詩 習字の時間
俺はわくわくしていた。
何故かというと、次の授業が習字だったからだった。
机の上には、一式が揃えてあり、あとは先生が来るだけだった。
早く来ないかなと指を鳴らしていると、彼女がそっとやって来る。
「どうした?」
「習字の時間が苦手で…」
「え? そうか? 俺は好きだぞ」
小学生の頃から習字の塾に通っており、賞をもらっているのだった。
彼女は俺の机に手を置くと、羨ましそうに見てくる。
「私、下手くそなのよ。筆が上手く動かないというか」
「いいんだよ。お前らしく書けば。先生だって、一生懸命やれば認めてくれるだろうし」
俺は一生懸命、慰めると、筆を持つ。
「コツを教えるとな…」
筆はまだ墨がついておらず、セットした紙の上を滑らせる。
「こうやってとめ、はね、をしっかりして…」
俺の説明に、彼女は真剣に耳を傾ける。
「こうすれば、上手くいくはずだ。分かった?」
「分かったには、分かったけど…。筆が思うように動いてくれるか」
「大丈夫。やれば何とかなる」
彼女の細い手をポンと叩くと、俺は親指を立てる。
あとは彼女次第だった。
「いいな、習字が上手くて。私も習おうかな」
「お前には、お前にしかできないことがあるだろう? 習字、なめるなよ」
「なめてなんかいないわよ!!」
彼女はリスみたいに頬を膨らませ、怒った表情なる。
俺も負けじと、見つめ返す。
すると先に視線をそらしたのは、彼女だった。
「ごめん。軽く言い過ぎたかも」
「いいさ。それよりも、本気でやる気があるなら、俺が教えるっていうてもあるな」
「あなたが? あ、それなら…!!」
彼女の目が変わった瞬間、先生がやって来た。
「まずい。答えは後でね」
「おう。早く行け」
彼女の背中を押してやり、俺は筆を置くと、起立したのだった。




