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     「44.真実」

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「わかりました、正直に言います。実は、オレ一人で倒したわけではありません。もちろん、チュリアさんが前線に出て戦ったわけでもないです。魔剣が…一緒に戦ってくれました。」


 窮地に追い込まれたクレイは、全てを正直に語る決心をし、そう話し始めた。その言葉にルキアは、苦笑いを交えつつ答える。


「フンッ!やっぱりそうか。この奈落を突き刺した痕は、正に魔剣の切り口だろうな。そんな事は始めから分かっていたよ。」


 そう言われ、クレイは驚く。そう、ルキアは奈落の亡骸を、その傷口を見て全てを知っていた上で自分に聞いていたのだ。


 もしかすると、自分が発言する状況を作るために、読心の能力をほのめかしただけで、始めから使う気など無かったのかもしれない。自分の口から真実を聞きたくて、たとえ己に非のある話でも、的確に報告する事が大事なのだと、ルキアは身をもって自分に教えたかったのだろう。と、クレイはそう直感した。


 ルキアは、奈落に残ったその傷口を最初に見た時、ある人物を思い出していた。その昔、一緒に戦場を駆けた一人の魔剣。その魔剣が放つ斬撃の痕に似ていると感じていたのだ。そして、その男の名は確かギルディアだったな、と彼は思い出していた。


「その魔剣はもしかして女か?普通の人間の姿だったのか?」


「え?…あ…はい。人間の姿でした。」


「そうか、奈落だけではなく、完成形までいやがるのか。」


 この時になってルキアは、初めてその事実を知ったのだ。すべてはガーランドが報告を怠ったせいなのだが、ルキアはその事すらも知るはずが無い。自分達の部隊の中で、クレイが始めて魔剣の完成形に遭遇したのだと、そう思っているはずだ。


「そいつは一人だったのか?完成形は一人なのか?」


「はい。あ、いや…一人でしたが、もう一人いると、そう言っていました。」


「なんだって!アイツが2人も!!」


 クレイの話を聞き、急に声を上げたのはルキアではなく、ギーハだった。


 彼はアリシアの強さを充分に知っている。知っているが故に、魔剣が2人いる事に恐怖し、無意識に声を張り上げてしまったのだ。


「ん?なんだギーハ、お前も魔剣を知っているのか?」


「は…はい、知っています。隊長の事等色々あったので、事後報告になりますが…。」


 思わず声を出してしまい、挙句ルキアに突っ込まれ、嘘をついても意味がないと思い彼は隠さずにそう言った。そしてそのまま、初めてこの部屋で魔剣に遭遇した時の事を、事細かに説明した。そしてその会話に便乗する形で、クレイが停電中に加勢してくれた魔剣について説明したのだった。


「そうか、なるほどな。…それでその後、お前は魔剣をどうしたんだ?戦ったのか?逃げたのか?」


 二人の話を聞き、全てを理解した上で、ルキアはクレイにそう聞く。


「戦っても、逃げてもいません。お互いに情報を交換して、そしてそのまま分かれました。」


 クレイは包み隠さずそう語る。ギギの力がある以上、もはや嘘をついても意味が無いのだ。現に彼は、この後のルキアの言葉を聞いて正直に答えてよかったと実感する。


「おい、ギギどうだ。今の発言は、真実か?」


「はい、そのようですよ。」


 ルキアとギギが会話を交わす。


 クレイは驚き、直ぐにギギへと視線を移した。そこには滑稽な格好をした罪人がいる。両手を軽く握り、それを両目に当てていた。それはまるで双眼鏡を覗いているような感じである。それこそが、読心のポーズに他ならないのだとクレイは思った。「もしも今、嘘をついていたら…。」そう思うと、悪寒が走る。


「魔剣アリシアを、逃がしたって事だな?」


「はい、そうなります。」


「ちょっと待った。何を言っているんだよルキアさん。アリシアって言えば10年前に両親を殺 し無に還った、あの魔剣だろ?素が無いのに、レプリカは作れないんだ。アイツはアリシアではないと思うが?」


不意にギーハが口を挟む。その意見を聞き、珍しくミアもギーハの意見に賛同し、強く頷いていた。その隣で亡骸を運んでいたザイルも、ルキアの方に顔を向け頷いているように見えた。一行を軽く見渡し、ルキアは笑いを堪えながら言う。


「なんだお前ら、あんな絵空事の昔話を、本気で信じているのか?」


『え??』


 ルキア以外の全員の頭の中に、疑問符が浮かんだに違いない。一瞬の沈黙が生まれ、その後すぐにルキアの大きな笑い声が部屋中に響き渡った。


「がぁ〜〜〜はっはっは。お前ら馬鹿じゃねぇのか!確かに10年前、裏切り者ギルディアは、娘のアリシアに刺され死 んだって話は有名だな。だけど、その時に、その場にいた俺たちの同志は皆息絶えたんだぞ。その後、どうなったかなんて定かじゃないだろう?」


「ルキアさんは、その場に居なかったのか?」


 ギーハが聞く。彼の頭は混乱し切っていた。今まで信じていた話を、ルキアは軽く否定するのだ。彼が何を言いたいのか、それはギーハだけではなく、その場の全員が深く考え込んでいたに違いない。


「オレか?オレはな、ギルディアとは女を奪い合う程仲が良くてな、そのせいでギルディア討伐隊から外されちまったのさ。お前らだって、あの頃はまだヒヨッコで、あの作戦には参加して無いだろう。お陰で、今こうして生きていれらるんだがな。」


『!!』


 皆は更に驚き戸惑う。普段のルキアは、自分の昔話など一切話す事など皆無だ。その人物が、今は面白そうに語っている。それに、幾多の修羅場を経験し、優秀な戦歴を収め、今では大隊長の座につくルキアである。その彼があの作戦に参加していなかったなど想像もしていなかった。無事帰還した英雄なのだと、そう思っていたのだ。真実を目の当たりにして、彼らは驚かずにはいられない。


 そんな彼らを尻目に、ルキアは更に話を続ける。




「あの森は、今は誰も立ち入ることができないように、怖い噂が流れているだろう?」


「森の中央にそびえる魔剣ギルディアの亡骸が、森に入る者を怨念の力で刺し殺 してしまう…。現に何人かがあの森に入り、そのまま帰ってこなかった。別名『還らずの森』とも呼ばれる、死の森の噂。だろう?」


「そうだ、だが…。これは上層部だけの機密事項なのだが、隠し事はオレの性分じゃないしな。これ以上隠していてもしょうがない。あのな、本当はあの森に、アイツの亡骸なんて存在していないんだよ。」


「なんだって!!!一体どういう事だよ!?」



第四十五話へ続く…



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