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図書委員のおもちちゃん  作者: 鵲三笠


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第27話 体育祭のおもちちゃん(後編)

大翔が競技を観戦していると、稲見が戻って来た。


「おかえり。1位になれてよかったな」

「……まぁね」

「……?」


いつもの稲見なら喜んでいると思ったのに……

冷たい声で返事されたことに対して、違和感を抱いていた。


「何かあったか?」

「ううん。大丈夫」

「……そうか」


大丈夫じゃなくても話してくれなさそうだ。

それ以上は深掘りせず、話題を切り替えることにした。


「次の競技って何だっけ?」

「確か……大玉転がしだった気がする」

「……ってことはおもちちゃんが出るな」

「応援するの?」


ニヤニヤしながら聞いてくる稲見に対して少しイラっとする。


「そういう稲見も応援するんだろ?」

「もちろん!おもちちゃんは私の親友だからね!」


稲見が元の調子に戻ったことに対して、少しホッとした。



入場口には次の大玉転がしに出場する生徒たちが並んでいる。


(うぅ……緊張する……)


運動が苦手な自分は、本当なら一種目も出場したくない。


(皆の足……引っ張らないかな?)


不安になっていると、先生が合図を出す。


「ではあそこの旗が立っている場所に移動してください」


生徒たちが入場口から向かって行く。

旗のところに着くと、一番目の出場選手から初動の線(スタートライン)に並んでいく。


(玉大きい……あんなの転がせるかな……)


再び不安になっていると、隣から真奈美が声をかけてきた。


「おもちちゃん。一緒に頑張ろうね」

「う、うん……」


大玉転がしだけではなく、真奈美とペアであることも不安の原因だった。


(大丈夫かな……)


自分たちの出番になり、初動の線(スタートライン)の位置につく。

隣に真奈美が並び、転がす体制に入る。


「位置について!よ~いドン!」


生徒たちが一斉に大玉を転がして行く。おもちと真奈美も協力しながら転がす。


(もうすぐカーブだ……)


カーブを曲がろうとすると、それを察した真奈美がニヤリと笑い、大玉を思いっきり蹴った。


「えっ……?」


大玉は真っ直ぐ転がっていき、壁にぶつかった。


「ちょっとおもちちゃん……どこに向かって転がしているのよ」

「……!」


真奈美は口ではそう言いながら、おもちをあざ笑うような表情をしていた。


(ま、まだ間に合う!)


おもちが走って大玉のところに向かうと、真奈美もそれを追いかける。

体制を整えて、再びゴールに向かって転がそうとする。


(1位は無理だけど……まだ……)


急いで転がそうとすると、真奈美が妨害するように蹴って、ゴールから遠ざける。


「あっ……」


遠ざかる大玉を見て呆然とするおもち。その姿を見た真奈美が耳元で囁く。


「何してるの?しっかり転がさないとダメじゃない」

「それは……真奈美ちゃんが……」

「何?私のせいにするつもり?」


真奈美の睨みに、おもちはビクッと体を震わせる。


「ううん……」

「私のせいじゃないよね?おもちちゃんのせいよね?」

「そう……だね……」

「こんなおもちちゃんを見たら大翔君はどんな反応するかな?」

「……っ!」


そう言われて、中学までの自分を思い出す。

運動会ビリで、皆に冷たい目で見られたあの時を……

また会った時に、大翔に冷たい目で見られたら……


『おもちちゃんって本当に運動できないんだね。見損なったよ』

「い、嫌だ……」


大翔君にそんなこと言われたくない……

涙が流れ始め、ガクッと両膝が地面につく。


「大丈夫?」


近くにいた教師がやって来る。


「すみません~おもちちゃん足を怪我したみたいで……保健室までお願いします」


そう告げると、満足そうな表情で真奈美は大玉を転がして、最下位でゴールした。


「真奈美ちゃん。おもちちゃんは?」

「怪我しちゃったみたい。変なところに転がしてたから焦ったんじゃない?」


心の底で笑いを我慢しながら、先生に運ばれるおもちを見つめていた。



全ての種目が終了し、閉会式が終わると稲見と大翔は体育館を出た。


「おもちちゃん戻って来なかったね。怪我したのかな?」

「連絡つかないんだよな……」


メールで『戻ってきてないけど怪我した?大丈夫?』と送信したが、既読がついていない。


「もしかしたら早退したのかも」

「大丈夫かな?心配……」


二人の様子を、真奈美が背後から見つめる。


(待ってて大翔君……私以外に大翔君の隣にふさわしい人はいないって理解させてあげるから)


不気味な笑みで見つめた後、帰路についた。

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