第4話 人間関係が上手くいかないおもちちゃん
「私と齋藤君をくっつけるのに協力してくれない?」
真奈美の言葉に、おもちは固まってしまう。
「いいでしょ?」
「……」
おもちは昼休みの大翔の言葉を思い出す。
『皆、金を求めて俺と仲良くなりたがる。それにうんざりしてさ』
「ごめんなさい……それはできないです……」
「なんで?真奈美の頼みを断るなんて信じられない!」
「そうよ!そうよ!」
「あんたより成績いいのに!」
取り巻き達に何を言われても、おもちは黙ったまま立っている。
「大翔君は……あんまり人と関わりたくないって言ってて……だから難しいと思います……」
その言葉に、真奈美は怒りを募らせる。
「何?自分は仲良くなれましたって私に自慢してるの?」
「そんなつもりじゃ……」
おもちが反論しようとすると、真奈美は不機嫌そうに鞄を持つ。
「もういいわ。帰ろう」
取り巻き達を連れて、教室を出るとおもちはポツンと一人になる。
(どうして私はいつもこうなんだろう……)
―――小学生の頃、おもちは一人で自由帳に絵を書いていた。
別に絵を描くのが好きだからじゃない。
友達もいないから暇つぶしをしているだけ。
「何書いてるの?」
突然、話しかけられておもちはビクッと反応する。
「えっと……猫……」
「猫か!おもちちゃんって絵上手だね!」
「そう……かな?」
「ねぇねぇ!一緒に絵描こうよ!」
「う、うん……」
それからおもちは話しかけてきた女の子と仲良くなった。
絵を描いたり、楽しく会話したり、一緒に帰ったり……
初めておもちにできた友達だった。
(友達と過ごすのって……こんなに楽しいんだ)
そう実感しながら、おもちが教室に戻ろうとすると女の子の声が聞こえた。
「最近おもちちゃんと遊んでるんだけどさ~つまんないんだよね~」
それを聞いて、おもちの足がピタッと止まる。
「なんで?いつも楽しそうにしてるじゃん」
「でもさ~絵は私より下手だし、会話でも知らないこと多すぎでさ~色んなところがダメなんだよね~」
「じゃあなんで仲良くしてるの?」
「やっぱり親が一人しかいない家だとダメな子が多いってママが言っててさ~それが本当か確かめたらこんなにダメなところあるんだ!って思ったら面白いな~って!」
おもちは涙を流しながら、トイレに走り、個室の鍵を閉める。
(そんなこと思ってたなんて……)
おもちは悲しそうに泣き始めた。
(なんで……なんでそんなこと言うの……?)
中学校に入っても上手くいくことがなかった。
告白されたと思ったら罰ゲームだったり……こっそりいじめられたり……
いずれも自分が太っていることや母子家庭であることが理由でひどいことをされたり、言われたりした。
―――(どうして……なんで私はいつもこんなことになるの?)
気がついたらおもちは地面に両膝をついて号泣していた。
(大翔君しか私を理解してくれないのかな……もし大翔君も私をバカにしてたら……私はどうしたらいいのかな……)
おもちが号泣しているところを誰かが発見する。
「どうしたの⁉大丈夫⁉」
おもちが顔を上げると、稲見が心配そうな表情をして立っていた。
「え、えっと……」
「何かあったの?」
「いえ……何でもないです……」
「そんな顔して何もないわけないでしょ!」
稲見がおもちの肩をさする。
「私でよかったら話してみて。力になるから」
おもちはしばらく黙っていたが、涙ぐみながら話し始める。
「実は……」
おもちから事情を聞くと、稲見は怒りで震えていた。
「何それ!信じられない!そんな奴が愛しの大翔君を狙おうとするなんて許せない!」
「ううん……私が悪いんです。私が真奈美ちゃんに気に食わないことをしたから……」
「何言ってるの!悪いのはあの子達じゃない!ほら行こう!」
稲見はおもちを立ち上がらせると、手を引っ張る。
「ど、どこに行くんですか?」
「決まってるじゃない!職員室よ!あなたの担任に文句言ってやるんだから!」
「……」
おもちは凄い剣幕の稲見に戸惑いながらも、頼もしさを感じた。




