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第2話 生まれたよ!

よろしくお願いいたします!



目覚めると、美しい若い女性が俺の顔を覗き込んでいた。

闇夜のように艶やかな美しい黒髪に、ルビーのように怪しく光り輝く赤い瞳。

淡雪のごとく滑らかな白い肌、

そしてまるで計算して作り出されたかのように見事な曲線を描く体型。

まさに美を体現した様な人だった。絶世の美女といっても過言ではなかったほどである。

俺がその外見に見とれていると、

その女の人は俺の方に手を伸ばし、抱きかかえようとしていた。



(ちょ、俺、60キロぐらいあるんですが、お姉さん無理しないで!)



そう、言おうと思ったが、声が出ない。

替わりに俺の口から出たのは、「あー、あぅー」という声だけだった。


そして俺の頭の中にある考えが一瞬過ぎった。

俺はあの事故で奇跡の一命を取り留めたが、喋れなくなるほどの後遺症を残してしまったのではないか。


そんな俺の不安をまるで知らないかのように女の人は

俺をヒョイッと抱えると満面の笑みを此方に向けてきた。

こんなに華奢なお姉さんにも軽く持ち上げられるほど俺の体は悲惨なのか。



そう思ったのも束の間、俺は担ぎ上げられた時すぐ横の壁に据付けられていた

等身大の鏡に映る自分の姿を見て言葉を失った。

そこに映っていたのは愛らしいクリクリのお目目をパチクリさせながら鏡を凝視する赤ん坊の姿だった。


・・・・・・。



・・・・・・。



へ?





       ◆◆◆◆◆◆◆

 





俺が状況を把握したのは目覚めてから2時間ぐらい経ってからだった。

まず自分が赤ん坊になっていることだが、この手の話なら小説でいくつか読んだことがある。

転生ってやつだ。


確か俺は赤ん坊を助けようとしてトラックに跳ねられ死んだ。

そう、確かに俺はあそこで一回死んだのだ、それは間違いない。

トラックに轢かれたときの感覚は今でも容易に思い出せる。


しかし、赤ん坊を助けて自分も赤ん坊に戻るとは・・・・。

まぁ、成ってしまったものは仕方がない、俺はどちらかと言うと前向きな性格なのだ。


そしてわかったことがもう一つある。

それはここがとりあえず俺の愛した地球ではないということだ。

このことに関してはさっき窓の外、太陽が二つ存在すると言うことから知ったのだ。

俺の愛しい地球から見える我が天敵、太陽は1つだったはずだから、

まず間違えなくここは別の世界だろう。

まぁ、転生したっぽい時点で薄々は感ずいていたが。


女の人が俺を抱えていると、ドアがノックされ中に一人の男が入ってきた。


そいつは全身に鎧を纏った騎士風の格好で入ってきた。

腰には長剣、右肩脇には西洋風の兜が抱えられていた。



男の方も顔はかなり整っており、女の方と比べても差しさわりのないほどだ。

細身の体つきをしていたが鎧の隙間から見え隠れする引き締まった筋肉から

歴戦の強者であることが窺えた。


男は俺と女の人方へ歩み寄ってきると、唐突に女の人の唇を奪った。

俺の目の前で、だ。


最初こそ驚いてた女の人だったが瞼を閉じ、身を委ねるように男と熱いキッスを交わしていたが、

俺が送った視線に気づいたのか

慌てて離れると、コホン、と咳払いをして男に話しかけた。


「―――・・――・・・・」



「―――・・――・・・・」



俺には聞き取れない言語だった。

日本語でないのは確かだし、英語でもないと思う。

どうやら俺には異世界の言語が最初から分かる的な機能は持ち合わせていなかったらしい。

ただ女の人と男の会話を見ているだけでもなんとなく察しはついた。


きっと俺の前で熱いキッスを交わしたことについて怒っているのだろう。

うん、そうだ。

きっと、そうに違いない。

・・・・そう、思おう。



俺がそんな事を考えていると、男が俺を持ち上げて抱っこし始めた。

最初は抵抗したのだが、何故か男に抱かれているのに悪い気がしなかった。

女の人と男の間で俺は取っ替え引っ替えされていたが、

当の本人である俺は窓から見える遠くの空を目つめ地球に思いを馳せていた。



(ゲーム・・・してぇなぁ。)







