君と過ごす幸福
漆黒の闇に淡い光が差し込む。
どこまでも優しいその光はまるで夜闇に寄り添っているようだ。
「ナハト?」
「起こしたか」
寝ぼけ眼でふらふらした足取りで隣に来た彼女はそれを見つけた瞬間、普段よりずっと幼い表情でふにゃりと微笑んだ。
「きれい」
煌々と輝く月からその光を浴びながら微笑む彼女へと視線を移して頷く。
「あぁ、綺麗だ」
「ずるい」
その視線に気づかないまま彼女は形のいい唇を尖らせて拗ねた声を出した。
「ひとりでこんなに綺麗なお月さま見てるなんて。起こしてくれればいいのに」
「気持ちよさそうに寝てたからな」
ぶすりとした表情に苦笑いを零して悪かったと謝ると、彼女はまたへにゃりと笑って甘えるように身を寄せてきた。
そっと寄せられた体を抱いてまた月に視線を戻す。
革命が成り、長い夜が明けたこの国で未だ夜の中にいる自分。
そんな自分に寄り添う優しい月のような彼女。
「ディアナ」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
「変なの」
くすくすと柔らかな笑い声が響く。
1度は諦めた幸福がここにある。
その事実がたまらなく怖くなる時がある。
無意識に強まった腕の力に何かを感じ取ったらしい彼女がじっとこちらを見つめる。
「お月さまはさ、夜だからあんなにきれいに輝けるんだぜ?」
「あ?」
「アンタがこの月夜に何を重ねてそんな顔してんのか知らねぇけどさ、あたしは好きだよ」
ま、アンタが一緒なら闇夜だろうと月夜だろうとなんでもいいけどな!なんて笑うから、なんでもないように、とてもきれいに笑うから。
「ナハト?」
「んでもねぇよ」
そのたびに思い知る。
この腕の中の存在が俺の全てで。
彼女に自覚はこれっぽっちもないだろうけれど、彼女がいないと生きていけないのは俺の方で。
色々と残念なところさえも愛しくて。
幸せにすると誓ったのに、幸せを貰うのはいつも自分で。
「ディアナ」
「ん?」
「愛してる」
「な!ななななな!?」
真っ赤になって口をパクパクさせている彼女に口づけて笑う。
「……今度は領民も呼んで月見でもするか」
「うん!」
いつだって何でもない顔で俺を掬い上げる。
もしかしたら自分には不相応な幸福なのかもしれない。
けれど、もう手放せそうにはないから。
今宵の月とお前に改めて誓おうか。
お前と過ごす幸福を。
*ブログで参加させていただいた上花企画~お月見編~参加作品




