49 帰還
なぜか戻ってきたのは隣り村で、
「スーザーに先頭を任せるとこういうことになりがち」
とライラが大笑い。
「先に言ってくれ」
「忘れてたんだって」
「とにかく冷えた体を温めたい」
エリックが言うので飯屋で暖を取ることにした。魔界から戻ったソルジャーたちが皆寒そうにしていた理由が身をもってわかる。あっちはちょっと気温が低い。長く滞在するだけで尊敬する。太陽の光がなければ凍えてしまう。
「うちももっと酒の種類を増やそう」
この店はメニューが豊富だ。料理はすぐに無理でも、酒は幾つか買って帰れば店で出せる。
「ジェイドじゃないか?」
スープを飲んでいるときに声をかけてきたのはハイネンだった。
「よかった。ハイネンが生きていて」
「魔界に行ったけど気づいたらこの村に運ばれていて、今じゃ酒屋の女房にこき使われてる」
と苦笑い。
「酒屋なのか? じゃあ時間があるときでいいからうちにも売りに来てくれないか? もちろん交通料も払う」
ハイネンにアーネットのことを伝えた。
「そうか。死ななそうなばあさんだったけど」
「今はなんとか店を続けている」
「なんとかどころかジェイドは宿屋を拡張し、店も増やしてる」
とエリックが言った。
「そうか。すごいな」
褒めないでくれ、ハイネン。それもこれも、あの日あなたが拾ってあの村に届けてくれたからだ。
キャリリア村へ帰りながら、その中に一人もあの村の出身がいないことに気づいた。
ずっと笑っていられたのは、ライラがいまだに勇者のことをうだうだと引きずっているから。
「トマトが嫌いなくせに何にもひるまなくてさ。口笛がうまくて、田舎の歌を聞かせてくれた。そのくせ帰りたがらない不思議な人だった」
と話しながらとめどなく泣く。
ライラは一方的に話し、誰も口を挟まなかった。
面倒なのだろう。ライラとの関係を崩したくないから、長い付き合いのスーザーですら、
「忘れたほうがいい」
とすら言わない。




