第8話 御曹司の転校を聞いたおもちちゃん
昼休みに大翔は、おもちと稲見の3人で弁当を食べていた。
「大翔君……大丈夫ですか?」
「えっ?」
「先程から落ち込んだ顔をしているので……」
「そう……かな?」
稲見が大翔の顔を覗き込む。
「本当だ!どうしたの?」
「別に何も……」
「何かあったからそんな顔してるんでしょ?」
「……」
大翔は弁当を鞄にしまうと、立ち上がる。
「本当に大丈夫だから」
「ちょっと!どこ行くの?」
「次の数学、小テストだからその勉強」
「そうだった!私も勉強しないと!」
稲見は急いで弁当を食べる。
「大翔君……本当に大丈夫なのかな?」
「心配?」
「私の気のせいならいいんだけど……」
「まぁ何かあったのは間違いよね」
稲見は弁当を完食すると、立ち上がる。
「おもちちゃんって今日図書委員だよね?」
「う、うん」
「大翔君を図書室に引っ張るから聞いてくれる?多分私には話さないだろうし」
「わかった」
「じゃあまたメールするから!」
そう言い残すと、小走りで屋上を出た。
放課後。図書室に大翔がやって来た。
「あっ……大翔君……」
「河野から話があるって聞いたんだけど……」
「えっと……とりあえずそこに座ってくれますか?」
「うん」
大翔が座ると、おもちが正面に座る。
「……何かありましたか?」
「えっ?」
「昼休み元気なかったので……」
「……」
「な、何もなければいいんです!勘違いならすみません……」
「実はさ……」
大翔は話し始めた。アメリカの高校に転校することになったことを。
「そんな……まだ高校生活始まったばかりなのに……」
「まさかクソ親父があんな横暴をするとは思わなかった。本当に俺を何だと思ってるんだろうな……」
昴の顔を思い浮かべるだけで虫唾が走る。
「1学期が終わったすぐにアメリカに行くことになるんだ。だから……」
じっとおもちの顔を見つめる。
「おもちちゃんと学校で会えるのも残り僅かだな……」
「……寂しくなりますね」
おもちの顔を見ると、しょぼんとしていた。
「光星学園《この学校》で最初に仲良くなったのが大翔君だったので……」
「河野がいるじゃん」
「そうですけど……大翔君と学校で会うのが楽しみだったので……」
おもちの残念そうな顔を見て、大翔は何も言えなくなる。
「向こうでも頑張ってくださいね」
「うん……」
「確認しますけど……会えなくなったりしないですよね?」
「まぁ……休みの時とかは帰省できるかもしれないから」
「その時を楽しみにしていますね」
おもちの微笑みを見て、大翔の硬くなった体が解れたような気がした。
図書委員の仕事が終わり、おもちは稲見に大翔の事情を話した。
『噓⁉大翔君アメリカ行っちゃうの⁉』
「そうみたい……」
『どうしよう……まだ惚れさせてないのに……』
「そっち?」
『でも恋人になったら毎日大翔君と電話できるから1学期中に頑張らないと!おもちちゃんも協力してくれる?』
「私にできることなら……」
『ありがとう!じゃあまた連絡するね!』
電話が切れると、おもちが空を見上げる。
月明かりがなく、真っ暗な空が広がっている。
(大翔君……)
あの話をしてからずっと大翔君のことを考えている。
高校に入学して初めて私と仲良くしてくれた。
(大翔君がいなくなっても……学校楽しく行けるのかな?)
不安を抱えたまま、夜道を歩いた。




