
オシトコが巫女を務めれば、村人は皆老まじない師はオシトコに後を継がせるのだと思うだろう。
以上のことを寝ぼけた頭でつらつら考えながら、黒髪の少女は自分の寝床から這い出した。あまり気分良くは眠れなかった。背中にべったりと肌着が張り付く不快感がある。ずいぶん寝汗をかいてしまったらしい。昨日お婆様が急なことを言うからだ、と少女は思った。
水がめの水で顔を洗い、朝食代わりにいくらかの干し果物と干し肉をつまんで、オシトコは家の外に出た。途端に腐葉土の湿った匂いのする風がオシトコの頬を叩いた。明け方まで小雨が降っていたらしい。下着の上から木肌色の貫頭衣を一枚かぶっただけでは寒いくらいである。秋の本番が足音高く近づいてきていた。
山のふもとにある森を切り開いたトエル村は、それなりの勾配の傾斜の半ばにあり、平らなところを選んで建てられた小屋が二十戸ばかり、坂の下の一番開けた場所が村の入り口であり広場である。そこから脇道にそれて木立に少し入ると老婆の小屋、崖を下ると水くみに使う小川がある。
見ればその小川にかかった橋を渡って幾人かの村人が戻ってくるところだった。森で狩った獣の皮や骨、申し訳程度の山の恵みの加工品や、オシトコたちの作った薬を売りに、一日程度行った先の町まで商談に出た男たちの帰りである。
村の広場に女たちと子供たちが待っていて、男たちが買ってきた村では手に入らない品物を分け合っていた。
軽く騒ぎになった広場にオシトコが入っていくと、それを目ざとく見つけた黒髪の女がオシトコに声をかけてきた。女では一人、男衆とともに町まで出ていたアーデである。
「シト、あたしのかわいい妹。まだほんの四日しか経っていないのに、なんだか一月も会っていないみたい。町で色んなものを買ってきたわ。あなたの家の分も、あなたの分も分けてあるから確かめて持って行って頂戴ね」
そう言ってアーデはオシトコの身体を抱くと、柔らかく、年上らしい慈愛をもって微笑みかけた。
アーデの差し出す袋には確かに、油や酒の入った瓶や、チーズと塩の塊、銅の縫い針と麻の布、村では採れない薬草の束などが、きちんと整頓されて詰められていた。
「お姉様」
と口を開いてオシトコは、自分のことを唯一あだ名で呼ぶ姉弟子になんと話したらいいかわからなくなった。お婆様が私を巫女に選びました。小さな村の祭りといえど、巫女の役目は村人皆に、まじない師の存在を示す機会ですから、その巫女の役目を継ぐからには、私がまじない師の役目をお継します。立派な姉弟子を差し置いて。そう伝えればよいとでもいうのか。
アーデもまた、老婆の技術を継ぐために日々を費やしてきたことをオシトコはよく知っている。人づきあいが嫌いで孤独を好む自分より、物腰穏やかで、年若い母親のような気立てのある姉弟子の方が、薬師としても上手くやっていけるようにオシトコには思えた。オシトコは自分が不当なことをしている気がして、美しい若草色をした姉弟子の瞳から目を逸らした。
その時、アーデの足元に並べられた荷物に、老婆の着る装束と同じ濃紫の布地があるのが見えた。
「お姉様、お姉様は私が巫女を継ぐことを知ってらしたのですか」
「ええそうよ、町に出る前にお婆様から。それであなたの衣装を仕立てるのに、布や飾りを買ってきたわ。お婆様ったら、その様子だとシトには何も話していなかったのね?」
「私は昨日になってお婆様から聞きました」
「お婆様にも困ったものね、大事なことでも必要がないと思ったらなんにも言わないままにしてしまうのだから」
そういってオシトコに荷物入りの袋を寄こして、自分の分が詰まった袋を拾い上げると、アーデはいまだ喧騒が続く広場を出て、家屋が並ぶ坂道を上り出した。オシトコもその後についていく。
「お姉様は何とも思わないのですか。私より、お姉様の方がよっぽどお役目にふさわしいでしょうに」
「あら、どうしてそう思うのかしら」
「お姉様の方が上手に薬を作れますし、病の診断も正確ですから。それに、皆から好かれています」
アーデは可笑しそうに微笑んだ。
「でも、呪術と魔法はあなたの方が上手でしょう」
「役に立つとは思えません」
