奥の部屋
大柄で強面な男性受付、ボーゴンに案内されたカウンター奥の部屋は大量の本が整然されている部屋だった。
部屋自体は薄暗く、窓から射す日差しだけが横並ぶ本棚を照らしている。
俺はそんな部屋に入ると、
「すげぇっ!」
大量に揃えられた"異世界の本たち"に、獲物を貪る獣のように食いついた。
ここにあるのは、全部俺が見たことのない本。もうそれだけで、心が躍るのは仕方ないわけでもあった。
ほとんどの本は魔法や魔術に関する本だが、中には歴史書のような本や料理のレシピ本、建築関係の著書など前の世界でも見ていたような種類の本も貯蔵されていた。
喜々として本を読みあさる俺の脳に、呆れ混じりの声が響いた。
「あなた……その本好きな性格、ちょっと病的よ」
頭の中で訴えてくるレアルゥの声には、心の中だけでうるさいと反論しておく。
俺の心の声を聞き取ったのか、彼女はそれ以上何も言わなかった。
「あはは……、キョウヤさん、予想はしていましたけどすごい本好きっぷりですね」
「そういうサリィだって、最初図書館に入ったとき目を輝かせていたじゃないか」
「ほほう、あのサリィちゃんも目を輝かせたトショカンって所か……俺もいつか行ってみたいもんだな」
「機会があれば、喜んでご案内しますよ」
あごひげをさすりながらトショカンを想像しているであろう顔のボーゴンに俺はいった。
「それにしても……この世界の"本"って、結構貴重なものって聞いたんですけど」
「ああ、それはこのギルドに所属してるやつらの努力の賜物と言わざるを得ないだろうな」
「とは言っても、たぶんみんなは商売をしていく中での副産物としか受け取ってないような気もしますけどねー」
「ははは、そりゃ違いねぇ。ここにいるやつらは全員、根っからの商売バカだからなぁ」
豪快に笑うボーゴンを横目に、サリィがいう。
「さて、キョウヤさん。あなたは私の専属契約者であるので、自動的にこのギルドに入っていただくことになります」
「問題ない。つまり俺は、今日からここの本を読み放題ということだもんな?」
「でも、キョウヤさんにはキョウヤさんのやるべきことがあるんじゃないんですか?」
当然、俺の最優先にすべき目的は忘れていない。
しかしそれに近づくには、こうして本を読むことも大事なはずだ。
「分かってるよ。俺だってそんなモタモタするつもりはない。こっちに来たのが俺だけなら話は別だったかもしれないけど」
月宮館長や立花さんたちが俺に向ける気持ちは理解しきっているつもりだ。
それでも図書館の外に送り出してくれたみんなの決意を無駄にするつもりは毛頭ない。
すると俺の言葉を聞いたサリィはふっと笑って、
「こんなことを聞くのは少しやぶさかだったかもしれませんね。たぶん私はトレーラーのほうで忙しくなってしまうと思うのであまりお手伝いできそうにないんですが……」
「ま、その辺のことは俺たちに任せな。サリィちゃんの専属なら誰も文句言わねえだろうよ」
ボーゴンが頼もしそうに口角を釣り上げる。
サリィはそんな彼に対して「ありがとうございます!」と元気よく頭を下げていた。




