第四話「おでかけ」
エントランスから出て空が見えた。
来るときはあの長い説明のせいで景色を見ることはできなかったが、今見てみると改めて都会だなあと感じた。
「どこから行こうか、ミッくんどこ行きたい?」
どこも何も何があるのかわからないのに。
「特に行きたいところはないかな。ユキはどっか行きたいとこないの?」
「むー、まあしょうがない。スタバに行くまでの道にあるものを紹介していくよ」
「わかった。よろしく」
俺はユキに並んで歩いた。
「ほら、見て見て、あれが私たちの学校だよ。大きいでしょ、あんな学校そうないよ」
「何と比較すればいいかわかんないわ。まあ、俺が前にいたところよりかは大きいけどさ」
「中学校以外にとくに見せるものなかったね」
「俺は普通に楽しめたけどね。知らない建物ばっかりで」
スタバに入ってよくわからないコーヒーを飲んだ。
甘かった。
そのあとは街をただぐだぐだと喋りながら歩いただけだった。
超高層のビルが並んでいたり道路の幅が半端なく広かったり、俺には見覚えのないものばかりで俺は疑問が絶えなかった。
そのたびに質問してはユキに呆れられた顔をされた。
ビルの部屋の電気が明るく見えてきた頃、ちょうど俺たちはマンションに戻ってきていた。
時刻は午後6時過ぎ。
エレベーターに乗っている時ユキの様子がおかしかった。
「どうした?」
「ちょっとね、エレベーターとか狭いところすごい苦手で」
「そうなんだ、確かにちょっと狭いところって怖いな」
「なんか不安になるよね〜」
口調はとても気楽な感じだけど、顔はものすごく引きつっている。
「4階だからそんなに長くないけど、10階以上だと地獄だな」
「失神しちゃうかもね」
ははは、とユキは小さく笑うが目が死んでいた。
怖い時間や退屈な時間とかは長く感じる。ユキはランプが3階のところに切り替わると「おそい…」と小さく呟いた。
4階。ユキの顔が明るくなる。
「っはー、空気が美味しいね。やっぱり開放的な方がいいよ、うん」
と言いながら部屋と逆方向へ向かっていった。
「あれ、そっちだった?」
そう言うと顔を真っ赤にして戻ってきた。