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魔界の手前で事業を展開する~追放貴族の第二の人生~  作者: 朔もと


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24 ケーキ

 亡くなったアーネットはちっとも夢に出てこない。こうしてほしかったとかなかったのだろうか。所有物の中で一緒に埋めてほしかったものとか。


 この店が好きだったのだろう。いつも騒がしく、無臭になることのない自分の店が彼女の誇りだったに違いない。酒場で思い返すアーネットはイキイキしている。もういないのに。


 あんなに働いていたアーネットはそんなにお金を残していなかった。彼女の部屋だけ鉄の扉なのは、お金ではなく襲われることを危惧していたからかもしれない。


「うわぁ。ママが作っていたケーキみたい」

 ケーキを焼くとミンティが子どもみたいに屈託のない顔をケーキに近づける。


「まだ熱いぞ」


「ジェイドってすごいのね」


 かわいい顔をした幼い容姿でも100歳以上のおばあさん。


「ミンティの店にもケーキがあった?」


「うん。ママが作ってた」


 魔界の中の喫茶店なんて、いくら店主が獣人でエルフの妻がいたとしても、襲われないなんておかしい。


 魔王の直轄だったのだろうか。人に安堵を与えただろう唯一の場所。


「その店、覚えてるよ」

 と話すソルジャーもいた。


「俺も。絶対に幻覚だと思ったら普通にコーヒーが飲めて、サンドイッチがうまかったな」


 ミンティは嬉しそうなそれでいて悲しそうな、なんとも言えないような表情をした。


「儲かってたの?」

 とミンティに聞いた。


「それなりに。たまにお金を払えない人がいてパパが追い出してた」


 命からがら逃げこんでもお金がなければ放り出されるのか。

 魔界ではお金は使わないからと置いてゆく人もいるが、そういう人のためにもやはり銀行が必要だ。


「俺も魔界の中のほうが儲かるんだろうか」


「強い用心棒がいないと不安だな」

 エリックが言う。ついて来てくれるつもりなのだろうか。


 儲かるからって魔界は怖い。門の一歩向こうへ行けば、いつも死と隣り合わせ。医学なんて、何の強みにもならない。

 ソルジャーたちもこっちに帰って来て安堵して眠れることに数日は慣れないらしい。あっちに行ったことのない人間にはわからない感覚だ。彼らもケーキを食べて自分の居場所を確認する。

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