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魔界の手前で事業を展開する~追放貴族の第二の人生~  作者: 朔もと


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52 うわの空

 平和と退屈はイコールではない。


 クビにした元のパーティと一緒では気まずいのか、動けるようになった勇者は隣り村へと移った。

 うちのほうが温泉もあるのに。


 ちょうどハイネンが馬車で酒を運んで来たから勇者たちを送ってもらった。


「これで、『勇者を治療した男』『勇者が泊まった宿』で売り出せるな」

 とムルモンドが言った。


「そうだな。おすすめメニューも一筆書いてもらえばよかった」

 時すでに遅し。


 冬支度で忙しい。薪を集めておかねばならないし、ニワトリ小屋の防寒に診察室の隙間風対策。


「魔界にも四季はあるのか?」

 薪割をしながらスーザーに尋ねた。


「春と夏には花が咲く場所もあるが、きれいというより不気味だ。多くは毒がある。秋にしか取れないキノコは美味だけれど、冬は寒くてモンスターですら氷漬けで亡くなったりする」


「へぇ。過酷だね」

 体が治ったら、勇者はまた門をくぐるつもりなのだろうか。


 ミンティは酒場の仕事を以前と同じようにこなすが、エリックは魔界から戻ってもうわの空。


「一度、お前の村に行ってみては?」

 と言ってみた。雪が降る前のほうがいい。


「いいよ」


「一緒に行ってやる」

 俺は言った。


「なんで? 他人なのに」


「他人じゃない。雇い主だ。お前がちゃんと働いてくれないならクビにしたっていいんだぞ」


「ちょっと考える」


 村に帰ることはエリックにとって真実を知ることになるかもしれない。

 でも、今のようにもやもやと過ごすなら悲しいことでも受け入れてはっきりさせるべきだ。


 冷たい人間だからそう考えるのかもしれない。知らないままのほうがいいという思考の人もいる。


 俺だって、骨身を惜しんで働いてほしいわけではない。エリックには楽しく過ごしてもらいたいだけだ。


 病気の妹のために父はエリックを置いて魔界へ行った。二人が死んでいてもエリックは生きている。それなのに、何をうだうだ悩んでいるのだろう。


 わからない。

 人の気持ちなど知りたくない。


 スーザーは魔界から拾ってきた宝石が高値で売れて、ムルモンドと王からいただいたものも売ってしまいたいと揉めている。

 仲間でも、じいさんだろうと金が絡むと厄介だ。助け合って生きてきた仲なのに、お金でいがみ合うなんて滑稽。


 女の人のほうが執着するものと思っていたが決めつけだったらしい。ミンティはお給料をあげても喜ばないし、ジュリアンとライラもお金や貴金属に興味はない。


 ジュリアンは花を飾るのが好きだ。そのへんの野花を。


 雪がちらついた日、

「村に行ってみる」

 とエリックが言い出した。


「一人のほうが気楽?」

 状況によっては泣きたいだろうから。


「いや。ついて来てほしい」


 エリックの村はここから歩いて4日もかかるらしい。


「馬でも2日はかかる」

 そんなに休めないと顔に出してしまった。


「向こうに行くだけなら転移魔法使ってあげる。アインを助けてくれたから今回はお金はいらないわ」

 とライラが言った。


「助かるよ」


「その代わりお土産買ってきて。なんでもいいから」

 とエリックの頭を撫でた。


「わかった」

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