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第19話『Date Day-前編-』

 四月十八日、土曜日。

 今日は沙織さんとのデート。午前十時に円加駅の前で待ち合わせということになっている。誘われた身でも相手を待たせてはいけないので、ちょっと早めに円加駅に向かった。

 今日のことは由貴に知られてしまっているし、周りに言うつもりはあまりなかったけれど、梓だけには言っておいた。楽しんできて、とは言われたけれど、ちょっとだけ寂しそうにも見えた。最近は休日に出かけることがあまりできていないからなぁ。

「何かお土産でも買っていこう」

 梓は今日、部活動でテニスを頑張っている。そんな彼女に対して何か元気を出るようなものを渡したい。

「真央ちゃん!」

 背後から沙織さんの声が聞こえたので、振り返ってみるとそこには手を振りながらこちらに向かって歩いている彼女の姿があった。今日も可愛らしい服装をしていて、彼女の魅力を引き出しているように感じた。

「ごめんね、待った?」

「いいえ、ついさっき来たところですから」

「そっか」

 沙織さんはほっとしたような笑みを浮かべていた。

 うん、何だかこのやり取りといい、沙織さんの笑顔といい……漫画やアニメで観るデートの幕開けとそっくりだ。まさか、同じようなことを体験することになろうとは。しかも、その初めての相手が可愛らしい年上の女性なんて。

「どうしたの、じっと見つめちゃって」

「……いえ、今日の沙織さんも可愛いなと思って。服もとても似合っていますし」

 私が着たら可笑しいと思われそうな女性らしい服装で。

「か、可愛いかな……ありがとう」

 ぽっ、と沙織さんの顔が赤くなった。私にこんなことを言われて驚いたり、恥ずかしくなったりしたかと思ったけれど、笑みを崩さなかったから嬉しく思っているのだろう。

「真央ちゃんは……ボーイッシュな感じでかっこいいね」

「デートとか初めてなんで、服装とか全然分からなくて。結局、普段通りの服装で着ちゃいました」

「それが一番いいと思うよ」

 パンツルックが落ち着くんだよなぁ。スカートは制服以外であまり着ようとは思わない。脚がスースーするのがどうしても、ね。

「でも、もっと女の子らしい服装も似合う気がするな。真央ちゃん、美人さんだし」

「そうですかね。でも、女の子らしいというか……スカートとかあまり穿く気にならないんですよね。嫌いじゃないんですけど」

 制服の時は不思議と脚のことも気にならない。きっと、慣れの問題であると思うけれど。

「じゃあ、一緒に服を見に行こうよ。真央ちゃんに似合う服を買ってあげるよ」

「そんな……いいですよ。値段だってそれなりに高いでしょうから。気持ちだけで十分に嬉しいです」

 私が普段バーゲンで買うような安物とは違うと思う。今の沙織さんの言い方だと一式買うような感じに聞こえたし。

「大丈夫だって。私は大学生のお姉さんだし、バイトで稼いだお金だってあるし。それに真央ちゃんにお礼がしたいから……」

「……お礼なら、沙織さんとのデートで十分なんですけどね」

 何かを買ってもらうほどのことをしたつもりはない。ただ、あの時は沙織さんのことを助けたいから動いたことなんだ。

 でも、ここで頑なに断ってしまっては、沙織さんの気持ち自体を否定しまいそうで嫌だった。お礼がしたい、という彼女の気持ちがあってのことなのだから、ここは有り難く受け取ろう。そうしよう。

「じゃあ、お言葉に甘えて。でも、そういう……女性らしい服装はあまり分からないので、沙織さんが選んでいただけると嬉しいんですけど」

 周りの女性から見て、どんな服が似合うのかという意見は聞いておきたい。特に沙織さんのような方からは。

「うん、是非そうさせて!」

 まるで花がぱあっ、と満開に咲いたように、今日の中では一番の笑顔を沙織さんは私に見せてくれる。年上のはずなのに、こういう表情をすると途端に幼く見えてしまう。そこがまた彼女の魅力の一つかも。

