第三話「やきそば」
ザクッザクッと何か硬いものを切っている音が聞こえてきたので部屋を出て見てみると、ユキがエプロンをつけてキャベツをザクザクと切っていた。
「なに作ってんの?」
「焼きそば〜。あ、なんか食べれないものとかあったら言ってね」
「キャベツ食べれないとか言ったらどうするつもりだよ」
「あー、大丈夫。別に食べれないもの聞いても入れる材料変える気ないから」
なにが大丈夫だよ。やっぱ変な人だな。
いい匂いといい音がしてきた。
ソースとも醤油とも言えない匂い。
焼きそばがシンプルな皿に盛られて出てきた。
「さー、さっさと食べて早く行こうか」
「すごいなー、俺料理とか全然できないわ」
「こ、こんなの簡単だし……。もっとすごいの出来るし……」
照れてるのか怒ってるのか自慢してるだけなのか。
本当に掴めない。
この人が特殊なのかそれとも俺が人の特徴やキャラクターをつかむのが苦手なのか。
後者ならものすごく失礼なことを考えていたものだ。
会話もなく無言のまま絶品の焼きそばを食べ終えるとユキは氷を大量に入れ、そこへ麦茶を入れたコップを二つ持って、片方を俺に突き出した。
「飲んだら行こうか」
「オーケーです」
「なにその変な言葉」
え、おかしいかな。
飲み終えて俺らは部屋を出た。