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     「26.二つの思想」

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今後もよろしくお願いしますw


あと、評価のほうもお忘れなくww

 やがて、更に時は流れ、人間たちの中に二つの思想が発起しました。


 一つは神の意思に身を任せ、罪を重ね、そして無に還る事こそが神への最高の信仰の証と考える思想。無に還りピースを神に還すことで、更なる高みへと行けると信じる「アグニ教」。


 もう一つは、神の意思に背くことなく普通に生活をし、その中で得る罪は「祈り」や「懺悔」によって神に返すという思想。神より頂いたピースを無に還す事は、神への冒涜。無に還る事無く輪廻転生を繰り返し、罪を神に返すことで、平穏で幸せな生活を送れると信じる「ドルマ教」。


 大きく分けてこの二つの考えが、人間の生活に大きな影響を与えました。二つの思想はそれぞれが絶対に交わることは無く、何年にもわたりいがみ合っていたのです。


 さて、そろそろ話をアリシアに戻しましょう。アリシアの父ギルディアは元々「アグニ教」の人間でした。戦いに身を置き、やがては魔剣となります。その存在は、その昔、世界を混沌へと誘いそして救った最強の魔剣「セシリア」にも匹敵するのでは、とまで言われていました。


 ある日の戦いの中で、傷つき森を彷徨っていたギルディアは、一人の「ドルマ教」の女性に出会います。彼女こそアリシアの母「ミリア」です。ミリアは傷ついたギルディアを見ると、「思想」に関係なく彼の手当てをしてあげました。その事で彼はミリアに好意を持ち、自分の信じた「ドルマ」を捨て、彼女との愛を選ぶ事になります。2人へ更に遠方の森へと逃げ、ひっそりと暮らしました。


 ギルディアは、一日の殆どの時間を神への「懺悔」に費やします。自分が無に還り、愛するものが悲しまないように。そして自分自身もミリアとは永遠に離れたくは無いと思ったからです。徐々に彼は普通の人間へと近づいていきました。


 そんなある日、2人の間に一人の女の子供が生まれます。二人は新たな命の誕生と、二つの存在「魔」と「人間」の間に生まれた奇跡の子だと大いに喜びます。そして、二つの思想が平和に交わる未来への希望を込めて、それらとは関係の無い女神の名を子供につけたのです。それが「アリシア」でした。


 それから数年三人は、森の中で幸せな生活を送っていました。やがてアリシアも大きくなり17歳になった頃、森を大きな轟音とともに異形のモノたちが押し寄せてきたのです。それはギルディアとミリアが、日ごろ心配していたことが現実になった瞬間です。「アグニ教」の大部隊が教団を捨てた裏切り者、魔剣ギルディアを葬りに来たのです。


 もちろん彼は、大切な家族を守る為戦うことを選びます。何百何千と押し寄せる異形の者を魔剣の力で殺 し、わずか数分でその半分以上を倒したのです。やがては魔剣本来の姿に戻りました。その姿はとてつもなく大きな大剣だったと言われています。


 そして彼は徐々に自我を失い、無への暴走を始めたのです。


 そこでミリアは、その暴走を止めるにはもう死しか術は無いと思います。それができるのは魔剣の血を引くアリシアしかいないと。そうして彼女は、アリシアにまず自分の命を捧げます。そうする事で彼女を「魔剣」へと目覚めさせる為です。肉親殺 しは重罪。アリシアはすぐに魔剣となり、押しかける異形の者を倒しつつ、父親の元へ全速力で駆けたそうです。


 その中でアリシアも徐々に人間から剣の姿へと変貌を遂げます。最後には空高く飛び跳ね、そのまま魔剣ギルディアを貫いたのです。その瞬間、大きな力と力がぶつかり合った結果、大きな衝撃波が生まれ周りに居た異形のモノの殆どは命を落としました。


 そして魔剣ギルディアは死に、魔剣アリシアは重罪を二つも重ねた為、無に還りました。これが今に伝わる、10年前に起きた魔剣アリシアの話。


                       ※


 どれぐらいの時間が経ったのか解らない。だが、老神官の長い話がやっと終わったといった感じだった。神官自身話の途中で疲れを感じたらしく、床に腰を下ろしている。それでもアリシアはそういった事には気もとめず、ただただ真剣に、神官の言葉に聞き入っていた。


 「どうですかな?これで納得してもらえたじゃろうか…。」


 全てを話し終え、改めて彼女に答えを求めた。見ると彼女は深くうなだれているように見える。全てとまではいかないものの、ある程度を理解し、そして絶望しているのだ。神官の今の話が嘘だとはとても思えない。なぜなら話の途中からはアリシアもよく知っていた。それは、先ほど夢で見た内容そのままだったからである。


 「……。」


 夢の出来事を思い出し、言葉を失うアリシア。その姿を見て、どうやら納得してもらえたのだと安堵する神官。


 「結局のところ、あなたが誰なのかは解らな…」


 「私、何故だかその話知っていたの。途中からだけど、さっき夢で同じ内容を見たわ。」


 神官の言葉を遮り、突然彼女は口を開いた。神官は少し驚いたが、彼女の話をちゃんと聞いた。そして小さく「ほほぅ…。」と返す。


 「とてもリアルな光景だった。森が燃えてて大きな剣があって、お母さんが私の両手を取って自分の心臓に…」


 そこまで言って言葉を詰まらせる。彼女の体が小刻みに震えていることに神官も気がついた。その姿は何かに恐怖し、怯えているように見える。


 神官は頭の中で慎重に言葉を選び、震える彼女にそっと言葉をかけた。


 「魔剣アリシアの話はとても有名な話です。誰が伝えたのかは解からぬが、事実の話でしょう…」


 そこまで言って一度言葉を遮り、女神像のほうをチラリと見る。そして数秒置いた後、また話し始めた。


 「たぶん、誰かに聞いたその話が、あなたの記憶に強い印象を与えた。…そして、それが夢という形式となって見ることができた。と、そう考えるほうが極あたりまえだと思うのだが。」


 彼女を諭す様に、神官は優しく語りかける。アリシアもその話を聞いて、少し納得する。確かに、神官の言う事は間違っては居ないと思えてきたのだ。もう何もかもが解らない。自分が誰なのかも、結局は解らなくなってしまった。そう思ってアリシアは、深い深い溜息を一つついた。そこで、ゆっくりと自分に起きた出来事を思い出してみる。


 自分が目覚めた時、目の前には黒い服を着たアイツが居た。そして彼が耳元で囁いた内容を思い出す。


 「おはようアリシア…いや、12番目のアリシアと言うべきか。まぁ、そんな事今はどうでもいいか…。」


 確かに黒服は自分にそう言った。その時は全く感じていなかったが、今は深い疑問がアリシアを包む。それをそのまま口に出し、神官に問うことにした。


 「目覚めた時、アイツが言っていたわ。私を12番目のアリシアだって…。私にはそれがどういう意味かは解らないけど。世界に詳しいあなたならこの言葉の意味が解る?」


 「12番目?アイツ?……一体なんの事ですかな…」



第二十七話へ続く…

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