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第8話『呼び出し-前編-』

 眼鏡を外し、髪を解いた私は今までの悪い評判が霞むほどにいいらしい。それはあくまでも見た目だけの話かもしれないけれど。

 それは日が変わっても変わる気配はなさそうだった。



 四月十日、金曜日。

 今日で一週間が終わる。慣れない環境だから非常に感じるかと思いきや、あっという間に過ぎ去っていきそうだ。これも由貴がいるからだと思うけれど。

 そして、今週が始まったときには予想もつかなかったことがある。


「安藤って意外と良い奴っていう噂があるぞ」

「かっこいいよね、安藤さんって。結構タイプかも」


 本当に昨日から私の評価がぐっと上がってきている。最初は掌返しで嫌だなぁと思っていたけれど、ここまでガラリと変わるとどうでも良くなってくる。悪く言われるよりかはよっぽどいい。まさか、こんな日が訪れるとは。

「真央、すっかりと人気者だね」

 席に座ると、私の所に来た由貴がそんなことを言ってきた。

「まあ、悪く言われるよりはいいよ」

 ただ、人気者と言われるような実感はない。みんな、私のことを悪くは思わないようになったみたいだけれど、恐れみたいなものがあるようで、私に話しかけてくるクラスメイトはあまりいない。

 遠くから私を見るクラスメイトは多い。ただ、以前とは違って鋭かった目はまんまると、低かった声は高くなっていた。特に女子。

 そういえば、結構タイプって言っていたのは女子生徒だったな。女子が女子を好きになる……それは同性愛の一つ。そして、思い出すのはホモ・ラブリンス。一切の関わりを持っていないのに、あまりいい印象がないのは何故だろうか。やっぱり、リーダー「ばらゆり」のことが全然分からないからかな。

「どうかしたの? ちょっと眉間に皺を寄せて」

「いや、何でもないよ。ちょっと考え事していただけ」

 やばい、由貴に見せてはいけないものを見せてしまったような気がする。せっかく周りの生徒が恐いイメージが取れ始めていたのに、ここで恐いと思われたら由貴から距離を取られてしまうかも。

 そういえば、由貴とこうして自然と話せるようになったことも、週が明けた頃には思いもしなかったな。それが一番嬉しい。

「あっ、笑った」

「……その言い方だと、まるで普段は滅多に笑わないみたいじゃないか」

「ごめんごめん。ただ、可愛い顔だなぁと思って」

「……そっか」

 由貴に可愛いって言われるのは今の私にとって一番嬉しいことだ。それを私にしか聞こえないくらいの小さな声で言ってくれたことが、より気持ちを高ぶらせる。

「そういう由貴も可愛い顔してるよ」

「……うん」

 からかうつもりで言ったんだけれど、由貴はとても嬉しそうに笑っていた。由貴って可愛いって言われる方が嬉しい男の子なのか? いや、まさかの女の子? いやいや、そんなことはないか。

「そろそろ朝礼が始まるね。じゃあ、また後でね」

「うん」

 また後で、か。

 由貴とそんなことが言えるようになるなんて。あなたと話せなかったときは、話したいという程度の欲望しかなかったのに、今はもう……ずっと側にいないと嫌だと思ってしまうほどに、彼への欲は以前と比べて遥かに膨らんでいるのであった。



 二時間目と三時間目の間の休み時間。

 私がお手洗いに行き、自分の席に戻ってくると私の筆箱の下に二つ折りにされている紙が置いてあった。その紙には、


『昼休みに体育館裏で待っています』


 所謂、呼び出しの内容だった。体育館裏というのがベタである。

 私の場合、呼び出しは過去に何度もされたことはあるけれど、それは全て悪いことばかりだ。例えば、人助けの際に私がボコボコにした奴に復讐されるとか。まあ、そういうときには復讐しようと二度と思わせないくらいにボコボコにしてやったけれど。

 この丸みのある字は女子生徒、かな。私に興味を持っていそうな子もいたし、中には恋愛感情を持っている人がいてもおかしくはないだろう。

 ただ、私にそう思わせていて、引っかかりやがった馬鹿な女、というオチが待っている可能性もある。

 何にせよ、呼び出しを受けることにしよう。無視をするのは性に合わないんでね。

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