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第25話『ManDay』

 四月二十日、月曜日。

 沙織さんとデートをしている途中で襲われかけ、桃花と小田桐に助けられ、そして桃花に告白された土曜日。

 土曜日のことがあったから、由貴、梓、桃花と一緒にバイトをした日曜日。

 いつもと違う週末を過ごしたから、月曜日になった今日も普段は起こりえないことが起こりそうで怖かったけれど、梓と一緒に無事に登校できたからひとまず安心。

「おはよう、真央」

「おはよう、由貴」

「ここに来るまでに何かおかしいこととかあった?」

「ううん、大丈夫だよ。梓も一緒にいたから」

「……ちゃんと、真央ちゃんを守ったよ」

 梓は誇らしげな表情をしていた。そういえば、家を出発してから学校の正門に入るまで、梓、結構鋭い目つきをして周りを見ていたな。さすがにそんな女の子が一緒にいたら、ホモ・ラブリンスの連中は襲えないだろう。

「どうやら、その様子だとあれ以降は大丈夫だったんだな」

 小田桐はほっとした胸を撫で下ろしていた。

「まあ、由貴や梓達のおかげで大丈夫だったよ」

「そうか。一応、あの後……安藤を襲おうとしていた女の子達に釘を刺しておいたよ。二度と襲わないと約束しなかったら警察を呼ぶってね」

「……顔に似合わず、結構大胆なことするじゃないか」

「女の子を襲うような連中だ。そのくらい言わないと聞かないと思って」

「……そっか」

「多分ないとは思うけれど……万が一、あの時の彼女達に襲われそうになったら、俺に言ってくれ」

 爽やかな笑みを浮かべながら言っているけれど、その内容はなかなかのもの。由貴のことが好きだと言われたときから只者じゃないとは思っていたけれど、それが今、確信に変わった。油断できないぞ、この男は。

 そんな彼にもきちんとお礼を言いたい。

「土曜日はありがとな、小田桐。おかげで助かったよ」

「……俺はただ、クラスメイトを助けたかっただけさ」

 笑顔という表情を変えずに、さらりとそう言える小田桐がかっこいいと思った。特にキュンときたとか、そういうことはなかった。ただ、素直に……かっこいいなぁ、と。

「真央、僕も頑張って真央のことを守るからね。真央のことを変な目で見ている人がいないかどうか見張ってるから」

「……う、うん。ありがと」

 私のことを守るって由貴が言ってくれたんですけど。物凄く嬉しい。今の由貴の言葉にはキュンキュンしまくりである。体が熱くなってきちゃった。脱ぎたくなるな。

「じゃあ、私は席に行くけれど、見守ってて」

「……うんっ!」

 こんなに可愛い笑顔をした男子が私を守ってくれるなんて。とても心強い味方です。

 キュンキュンした気持ちのまま、席に向かう。週末は色々あったし、学校に『ばらゆり』がいるかもしれないけれど、由貴がいるからきっと大丈夫だ。

「あらあら、今までにないくらいに嬉しそうな顔をしているわね」

 そう言ったのは鷺沼。彼女は何か私に興味がありそうな表情をして、こちらに向かって歩いてくる。

「土曜日、女の人とデートしてたわよね、安藤さん」

「……あ、ああ……そうだけれど、どうして知ってるの?」

 鷺沼には沙織さんとのデートのことを言った覚えはないんだけれど。誰かが彼女に言ったのかな。

「駅の近くのショッピングセンターだったかしら。そこであなたを見かけてね」

「そうだったんだ」

 ショッピングセンターで見かけたってことは、私のワンピース姿をこいつにも見られた可能性があるってことか。

「ワンピース姿、可愛かったわよ」

「……ありがとよ」

 褒めてくれるのは嬉しいんだけれど、何というか……恥ずかしいな。

「やけに嬉しかったのはその女の人とデートができたから?」

「……まあ、それも理由の一つかな」

 沙織さんとデート自体はとても楽しかったし。デート中の沙織さんの表情は本当に私との時間を楽しんでいるように思えて。だからこそ、カラオケボックスでの出来事は沙織さんが考えたことだとは今でも信じたくないんだ。

「じゃあ、岡本君に何か嬉しいことでも言われたから? 遠くであなた達の様子を見ていたんだけれど、彼と話した瞬間に安藤さんの顔がぱあっ、と明るくなったから」

「……まあ、ね」

 さすがは委員長と言えばいいのか、私が単に分かりやすいだけなのか。

「まるで、岡本君のことが好きな感じの喜び方だったわ」

 鷺沼は私にしか聞こえないような小さい声でそう囁いた。

「……そ、そんな風に見える?」

「あっ、ちょっと顔が赤くなった。ふふっ、やっぱりそうだったのね。前からそうかなぁ、とは思っていたんだけれど」

「……そうだよ。そうですよ」

 どうやら、分かりやすい表情や態度をしていただけみたいだな。となると、由貴も私の気持ちに薄々感付いているかもしれない。

「ふふっ、まさか安藤さんが男子に恋をするなんてね。入学した直後のあなたを見たときには想像できなかったわ」

「はいはい、そうですか」

 馬鹿にしやがって。真男とか暴力女とか言われるけど、それでも私は女の子なんだ。恋だって……するに決まってるじゃないか。

「何だか、安藤さん達を見ていると面白いわね。これからも、私はちょっと離れたところから見させて頂くわ。クラス委員としてね」

 ふふっ、と鷺沼は楽しそうに笑っている。当事者としては、私達を見てどこが楽しいのかさっぱり分からないけれど。

「あっ、もう少しで朝礼の時間ね。じゃあ、また後で」

「あ、ああ……」

 鷺沼はさっさと自分の席に戻ってしまった。何だろう、好きなことだけ言われて逃げられたような感じだ。

 鷺沼……か。彼女は面白いから、と言っていたけれど、彼女が私達の様子を見守ってくれていると好意的に受け取っておこう。そう思わないと、由貴のおかげで抱くことのできた嬉しい気持ちが半減してしまいそうだったから。

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