私が起きてから彼の家まで行く話。
デジタル時計がリンリンと機械音を鳴らす。
画面には5時30分と表示されている。速やかに音を止めると、ベッドから起き上がり部屋から出る。
洗顔し、キッチンにたどり着くと、いつものように朝食を作り始める。フライパンに少しの油とベーコンを3枚入れて食パンをトースターで2枚焼く。野菜をいくつか出してサラダにする。
だいたいの過程が終わる頃に兄は起きる。親も兄も私には何の関心もない。ただ食事を作る居候程度にしか思っていない。でも、構わない。お互い様なのだ。
食事を終え、しっかりと歯を磨き部屋に戻る。親は出張で家にはおらず、兄は高校に通っている。兄や私が愛情を受けていたかと聞かれると、答えることができない。
髪を整え、制服を着る。荷物は学校用ではなく、財布とメモ帳だけでいい。兄が登校したのを確認し、私も家を出る。普段使っている自転車ではなく、その横にあるロードバイクにまたがる。
目的地は少し遠いのだ。夏とはいえ、朝はまだ涼しい。スピードを上げながら少し考える。昨日は、彼の部屋でコミュニケーションの特訓をしようと思ったが、トラブルがあって急遽ファミレスに行くことになった。2人乗りもしたし、彼ともたくさん話せた。見つめられた時は嬉しくてたまらなかった。
今日は何をしようか。他の学生達はまだ夏休みではないのだ。焦ることはない。ゆっくり、少しずつ彼との特訓を進めればいいのだ。
彼のアパートから少し離れた、名前も知らないアパートの駐輪場にロードバイクを止める。ここからは徒歩だ。
記念すべき特訓の2日目が始まる。