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魔界の手前で事業を展開する~追放貴族の第二の人生~  作者: 朔もと


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54 村を活性化させ、お金も儲けたい

 その晩は通りすがりの村に泊めてもらい、次の夜は野宿、またその次の日は王宮近くの宿を取って、うちと比較したりした。


 幸せそうな人もいれば、そうでない人もいる。それが世の中だ。


 宿はエリックと同部屋だった。


「ジェイドは、どうして金儲けが楽しいの?」

 と眠る直前、エリックに聞かれた。


「俺は今のところ生きる意味を持たないようにしてる。でも生きているから人の役に立ちたい。医師だから人を助けられることもある。その程度で生きているだけだ、悪いか?」


「ううん。あんまり気負わなくていいんだね」


「そうだ。今日飲んだスープがうまかった。それで充分だ」


 他者を羨むことはこれからもあるだろう。能力を伸ばすことはできるかもしれないが、できないことをイチからしようとは思わない。今からウィルのじいさんに弟子入りしても彼がなくなるまでに覚えられることはきっと少ない。


 打算的だ。エリックはどう考えているのだろう。


 妹の死が確実となり、父親の行方も絶望的なエリックの気持ちなどわかるはずない。

 きっとこのまま、皆には貴族であることも言わないまま共に働いてゆく。別に本当のことを知ってもエリックの態度が変わるとは思えない。


「お世話になりました」

 宿が多い地区だから、うちよりも宿泊代が安かった。

 長期割りはしているがリピーター割りは真似よう。しかし、客が以前に泊まったという証拠がない。ムルモンドの銀行では本人確認のために指紋を用いている。


 エリックはずっと黙ったままだった。やっと話したと思ったら、

「ライラにお土産忘れた」

 だった。


「この辺りで買ってもわからないだろ」


「そうだね」

 と言いながら毒々しい色のキャンディを選んだ。ミンティには羊毛の帽子、ジュリアンにはマフラー。

「ムルモンドたちにも買ったほうがいい? 最近、お金の計算を教えてくれるから」


「あの人たちはエリックみたいに若い子に教えるのが好きだからその気持ちだけでいいと思うよ」


「じゃあこのお菓子をみんなで食べよう」

 なにかの種にチョコがかかった、酒のつまみにもなりそうなお菓子をエリックは選んだ。


 キュリリア村に着くとミンティが小走りで駆けてきた。


「おかえり」


「ただいま」


 たった数日会わなかっただけで、ミンティも急に大人っぽくなったりはしない。実際にはかなりの高年齢だが。


「郵便屋さんが定期的に来てくれることになったよ」

 などとミンティは俺たちがいない間に起こったことを伝えてくれる。


「おかえり」

 パン屋の前を通っても、質屋の前でも声をかけられた。


「ただいま」


 酒場の前にはみんなが集まっていた。


「おかえりでしゅ」

「疲れただろ。飯できてるぞ」


 みんなの顔を見たらほっとした。

 ここを人々が暮らしやすい、滞在しやすい村にしよう。ジェイドとして生き、この村を活性化させる。お金も儲けたい。

 今の望みはそれだけだ。

 復讐などではない。これが俺の生きる道。

 おわり

最後まで読んでいただきありがとうございました。

続編が書ければいいなと思っております。

ブクマ、評価いただけると嬉しいです。


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