第7話 学校が楽しいおもちちゃん
「ただいま」
大翔が帰宅すると、杏が出迎える。
「お兄ちゃんお帰り!遅かったね」
「もうすぐテストだから自習してた」
「そっか。大変だね」
大翔が自分の部屋に向かおうとすると、杏が慌てて声をかける。
「待ってお兄ちゃん!」
「何?」
「お父さん来てるよ」
大翔がピタッと動きを止める。
「お兄ちゃんと話がしたいって」
「……わかった」
父親の部屋の前に立つと、ドアをノックする。
「入るよ」
ガチャッとドアを開くと、父親の齋藤昴が本を読んで座っていた。
「入る時は失礼しますだろ」
「俺は社員じゃない。あんたの息子だ。それなのにわざわざ敬いたくない奴に敬語を使わないといけないのか?」
昴が冷たい視線を大翔に向けるが、本人は気にしない。
「……まぁいい。学校はどうだ?」
「あんたが家にいる時の100倍楽しい」
「そうか」
「で?話はそれだけか?」
「私と話すのが嫌な言い方だな」
「嫌に決まってるだろ。俺は母さんを捨てたあんたを許さない」
今でも思い出す。母が離婚して家を出る時に、泣きながら抱きしめられたことを。
「捨てたのではない。価値観の違いから離婚したんだ」
「価値観の違い?あんたの価値観が歪んでるからの間違いだろ」
大翔の怒りが収まらない。
「俺はあの時からあんたを父親と認めていない」
「なら……なぜ私の会社を継ごうとする」
「あんたみたいな奴に社長をやってほしくないからだ」
「……」
二人の間に沈黙の時間が続く。
「嫌われたものだな。私も」
「気づくのが遅ぇよ。クソ親父」
「口の聞き方には気を付けろ」
「安心しろ。口が悪くなるのはあんただけだ」
「……本題に入ろう」
昴が大翔に書類を渡す。
「何これ?」
「見れば分かる」
封筒を開くと、中には大量の書類が入っている。
その書類を読むと、地面に叩きつける。
「どういうつもりだクソ親父」
「そこに書いてある通りだ。大翔にはアメリカの高校に行ってもらう」
昴が立ち上がり、落ちた書類を拾う。
「アメリカの方が日本よりも教育のレベルは上だし、成長できると判断した」
書類を拾い終わると、大翔に突きつける。
「これは大翔の人間としてのレベルを上げる為だ。必ず従ってもらう。行くのは1学期終了……そのすぐ後だ」
夜。おもちは小さなアパートの一室に入った。
「ただいま」
「おかえり。遅かったわね」
「ごめんね。学校で勉強してて……」
「心配になるから次から連絡してね」
「うん」
おもちの母親、善哉あずきは茶碗に白米をよそうと、テーブルに置く。
「ご飯できてるから食べよっか」
「うん!」
二人が席に座ると、手を合わせる。
「「いただきます」」
あずきはご飯を食べながら、おもちに話しかける。
「最近学校はどう?」
「楽しいよ」
「お友達はできた?」
「うん」
「それはよかった。おもちは一人でいることが多かったから心配だったのよ」
「そうだね……」
おもちは大翔と稲見を思い浮かべる。
「皆ね。私に優しく接してくれるの。だから嬉しい」
「よかったわね。いい友達に出会えて」
「うん。友達ができてから学校が凄く楽しい!」
おもちの笑顔を見て、あずきは安心した微笑みを見せる。
「繋がりは大切にね」
「うん!」
一方、大翔は夕食を食べ終わると、布団に籠っていた。
(なんでこんなことになるんだよ……勝手に決めるなよクソ親父)
悔しい思いをするなか、大翔はおもちを思い浮かべるのであった。




