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図書委員のおもちちゃん  作者: 鵲三笠


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第26話 体育祭のおもちちゃん(前編)

体育祭当日。会場となる総合体育館前に、光星学園の生徒たちが集合していた。


「やっほ~大翔君!」

「なんでいつも声かけてくるんだよ」

「だって友達だし!」


稲見がニッコリと微笑むと、担任が生徒全員に指示する。


「中に入るぞ」


中に入ると、次々と指定された席に座る。


「自分の出場種目の時間を把握しておけよ」

「大翔君は何出るんだっけ?」

「リレー」

「そうなんだ!大翔君足早いもんね!」

「河野は障害物競走だろ?」

「うん!楽しみ!」


二人が話していると、次のクラスの生徒が隣のゾーンに座っていく。


「あっ!おもちちゃんのクラスじゃない?」

「本当だ」


見ていると、おもちが席に座ろうとしている。


「おもちちゃ~ん!」


稲見が手を振ると、おもちが微笑んで手を振り返す。


「おもちちゃんと一緒のクラスだったらな~」

「2年になったらクラス替えするから、一緒になるかもしれないぞ」

「えっ⁉そうなの⁉」

「知らないのかよ……」


大翔が呆れた顔になる。


「他学科はコース分けを除いて、クラス替えがないけど文理学科は文系クラスと理系クラスに分かれるからな」

「でもおもちちゃんって理系でしょ?私は文系だから一緒になれないじゃん!」

「残念だったな」

「そう言う大翔君はどっちを選ぶの?」

「志望校の受験科目次第かな。文系科目有利なら文系クラス、理系科目有利なら理系クラス。共通テスト受けるなら文系にするけどな」

「へぇ……ちなみにおもちちゃんと一緒になりたい?」

「開会式始まるぞ」


話をそらす大翔に、稲見はつまんなそうに頬を膨らませた。



開会式が終わり、クラス全員が出場する大縄跳びが始まった。


「それでは大縄跳び……スタート!」


合図が聞こえると、大繩を回し始め、生徒たちが跳び始める。


「「1……2……3……」」


何度も跳び続けているクラスもいれば、失敗してやり直すクラスもいる。


―――「そこまで!」


生徒たちが交代して、大縄跳びが終わると、疲れた様子を見せる生徒たちが何人かいる。


「『障害物競走』に出場する生徒は入場口に集合してください」


稲見ははぁ……はぁ……と息を吐きながら、入場口の方を見る。


「大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと疲れただけ」


体を少し動かすと、大翔に向かってニッコリと微笑む。


「応援してね!」

「頑張れよ」


入場口に向かうと、昔から見慣れた顔がいた。


「……あんたも?正樹」

「どうしてそんな嫌そうな顔をするのか理解できないな」


正樹がフッと笑う様子に、稲見は少しイライラする。


「あんた何番目?」

「5番目だけど」

「一緒じゃない……最悪」

「もしかして幼馴染と対立するのは嫌かな?」

「対立って……あんたと話すのが嫌なの!」

「そう言わずにさ、幼馴染なんだから仲良くしようよ」

「『幼馴染』という関係性で引きずらないで!」


稲見が言葉で突き放すと、正樹は不満そうな表情で口を開く。


「稲見がフラれたって言うから遊園地、一緒に行ったじゃないか」

「あんたが遊園地に行くと心理的にどうのこうのって説明が長いから折れただけよ!」

「またまた……そう照れないでよ。いくら僕のことを好きになったからって」

「……」


体育教師が5番目に出る人準備してと言うと、稲見は軽くストレッチを始めた。


「あんたには絶対勝つ」

「そんなに敵意見せないでよ。仲良く走ろう?」

「絶対嫌だ」


初動の線(スタートライン)の位置につくと、いつでも走れる準備に入る。


「位置について!よ~いドン!」


合図で一斉に走り出す。他クラスの生徒たちが前を走り、稲見と正樹がそれを追いかける。長い網を潜り抜けると、目の前に平均台がある。

順番に落ちずに渡って行くと、お玉とピンポン玉があり、落とさずに前まで移動する。

他クラスの生徒たちがピンポン玉を落とし、稲見が先頭に。

それを正樹が追いかける。最後は麻袋に足を入れて、ジャンプでゴールまで向かう。

稲見が一生懸命ジャンプで向かうが、正樹の方が早く、ほぼ同じ位置に並ぶ。


「ぴょんぴょんしてウサギみたいだね」

「喋るな!集中させて!」

「一緒にゴールしようよ。そうすれば平和でしょ?」

「そんなの……絶対嫌!」


稲見が高く、前にジャンプすると、ゴールテープに当たって1位になる。


「はぁ……勝った……」


稲見が疲れを見せながら、麻袋から足を出す。


「稲見……」


正樹が話しかけてきた。


「何?」

「どうして……そんなに冷たくなったの?前は仲良かったのに……」


子供の頃からずっと一緒で……一緒に遊ぶのが当たり前だったのに……

大人になるにつれて距離が離れている気がして……


「……正樹」


稲見が正樹の顔を見つめる。


「はっきり言うね。私……正樹のこと嫌い」

「……えっ?」

「あなたのせいで中学生の時、どれだけ陰口言われたか分かってるの?」

「……ごめん」

「反省してるなら話しかけないでよ……」


稲見が退場口に向かって歩いていく。


(どうして僕はいつも失敗するんだろう……)


俯いた自分に体育祭の歓声や先生の声……全てが聞こえなかった。

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