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イモータル

「――森を出る?」


 サリィに連れてこられたのは、図書館の外だった。

 誰もいないここで、彼女は話を切り出す。


「はい。キョウヤさんたちが元の世界へと帰るには、転移魔術を習得する他ありません。そのためにも、いつまでもここにいては、いつ転移魔術を習得できるかなんてわかりません」


 確かに……。と、俺は頷いた。こっちの世界に来て、図書館には何故か魔術を記した本があったにしても、それには初歩的な魔術しか記されていなかった。

 魔術とは基本的に本や他人から教わることで習得していくそうだ。それならば、サリィの言う通りいつまでもこの図書館に、ひいては永遠森林にいたところで何も解決しはしないのだ。


「ですから、私はここから離れて、少なくともサザールへと出るべきだと思うんです」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。そうなったら……この図書館を守るのは誰になる?」


 図書館を守るのはずっと俺の役割だった。図書館内で与えられた役割はほとんどなかったから、唯一戦闘する力を持つ俺が図書館の守護及び周囲の偵察をやっていた。

 それが、もし俺が図書館を離れるなんてことになったらどうする? 俺以外に戦う力を持った人なんて――


「――そこで、目を覚ましたアノヒトですよ」

「目を覚ました……?」


 まさか、月宮館長を?


「で、でも月宮館長は戦う力なんて……」

「大丈夫です。……おそらく、ツキミヤさんはキョウヤさんよりも強い」

「え……」


 サリィの言葉に俺は絶句した。

 俺が自分の職紙にステータスを出した時、サリィは俺が今この世界で一番強いと言っていた。

 なのに、月宮館長はそれを上回るというのか?

 そう言えば、俺はまだ月宮館長の職業を知らない。というか、職業を設定しているような素振りも見ていない。

 つまりサリィは、月宮館長の職業をある程度予想しているということなのだろうか。


「ツキミヤさんの職業は――イモータル。私はツキミヤさんのあの目を疑うレベルのステータスを見たことはありませんが……"パターン"だけは、見たことがあります」

「パターン……?」

「例えば、キョウヤさんのように理解力、魔力ともに高ければ、魔術を得意とする職業に。タチバナさんや他の方たちのように理解力だけ飛び抜けていれば、情報整理に長けた職業に……といった感じで職業にはそれぞれなるためのステータスパターンというのが存在します。ツキミヤさんの場合、それが、"イモータル"という職業のステータスパターンと一致するんです」

「それじゃあ、そのイモータルって職業は戦闘向けの職業ってことか?」


 俺の問いに、サリィは少しだけ考える素振りを見せた。判断が難しいのだろうか? 眉をひそめ、うーんと唸る。しかし、そう時間が経たずに顔を上げる。


「……戦闘向け、と言えばそうなるかもしれません。でも、"非戦闘向け"と言っても間違いではないんです」

「どういうこと?」


「つまりですね……」サリィはそう前置きしてから、次に言うべきピッタリな言葉を虚空から探し出す。


「イモータルという職業は、私が文献のみで見たことのある、"全ての職業の派生系"なんです――――」

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