 そして、私と沙織さんは駅と直結しているショッピングセンターへと向かう。その時に彼女から手を握られたけれど、彼女の手はとても柔らかかった。私の手を引く姿はやはり、五歳近く年上の頼れるお姉さんなのであった。



 沙織さんのファッションセンスは凄いという一言に尽きて。

 この人にはこういう服が似合うだろう。彼女の選んだ服は私に「これを着るのはありかも」とすぐに納得させてくれる。その服の種類がワンパターンではなく複数あることがまた凄かった。

「真央ちゃんはスタイルもいいから、色々な服が似合うんだよね」

 沙織さんに言われると、これからは今まで着たことがないような服を着るのもいいかなと思えてくる。特にスカートとか。

 一つ買おうという話になっていたので、特にいいと思った白を基調としたワンピースを買ってもらうことに。

「沙織さん、ありがとうございます」

「ううん、いいよ。あと、一つだけ……私のお願いを聞いてくれるかな」

「何ですか?」

「今買ったワンピースを着てデートしてくれないかな」

「……は、はい……」

 って返事をしてしまったけれど、ワンピース姿を人前で晒すのはちょっと恥ずかしい気もする。沙織さんの前だから抵抗なく色々な服を着ることができたけれど。

 それでも、こういう服を着ることで、もしかしたら由貴に興味を持ってもらえるかもしれない。女の子らしさを持ついいチャンスだ。

「分かりました。では、着替えてきますね」

 そして、沙織さんの買ってくれたワンピースを着て、デートを再開。

 すると、何だかさっきよりも周りから見られているような。きっと、私と腕を絡ませている沙織さんが可愛いからに違いない。

「真央ちゃん、可愛い」

「……沙織さんの選んでくれたワンピースが可愛いんですよ」

「もう、素直じゃないんだから。でも、そういうところが真央ちゃんっぽいかもね。真央ちゃんってツンデレさん?」

「どうなんでしょう」

 ツンツンしているつもりもなければ、デレデレしているつもりもない。絵に描いたようなツンデレさんに出会ったこともないから、実際にはどんな人がツンデレなのかも分からない。


「あの二人、可愛いなぁ」

「背の小さい方は可愛くて、背の高い方はスラッとしていて綺麗よね」

「仲よさそうだから、あの女の子達って付き合ってるのかな?」


 みんな、好き勝手なことを言ってる。まあ、悪い感じのことを言われていないだけいいけれど。

「ほら、ワンピース姿になって正解だったでしょ?」

「そうですね。こういう服装もありなんだなって思いました。あとは、沙織さんと付き合っていると思っている人もいるみたいですよ。ほら、沙織さんが腕を絡ませてくるから」

 という感じで軽い感じで言ったのだが、

「……真央ちゃんと、付き合っているように見えるんだ……」

 沙織さんは頬を赤くしながらそう呟いていた。それは私に向かって言っているのではなく、考えていることが声に出てしまったような感じに聞こえた。そして、この恍惚とした表情は私をデートに誘ったときの表情と似ている。沙織さんから直接伝わってくる熱が僅かに上がったような気がした。

 ショッピングモールにいるということで、沙織さんと一緒に色々なお店に行って、レストラン街にあるパスタ屋で昼食を食べた。

「ねえ、真央ちゃんって音楽は好き?」

「大好きです」

「じゃあ、午後はカラオケに行って歌いまくろっか」

「いいですね」

 カラオケか。音楽は好きだけれど聴く方専門で、カラオケに行って歌うってことは殆どしてこなかったな。好きな曲がたくさんから、今から何を歌おうか楽しみ。沙織さんがどんな曲を好きなのかも知りたいし。

「今まで結構歩いたからね。午後はもう真央ちゃんと二人きりでゆっくりしたいと思ってさ」

「……そうですね」

 一部、引っかかる言葉はあったが、結構歩いたのでゆっくりしたい気持ちがあるのは私も同じだ。

 そして、私と沙織さんはショッピングモールを出て、近くのカラオケボックスに向かうのであった。

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