第6話 友達と過ごすおもちちゃん
翌日の朝。担任から呼び出されたおもちが生徒指導室に来ると、担任と真奈美、そして真奈美の取り巻き達がいた。
「ごめんね。朝早く呼び出してしまって」
「いえ……大丈夫です」
「君達……何か言うことがあるんじゃないのか?」
真奈美は不服そうに頭を下げた。
「すみませんでした……」
取り巻き達も頭を下げる。
「ごめんなさい」
それを見たおもちが戸惑ってしまう。
「許す許さないは善哉が決めることだけど……どうする?」
「許すとかじゃなくて……誤解が解ければそれでいいので……私が説明不足なのも悪いので……」
「……」
話が終わり、生徒指導室を出た真奈美と取り巻き達だったが、真奈美はずっと不機嫌そうな顔をしている。
「真奈美……」
「何?」
「……ううん。何でもない」
真奈美の圧に取り巻き達が黙ってしまう。
(なんで……なんでクラスが違うのにおもちと仲良くなってるのよ)
『大翔君は……あんまり人と関わりたくないって言ってて……だから難しいと思います……』
あの言葉を思い出すだけでイライラする。
(自慢にしか聞こえないのに……なんで私が怒られるのよ!)
真奈美が廊下にあるゴミ箱を蹴ると、ゴミが散乱する。
その光景に取り巻き達が怯える。
「覚えてなさいよ。善哉おもち……あんたなんかより私の方が仲良くなれるんだから」
取り巻き達は怖くて、真奈美に声をかけることができなかった。
昼休みになると、大翔は弁当箱を持って教室を出ようとする。
「大翔君!」
稲見が声をかけてきた。
「なんだ」
「もしかしておもちちゃんとご飯食べるの?」
「そうだけど……ってなんでお前がおもちちゃんを知ってるんだよ」
「実は昨日、友達になってさ。そしたら大翔君と仲が良いって聞いて」
「あっそ」
大翔が教室を出ようとすると、稲見が慌てて呼び止める。
「待って!」
「なんだよ」
「私も一緒に食べてもいい?」
大翔が嫌そうな顔をする。
「何その顔。そんなにおもちちゃんと二人きりがいいの?好きなの?」
「お前よりはな」
「酷い!私は大翔君のことがこんなにも大好きなのに!」
「それはどうも」
無視して出ようとすると、稲見は頬を膨らませる。
「ダメってことは放課後に構ってくれるってことでいい?」
大翔の足が止まる。
(それは嫌だな……)
大翔は渋々了承した。
屋上に移動すると、稲見はおもちのお弁当を見て目を輝かせる。
「凄~い!これ全部おもちちゃんが作ったの?」
「うん……」
「美味しそう!一口貰っていい?」
「いいよ」
二人のやり取りを見て大翔が不思議そうにする。
「おもちちゃんって……河野とは普通に話せるんだ」
「そうですね……自分でも不思議に思ってて……」
「ふ~ん……」
稲見がおもちに抱きついて大翔を挑発する。
「羨ましいでしょ?私はおもちちゃんと親友なんだから」
「全然」
「噓だ~!顔に出てるよ?」
「出てねぇよ」
稲見に塩対応の大翔をおもちは不思議そうに見つめる。
「あの……どうして稲見ちゃんには冷たいんですか?」
「俺に金目当てで近づいた女に態度がそっくりだから」
「それだけで私を嫌ってるの?」
「嫌ってるっていうか……警戒してるの方が正しいかな」
―――中学生の頃。当時、大翔には好きな人がいた。
周りに優しくて……笑顔が可愛くて……
彼女といると、大翔は不思議な感情になっていた。
彼女と一緒に勉強していると突然、名前を呼ばれた。
「大翔君……」
大翔が彼女の顔を見ると、恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
「私……大翔君のことが好きなの。だから付き合ってくれる?」
「……!」
大翔は驚きながらも、返事をする。
「……俺も好き」
それから大翔は彼女と学校でも恋人として接したり、遊びに行くことが増えた。
だが……そんな幸せな日々はすぐに終わった。
とある日に大翔が一緒に帰ろうとしていると、彼女がサッカー部の男子と一緒にいるところを目撃した。
「で?どうなんだ?」
「順調だよ。いい感じにラブラブなんだから」
「そうか。金持ちはちょろいな」
「本当にね。この調子で過ごせば私も社長夫人になれるし、そうすればお金は使い放題!いっぱい散財してやるんだから」
「性格悪っ。もし結婚したら俺にも金分けてくれよ」
「えぇ~どうしようかな?」
これを聞いた大翔は拳を握りしめた。
(お前も俺のことを金でしか見てなかったのか……)
翌日、大翔は別れを告げた。彼女には散々ごねられたが、大翔は一歩も引かず、最終的に破局した。
―――「……それから俺は最初に人を信用することはなくなった。いや、信用するのは辞めた。皆、俺を人間ではなく金として見るから」
「……」
黙って聞いていた稲見が口を開く。
「大翔君の気持ちは分かった。でも私はお金目当てじゃない。本当に大翔君が好きなの」
「そう言われても……」
「大翔君に信用してもらえるように頑張る。それまで待ってるから!」
稲見がニッコリ微笑む。
「少なくとも……俺の河野への信頼度は上がってる」
「本当!やった!でもどうして?」
「おもちちゃんと仲良くなってるから……かな?」
それを聞いて稲見は不満そうな顔をする。
「なんで判断基準がおもちちゃんなの?私の中身で判断してもらいたいんだけどなぁ~」
「そう言われてもな……」
二人のやり取りを見ていたおもちはがクスッと笑う。
「なんで笑うんだよ」
「えっと……二人は仲良いなって思って」
「本当⁉そう見える⁉」
「うん」
「やった!これは大翔君が私にハマるのも時間の問題かな?」
「安心しろ。ハマることはない」
「そう言ってられるのも今のうちだよ?」
稲見が嬉しそうな顔をし、大翔は相変わらずの冷たい態度。
おもちは二人を見ながら、ご飯を食べる。
(友達といるの……楽しいなぁ……)
そう思い、おもちは微笑むのであった。




