プロローグ
プロローグと、第零話は違います
4月1日。ばあちゃんが死んだ。
随分と手の込んだ嘘だな、と思った。思い込んだ。思い込ませて欲しかった。
でも現実は非情だ。夢なんか見させてくれなかった。急に持病の発作が起きて、倒れたという。気づいた時にはもう遅かった。
俺は無力だった。なにもできたなかったんだ。もう脈を打ってないとわかった時、救急車を呼ぶことは考えずただどうしたらいいかわからないままばあちゃんのそばで泣いていた。
父さんと母さんが死んだのは5年前、俺が小学4年生の時だった。
仕事で海外に行く途中、飛行機が故障して墜落した。そのことを知ったのは事故から3日後。もう死体は焼けて無くなった後だった。
父さん母さんどちらとも兄弟はいなく、親戚はもう母方の祖母しかいなかった。
そのばあちゃんを救うことができなかった。俺は俺を恨んだ。
「もし、ばあちゃんが死んじゃった月山市に住んでる山城っていう男の人のところに行って育ててもらってね」
手続きとかは山城さんがやってあるらしい。
ばあちゃんの言葉を思い出して、俺はばあちゃんの顔に布をかぶせ、自転車で家を出た。
何度も振り返りながら。
月山市は俺の住んでいる町からかなり遠かった。けどタクシーとか使うお金なんかない。仕方ない。
ばあちゃんが生きている間に書いたメモを少し確認した。
「山城くんはばあちゃんが昔、孤児だった山城くんを助けて育ててあげたから、いい人だよ。山城くんは他にも孤児になった子を引き取って育ててるからにぎやかになるとおもうよ。がんばってね」
涙がメモに落ちた。
その文のしたに書いてある住所を交番に行き、どう行けばいいのかを聞いた。
「ええっ、ここから月山市まで行くのか?自転車で?無理無理、タクシーか電車で行きな。ほら、9:58分発の電車なら今からなら間に合うぞ?なに、金がねえのか。んー、しゃあねえな。ほら、これで行け。じゃあな」
千円を無理に押し付けられて、追い出された。少し不快な気持ちになったが、ありがたい。
交番に向かって頭を下げ、駅に向かった。
この町には友達と言えるような人はいない。別れの挨拶なんかしないし、いらない。
駅員もいない駅のホームに入った。
ボロボロの鉄の屋根の下、ボロボロの木のベンチに座り、電車を待つ。
山城さん…。
どんな人なんだろうか。ばあちゃんが育てたというならいい人に間違いないけど、やっぱり不安だ。
そんなことを考えているといつのまにか目の前に電車が止まっていた。
不安な気持ちをリュックの中の荷物よりたくさん抱えて、電車に乗り込んだ。