「9.自分の両手」
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これもひとえに読んで下さる皆様の御陰です♪
今後もどしどし更新していくので、
この先も六星かのりを見捨てないで^^;;;
トクトクトクトク…と、筋肉や骨を伝って心臓の鼓動が聞こえてくる。今にも叫びだしそうな程、アリシアの心中はグチャグチャになっていた。膨張を続ける恐怖が口から飛び出し、床中を駆け回って狂気めいた乱舞を踊る。そういう奇怪なな光景でさえも、今のアリシアなら楽しむ事ができるのかもしれない。それ程に心が狂乱しているのだ。
ただ、別に黒兵士が怖いわけではない。扉が開けばそこには敵がいて、確実に戦いになる。それが怖い。被害者になるよりも、加害者になってしまう事の方が、彼女にとって最大の恐れの対象だった。
「自分のこの両腕も、鋭い刃物に変化して人を傷つけてしまうかも…。」
「最悪の場合、相手の命を奪ってしまうよ。」
「あの部屋で、いきなり発砲してきた兵士達を殺したのは…私じゃない。」
「でも、あの場には自分しか居なかったよね。」
「無意識だったんだから、そこに罪はないと思う。」
「人を殺めてしまった事に、無意識だとか故意だとか関係ないよ。」
「罪は罪、それ以上でも以下でもないわ。」
「あなたは、あの人達をその手で殺したの。」
「もう逃げることはできないわ…。」
「逃げたい、逃げ出したいよ。」
「ねぇアリシア、もう一度その手を差し伸べて私を助けて…。」
いくつもの言葉が頭の中で生まれ、やがて消えていく。そして、アリシアは気がついた。最初の部屋で黒兵士を殺したのは、確かに自分なんだという事に。もしかすると、始めから知っていたのかもしれない。でも、認めたくないという思いが、その事実を心の奥底に封印してしまっていたのだろう。「気がついた」のではなく、「認めた」と言った方がしっくり当てはまる。
一瞬扉から目を離し、自分の両手を見つめた。そこにあるのは、確かに人の手の形だ。でもそれは同時に、いつ凶器に変わってしまうかもしれない殺人鬼の手でもあった。
アリシアは強く強く両手を握りしめた。爪が手のひらに食い込むほど、力の限りに握りしめる。そして、痛みを感じてすぐに手を開いた。そこにはくっきりと爪痕が残り、内出血しているところも見て取れる。その様はまさに人の手なのに、その手が憎くて、その手が嫌いで、そしてその手が怖い。
考えを巡らせている間に、どれだけの時間が過ぎたのかはわからない。それは数秒かもしれないし、数分もしくは数時間も経過しているのかもしれない。でも、アリシアは気がついた。ボタンを押せば簡単に開くはずの扉が、沈黙を決め込みなかなか開こうとはしない事に。確かに扉の前まで来ていたはずなのに、何かがおかしい。そう思って、また後ろのモニターを見た。
モニタールーム前を映した画面には、確かに黒兵士がいる。でも、先程とは明らかに様子が違っていた。部隊のリーダーらしき男が、他の二人になにやら手で指示を出しているように見えた。その後、リーダーと体の大きな兵士が廊下の先、T字路の方へと体を向け歩き始める。残った兵士は研究室の方へと向かった。
一体何が起きたのか、アリシアには全く持って理解不能。でも、なんとかこの場は助かったと言うことだけは把握できた。
「はぁ〜…」
不意に、肺の中にため込んでいた息を一気に吐き出す。この部屋に黒兵士が来ると思った時から、今のこの瞬間まで、もしかしたら息をするのを忘れていたようだった。その後、何度か深呼吸を繰り返し、心臓も今では普通の早さに戻っている。脱力感が一気に訪れ、机の上に両腕をくの字に曲げ頭をその上にそっと置いた。一瞬目を閉じてしまいそうになったが、すぐに脳がそれを拒む信号を送る。またあの夢を見てしまうのが、この上なく恐ろしかったからだ。
視線の先にはファイルが一つ見える。何故だかそれが妙に気になり、ソレを手にとって顔のそばに持ってくる。ファイルの表紙に書かれた文字を、何となく目で追った。たぶんファイルの目的を表した言葉なんだろう。軽い気持ちで、その文字を言葉に出して呟いてみた。
「レ…プ…リ…カ…けん…きゅう…レポート………」
何のことはない、ただの研究レポートだ……。
……いや、違う。そう思って、アリシアはすかさず顔を上げ、もう一度タイトルを読んでみる。
そこにはこう書かれていた。「模造人〈レプリカ〉研究レポート」と…。
第十話に続く…
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