薬師にしてまじない師である老婆は、オシトコたちに神秘的な力についても教えていた。火種をおこす術、毒を見分ける術、雨除け、風よけの術、運気を占うまじない、作物を健やかにする術、簡単な傷癒し、魔払い、その他いくつか。田舎の村々でよく見かけるまじない師の一般的な技能として、オシトコはこれらの技を身につけていたが、それが村の暮らしの役に立つとは思えなかった。
作物を育てたり、傷を癒したりするのは、薬であってもできることだ。荒れた川を鎮める術や、ものの腐れを防ぐ術は、役に立つかもしれないが、肝心のこうした術にはアーデの方が長けていた。他方オシトコの方が長けているのは魔払いや結界を張る術であるが、こうした術を実際に役立てたことは一度もなかった。オシトコは素直に考えたことを口に出すことにした。
「魔払いや結界が使えるからといって、魔獣や亡霊の類なんか村に出てきたことはないでしょう。私が得意な魔法なんて、生活の中で何の役にも立たないものばかりです」
「あら、今村の中に悪しきものが入ってこないのはお婆様がずっと魔力を張り巡らせてくださっているおかげよ。あなたがお婆様の後を継いだら、村の守りや獣除けのまじないもあなたが代わりにかけることになるわ。責任のある仕事だと思うけれど」
「お姉様だって魔払いができないわけではないでしょう。それに、仮に村の中に魔物が入り込んだとして、狩人たちがそれを黙って見ていると? まじないがなくても、男たちが追い払ってくれるでしょう。現に皆、村の外まで狩りに出て、魔獣に喰われることもなく帰ってきますから」
魔除けのやり方は知っていても、オシトコは実際に魔獣や亡霊の類、――総じて”魔物”と呼ばれる悪しきもの――を目で見たことはなかった。それは老婆の張った結界によって村にはそうした魔物どもが入ってこれないからでもあり、オシトコ自身が幼さゆえに村の外にほとんど出たことがないからでもあった。たまに、薬草を摘みに外に出ることがあっても、必ず老婆がそばにいて、獣除けのまじないをかけてくれていた。
だからオシトコは魔物の危機を肌身に感じたことはなかったし、結界の術もそれほど重要には考えなかった。何より優秀な姉弟子に、魔物から村を守る役目をこなせないとも思わない。町への買い出しにアーデが同行したことにも、彼女が万一に備えて獣除けの術をかけるため、という理由がある。仮にそうした術にオシトコの方が長けていたとしても、表向きのまじない師は姉弟子が継いで、自分は裏方としてそうしたまじないをすればいいだろうとオシトコは思う。
そうして年下の同僚が不満げなのを察したのか、アーデはさらに言葉をつなげた。
「それにお婆様曰く、まじない師は少し怖がられておくくらいがちょうどいいのですって。人々が、超常的なものへの恐れを忘れてしまうといけないから。大きな力を恐れ敬う気持ちがなければ、必ず恐ろしいものの方から私たちの元へ思い出させに来るのだと。私じゃきっと、威厳がないからダメなのね。その点シトは落ち着きがあってしっかりしてるから。
だからシト、あなたがお役目について不安になることは何もないのよ。あなたにしっかりと能力があることは私も保証する」
「でも、お姉様は、その気になればまじない師の弟子なんてやめてしまうこともできました。誰かに嫁いで、家庭に入ることだって……」
選べたはずなのに、あなたはまじない師の技を学び続けていたじゃないか、それはお婆様の後を継ぐためじゃなかったのか、と続けようとして、姉弟子はオシトコの言葉を遮るように言った。
「シト、わたしがお婆様の弟子になったのは、わたしが好きで選んだこと。誰がお婆様の跡取りになるかなんて関係ないわ。シトはわたしに遠慮なんかせず、自分の任せられたお役目を喜んでいいの。大丈夫、村の誰も反対なんかしやしないわ。皆あなたのことをちゃんと認めてくれる。それとも、お婆様の後を継ぐの、本当はいや?」
嫌ではない、と小さな声で返すと、それならいいのよ、と姉弟子は優しく微笑んだ。いつの間にかオシトコの小屋の前まで坂を上ってきていたので、二人はそこで一度分かれることになった。
オシトコは自分が村の人たちに本当に認められるのだろうかと考え、憂鬱な気分でため息をついて、荷物袋を抱え直し、自分の小屋へ帰っていった。