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魔界の手前で事業を展開する~追放貴族の第二の人生~  作者: 朔もと


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53 エリックの村

 出立の日を決めて、またウィルやムルモンドに不在を伝える。そうすればなんやかんや手伝ってくれるだろう。


 自分がいなくて会社が回らないなら社長として失敗。自分は社長ではないが雇用はしているから、自分がいなくてもみんなには普通に生きてほしい。


「じゃあ、その村のことを強く頭の中で思って」

 エリックはいつもの格好で、手土産もない。


 ライラの手が光って、茶色いエリックの髪がふわっとしたなと思った。


 目を開けると集落の付近にいた。


「あ、うちだ」

 エリックが指さす。


 小さな家が一ヶ所に密集して建てられている小さな村だった。


 同行をしたのは、エリックが帰らないことを恐れてではない。彼のようにうやむやは嫌なのだ。戻ってくるのを待つような性格ではないから。エリックがいないなら補填をしなければならない。


 ここまで来て、ふと妹と父親が元気で暮らしていたらエリックの立場がないのではないかと思ってしまった。


「俺が行って聞いてこようか?」

 エリックでは村のみんなも彼を哀れむばかり。


「うん」

 今日は素直だな。


 山に囲まれて、集落の周りには田畑が広がっている。

 うちの村と似ているような、そうではないような。エリックもそんなことを考えながら毎日生きていたのだろう。


「エリックの家族について聞きたいのですが?」

 すれ違った村人に尋ねると、明らかに不審な見る目で見られた。


「どういう関係?」


「旅の途中でエリックとその父親に会った者です。飯を分けてもらって命拾いしたのでお礼に来ました」

 と咄嗟に嘘をつく。


「あの二人ならまだ戻っとらん。エリックの妹も死んでしまって、今月から家はもう別の人が住んどる」


「そうですか」

 やっぱりエリックが顔を出さなくて正解だった。

 これを何と伝えようか。


 真実を言うべきか、否か。


 それっぽい顔をしてみることにした。


「ああ、わかった。うちから知った顔が出てきたから、そういうことなんだろうと思った。あいつ、幼馴染なんだ。きっとあの娘と所帯を持ったんだろう」

 エリックはもう自分の村とは反対方向へ歩き出していた。


 これから、数日間、エリックと父が歩いた道を二人で行かねばならないと思うと気が重い。


 エリックは気が晴れた様子で、お金の価値やこれからの展望について俺に聞いてきた。

 衣食住だけでなく、もっと暮らしやすい村にしたいと俺は思っていると伝えた。


「ふーん。全然わかんないや」


「ゆっくり学んでいけばいい」


「あの村で、父と野菜や桑の葉を育てて生きていくと思ったんだけどな」

 エリックが呟く。


「桑の葉? まさか養蚕?」


「ああ。繭だよ」


 絹になるんだよな。


「キャリリア村でもできると思うか?」

 俺は聞いた。名産になるかもしれない。


「桑もあるしね」


「あるのか?」


「ずっと前、ウィルと実を収穫していたじゃないか」


「小さいぶどうだと思ってた、あれか」


 そのまま食べてもうまいし、果実酒にもしてある。

 ミンティはあれでジャムを作った。

 ライラは葉でお茶を淹れてくれた。


 いろんな使い道があるものだ。

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