実験室
森の奥深くに木造の小屋があった。そこは実験室と呼ばれている。
ひっそりとした森の中で、今も実験中のフラスコが揺れているという。木漏れ日が綺麗な昼下がり、実験室にノックの音が響いた。
返事がないことに気づいたのか、間も無くしてドアが開いた。何年ぶりの訪問者だろう。フラスコは尚も揺れている。
訪問者は幼い少女だった。見たこともない実験器具は彼女にとって実に奇妙奇天烈だった。あるフラスコには桃色の液体、またある試験管には青色の結晶。太陽の光が当たるとより輝きを増す。それらを見る少女の眼差しもキラキラしていた。
彼女にはそれが、お菓子に見えたのである。
「こっちは桃味!こっちはブルーハワイ?」
無邪気な少女は薬品を集め始めた。
ちょうど15時のチャイムが鳴る。それがお茶会の始まりを告げる合図だった。
フラスコは今もまだ揺れている。