       ◆◆◆◆◆◆◆






1週間が過ぎた。



俺もこっちに慣れてきて、色んなことが分かるようになった。

まず、あの若く美しい女の人の正体だが俺のママンだったらしい。

そしてあの凛々しい男は俺のパパンだそうだ。


二人のいちゃ、いちゃする所を見ていれば嫌でも分かる。

俺もその行為の結果、生み出された産物なのだから。



そしてこの家の財政面での事だが、二日前に一度だけ抱っこされて庭に出た。

その際俺が見たのはこの家の外見だった。



お屋敷という言葉にぴったり一致するかのような佇まいの家だった。

左右対称のシンメトリーが保たれたこのお屋敷は高貴な雰囲気を感じさせるだけでなく、

物も、いっぱしの職人が作ったであろう事は素人の俺にも分かる程度に立派な作りだった。


近辺に家はないが、少し遠くに幾つか家の形をした建物が建っていた。

その家とお屋敷(ママンとパパンの愛の巣)を見比べてみるとやはり此方の方が圧倒的にでかい事がわかった。

あと使用人と思わしき女性がメイド服を身に付け俳諧していた事などから

統合すると我が家はお金はあるらしい。


しかし、やはり現代とは違うのか明かりも蝋燭などか細い光を放つものしかなく

皆夜はすぐに眠るらしい。

俺の体も俺の意思とは関係なく、睡魔に襲われたら抗うことなく夢の世界へ飛び立ってしまう。

やはり赤ん坊の体は不便だ。

はやく歩けるようになりたい。





     ◆◆◆◆◆◆◆






7ヶ月が過ぎた。



この頃になると体も少しは動くようになり、俺は貞子を上回る速度で屋敷を俳諧し始めた。(冗談です)

とりあえず、暇だった時は出来なかった探索を始める事にする。

寝室からトイレまでいたるところに移動し、メイドさんとの鬼ごっこもするようになった。


そしてついに一つの部屋から幾つかの本が収納されている本棚を発見した。

これを探していたのだ!

最近ようやく、現地の言葉が理解でき始めたのである。


そして両親とメイドの会話などから幾つか気になるワードが発見された。

「魔物」、「アルンタイト」、「聖騎士デュラハン」などという単語だ。

むろん大体予想は付くものが多かったがそれでも調べてみたいと思ったし、

この世界の事も理解したいと思っていた。


だから俺は本を探していたのだ。

これでようやくこの世界の概要を知ることが出来る。


俺は近くにあった空き箱に乗り、そこから椅子へ机へと移動し、本棚の手前まで来た。

だが肝心な本まではあと少し届かない。

俺がため息をついて机から降りようとするとドアの方から悲鳴が聞こえた。


見るとママンが此方を見て慌てふためいており、急いで駆け寄ってきていた。

何をそんなに焦るのかと、ふと後ろを見ると机の前の窓が全開になっていた。

これにはさすがの俺も驚いて下がろうとするが机の上にあったインクを零してしまい

それに滑り二階の窓から空にダイブしてしまう。


(あ、やっべ)


俺の視界にはグングンと迫る地面だけが映っていた。

この勢いで地面に叩きつけられれば自分の命がないことは理解できた。

だが、この赤ん坊の体で何ができようか。


俺が近づく死を覚悟した時だった。

俺の視界は一瞬グラリと揺れ、次に目を開けたときには俺抱えているパパンの姿があった。


「ま、間に合った~」



パパンは俺を腹に乗せると大の字で地面に倒れた。

息の荒れようから察するによほど急いで俺を助けてくれたのだろう。

しかし、一つ疑問が残る。


視界の片隅でママンが走ってくるのが見えたがそれどこれではない。

庭の端から俺のところまで走り、パパンは跳躍したのだ。

その距離およそ40メートル。


到底、人間の飛べる距離ではなかった。

そしてこの時俺は始めて知ったのだ、内の両親が最強である事を。











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