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年賀状のジョー

掲載日:2025/12/30

 元日の朝、郵便受けに一枚だけ年賀状が入っていた。

 差出人は「ジョー」。名字も住所もない。

 赤いインクで書かれた「ジョー」という文字は、妙に力強く、紙の上で跳ねているように見えた。


 文面はたった一行。


――今年も、君の一年を見届けるよ。


 誰だ、ジョー。思い当たる節はない。けれどその年賀状は、なぜか捨てられず、僕は机の引き出しにしまった。



 その年、不思議なことが起きた。朝、遅刻しそうな日に限って電車も遅れた。失敗したと思ったプレゼンは、なぜか好評だった。コンビニで買ったくじが、三等に当たった。ささやかだが、確実に「ツイている」。



 翌年も、年賀状は届いた。


――大丈夫。まだ道は続いてる。


 ジョーは相変わらず、名字を名乗らない。

 けれど僕は、彼が僕の一年を知っている気がしてならなかった。

 落ち込んだ年には「焦らなくていい」、挑戦した年には「いい顔してる」と、短い言葉だけが添えられていた。



 十年目の元日、僕は決意して返事を書いた。宛先は空白のまま、「ジョーへ」とだけ書いて、短い問いかけの文章とともに投函した。


――君は誰だ。


 その年の暮れ、返事は届かなかった。

 代わりに、元日の朝、いつもより厚みのある年賀状が一枚入っていた。


――僕は、君が諦めなかった可能性だ。

――年に一度しか会えないけど、忘れないで。


 年賀状の裏には、僕が選ばなかった道の断片が、細い文字でびっしり書かれていた。別の仕事、別の恋、別の街。どれも、確かに「僕」だった。


 僕はそっと年賀状を机に置いた。外では初日の光が差し込んでいる。今年も、歩いていけそうだ。


 郵便受けは空っぽだったが、確かに、ジョーはそこにいた。




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― 新着の感想 ―
一体『ジョー』とはどんな存在なのでしょうか? 不思議で、面白いお話でした。
いい話じゃねぇか……
序盤だけ読んだらまるでストーカーじゃないか、と思ったのに、ジョー……………。まさかの存在だった。 やっぱり出任せで、実はストーカーの可能性はあるけど。 年賀ジョー……………。
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