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第三話

扉の向こう側で僕のことを待っていたのは普通の小学校の入学式とは全く違う、みじんも想像していなかった光景だった。サッカー場ほどの広さがある講堂の中に数十の丸テーブルと椅子が置いてあり、そこに保護者と新入生であろう子どもが座り、周囲の人たちと交流を繰り広げていた。


うーん、どゆこと?小学校の入学式ってあれじゃないの?並べられた椅子に座って、ものすごいプレッシャーの中で泣き出さないように我慢する会みたいな感じ(ド偏見)じゃないの?


それなのになんだよ!?このゆる〜い感じは!!もっとお金持ちの保護者がお互いを睨み合っていると思ってたのに!!その時のための対処法も考えてきたのに!!僕の期待と時間を返せよ!!


っと、失礼。ちょっと意外すぎて、キャラが崩壊してしまったね。そんな僕のおおまかな心情を察してか、父様が微笑を浮かべた。まるで僕の反応がどうなるか分かっていたかのように。


「皐月は入学式って聞いて緊張してたかもしれないけど、ここの入学式はあくまで顔合わせみたいなものだから、そこまで重く受け止めなくていいよ。」


父様は周囲に空いている席がないか探す。そうすることほんの数秒、空いている席を見つけたようで、僕の手を引いて歩いていく。しかし…周りからとても見られてる気がするのは僕だけだろうか?


まぁたしかに?父様は世界的な大企業のCEOだし、母様もいいとこのお嬢様だから、見たことある人が多いのだろう。まぁそもそも容姿からして、この中でも段違いに飛び抜けて良いのだけど。


僕を真ん中にして、両隣に父様と母様が座る。対面には僕と同じように両隣に両親が座っている、黒髪赤眼の美少女が座っていた。なんというか自分にも周囲にも厳しそうな、いわゆるザ・委員長って感じの少女である。


「おぉ!!久しぶりだな、天弥。お前の子どもも、ここの生徒になったのか!!」


対面に座っていた少女の父親であろう男が、突如として驚きの声を上げた。口ぶり的に父様の知り合いだろう。チラリと父様のほうを見ると、こちらもなかなか驚いたような表情を浮かべている。


「快斗か…。急に驚かせないでくれ。それに子どもの前だろう?もう少し落ち着け。」


やはり知り合いのようである。快斗と呼ばれた男性は、父様のほうから僕のほうに顔を向ける。大きな笑顔を浮かべていた顔は真顔に戻っており、どこか品定めされてる感じがする。


「快斗…皐月が怖がってるから、それ以上はやめてくれないか。なんでもかんでも観察しようとするのは、お前の悪い癖だぞ。」


「皐月、この人は鈎宮快斗(かぎみやかいと)さんっていうの。お父さんの幼馴染で、親友みたいな人よ。」


僕に耳打ちで教えてくれる母様。父様の幼馴染か…この人も有名企業の社長とかかな?とりあえず挨拶しておこう。悪役令息にならないためにも、好印象を植え付けておいたほうがいいからね。


僕は椅子から立ち上がり、鈎宮さんの前に立ちふさがる。そしてペコリと頭を下げて、自分の名前を告げる。ここでの重要なポイントは、できる限りの純粋な笑みを浮かべることだ。だいたいクリティカルヒットするからね(ゲスの極み)。


「橘皐月ですっ!!えっと…快斗、お兄さん?」


完璧に決まったね。最後を疑問形で締めたのも、下の名前呼びも全ては僕の計画通りである。全ては子どもゆえに許されることだ。そしてその行動は、鈎宮さんの庇護欲を加速させる。


「どうも、皐月くん。俺は鈎宮快斗だ。天弥から君の話はすごく聞いているよ。なんでも自分の天使だとか。」


マジですか、父様。僕が年頃の子どもだったら、“お父さん嫌い”案件ですよ?というか幼馴染ならまだしも、それ以外の人にも言いふらしたりしてないよね?


「でも…皐月くんと話したら、天弥の言った通りなのかもしれないと思ってしまったよ。ほら、あめをあげよう。ここらへんでは売ってない、青森県産りんご味のあめだよ。」


ニコニコと近所のおばちゃんみたいに笑いながら、僕にあめ玉を渡してくる鈎宮さん。何気にあめみたいな普通のお菓子は初めて食べるかもしれない。


「ありがとうございます、快斗お兄さん!!」


満面の笑みを浮かべ、僕はもう一度お礼を言う。初めて会う人にも効果があることも知れたし、あめももらえたし最高だね。


「快斗、僕たちの天使に色目を使わないでくれるか?いくら皐月が可愛いからって、さすがにそれはまずいと思うぞ。」


真面目な顔を浮かべて、そんなバカなことをつぶやく父様。僕と同じようなことを思ったらしい鈎宮さんも、呆れた表情を浮かべていた。


「何を言っているんだ、お前は。それより皐月くん、私の娘もここに入学するんだ。だから仲良くしてくれるかな?」


鈎宮さんは視線を僕から、娘であろう少女に移す。少女は鈎宮さんの視線を受けて、仕方なさそうに立ち上がる。


鈎宮詩織(かぎみやしおり)よ。それと言わせてもらうけど、貴方にだけは負けないから。」


んん?なんかいきなり戦いが始まったよ?あれかな?橘家をライバルだと思い込んで、負けないように戦いを挑むタイプなのかな?なんというか…珍しいタイプの御令嬢だね。


その強烈な自己紹介に彼女の父親は慌て、僕の父親は興味深そうな視線を飛ばし、僕は苦笑いを浮かべることしかできなかった。



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