第20話 御曹司の短期留学(中編)
※20話からアメリカでの会話は日本語表記になります。英語で話していると思ってください。
アラームが鳴ると、大翔はスイッチを止めて起き上がった。
「もう朝か……」
リビングに向かうと、エリックが歯磨きをしていた。
「おはよう大翔」
「おはよう」
「今日は学校?」
「ううん。学校は明日から。今日は自由行動でいいらしい」
「それなら僕と出かけない?案内するよ」
「それは嬉しい」
大翔も歯磨きを始める。
「ところで大翔はどうして短期留学に?」
「あぁ……父親から強制されて……でも嫌々来たわけじゃないから」
「そうなんだ。日本人って英語を話せない人が多いんでしょ?」
「うん。でもそれは学校での勉強の仕方が悪いからだと思う。あんな授業じゃ誰も話せるようにならないよ」
「そっか……大変だな」
不満気に話すと、エリックは歯ブラシを片付ける。
「今日は大翔も満足できるところに連れて行ってあげるから楽しみにしてて」
「ありがとう」
朝食を食べ終わると、大翔とエリックはサンフランシスコの市街地にやって来た。
「ここがサンフランシスコ……」
「ついてきて。いい場所があるんだ」
二人はケーブルカーに乗車し、目的地に移動していく。
「景色綺麗だな」
「このケーブルカーはいつも観光客で多いからね」
ケーブルカーから降りると、エリックが案内する。
「大学が休みの時とかに友達とよく行く『フィッシャーマンズワーフ』だよ」
フィッシャーマンズワーフには多くの観光客や店員で賑わっていた。
「ここはシーフードの屋台が多くてさ。美味しいご飯がたくさんあるんだ」
「シーフード好きだから嬉しいな」
「何が食べたい?大翔が食べたいものでいいよ」
「そう言われると悩むな……」
美味しそうな料理がある屋台が多く、悩ましい。
「一旦クラムチャウダー食べない?」
そう言うとエリックがクスッと笑う。
「どうしたの?」
「いや……僕がここに来る時と同じ考えを持つ人がいるとは思わなかったから。大翔とはいい友達になれそうだ」
エリックが大翔の手を引っ張る。
「行こう。人が多いからね」
「うん」
日本の昼頃。おもちが本屋でレジ対応をしていると、店長が声をかける。
「おもちちゃん。休憩入っていいよ」
「わかりました」
レジを離れて、休憩室に向かおうとすると、高校生らしきイケメンが本棚を探し回っていた。
「ここの本屋にはないのかな?」
次の本棚を探そうとすると、背後から声が聞こえた。
「あの……」
「!!!」
驚いて後ろを振り返ると、おもちが立っていた。
「すみません……何かお探しなのかなと思って……」
「えっと……心理学の本を探してるんですけどエッセイとかが多くて……文章だと頭に入ってこないから分かりやすい本を探しているんですけど……」
「それでしたらこちらの本がおすすめですよ」
本棚から一冊の本を取り出す。
「この本は説明も分かりやすくて、漫画で例が載っているので理解が深まると思いますよ?」
「本当ですか?ならそれにします」
本を受け取ると、男はおもちの顔を見た。
「凄いですね。おすすめの本がパッと出てくるなんて」
「いえ……たまたま読んだことがあったので……」
「本が好きなんですか?」
「はい……よく読んでいるうちに……」
「羨ましいなぁ。僕も読書を好きになりたいけど、ゲームばっかりやっちゃうからな」
男が腕時計で時間を確認する。
「おっと!早く行かないと夏季講習が始まっちゃう!ありがとう!」
「いえ……お役に立てたのならよかったです……」
男は手を振りながら、レジに向かって行った。
(なんか大翔君と初めて会った時を思い出すなぁ……)
大翔との出会いも、本がきっかけだった。自分が生まれた世界に本がなかったら大翔との出会うこともなかった。
(本が好きでよかった……)
おもちが休憩室に向かおうとすると、本棚に気になる本があった。
(これ……)
その本に手を伸ばした。不思議な力を感じたから。
同時刻。大翔はエリックとのお出かけに疲れて、ベッドに寝転がった。
(はぁ……いっぱい食べた……)
フィッシャーマンズワーフでシーフードをたくさん食べて……観光して……
夕食もたくさん食べた。
(これで明日学校ってしんどいなぁ……)
大翔はスマホに手を伸ばす。
(おもちちゃん……何してるかな?)
日本の今の時間はお昼ぐらいだろう。バイトしてるかな?
(ちょっと電話しようかな?)
おもちに電話をかける。待ち時間が心臓の鼓動を上げていく。
(忙しいかな……)
待っていると、おもちの声が聞こえた。
『もしもし?』
「おもちちゃん。今大丈夫?」
『はい。大丈夫です。何か用ですか?』
「えっと……」
用はない。迷惑だったかな?
『……大翔君?』
「その……話したくて……おもちちゃんと……」
『!!!』
それを聞いておもちの顔が赤くなる。
『忙しかったかな?迷惑なら……』
「いえ!迷惑じゃないです!その……私も大翔君と……お話したいです……」
『そっか……』
大翔は嬉しそうに微笑む。
「今アメリカにいるんだけど……」
大翔は楽しそうに話し始めた。疲れたことを忘れて……
好きな人との電話を楽しんだ。




