第18話 おもちちゃんのお母さん/おもちちゃんと出かけたい
※話が短くなってしまったので、短編2つで18話とします。
『おもちちゃんのお母さん』
とある日の昼。博俊は庭の掃除をしていた。
(今日もいい天気だ。少し紅茶を飲んで休憩でもしますか)
家に入ろうとすると、誰かが玄関前にいた。
「この家かしら?」
「何かご用ですか?」
「えっと……齋藤大翔君の家ってここで合ってますでしょうか?」
「えぇ。お坊ちゃまは今学校ですが……」
「私……善哉あずきといいます。娘がお世話になりました」
そう言ってあずきが頭を下げる。
「あなたがおもち様の……」
「どうしてもお礼に伺いたくて」
「それはどうも。どうぞお上がりください」
玄関の門を開き、あずきを家に招いた。
「ただいま~」
大翔が家に帰ると、博俊が出迎える。
「おかえりなさいませ。お坊ちゃま」
靴を脱ぐと、見知らぬ靴があることに気づく。
「誰が来てるの?」
「行けば分かるかと」
「ふ~ん……」
来客室に入ると、あずきが目に入る。
「あなたが大翔君?」
「そうですけど……あなたは?」
「私は善哉あずき。おもちがいつもお世話になってます」
あずきが頭を下げる。
「おもちちゃんのお母さん……雰囲気似てますね」
「そうかしら?」
あずきが微笑む。微笑んだ顔もおもちにそっくりだ。
「私の入院中、娘を助けてくれてありがとう」
「いえ。僕ができることをしただけです」
「それでも他人を家に住まわせるなんて……中々出来ることじゃないよ」
「そうですかね?」
「私ね。おもちに大翔君みたいな人がいてくれて本当に良かったと思ってるの。あの子……友達作れなかったから……」
「……」
「でもそれは私にも責任があるの。大学生の時に妊娠しちゃって……彼氏に逃げられて……泣く泣く中退して……両親に手伝ってもらって……
結果的にいっぱい迷惑かけちゃった……両親にも……おもちにも……」
用意された紅茶を口に含む。
「当時はそんなに収入もなかったから子育ても大変で贅沢もさせられなかったし、いっぱい我慢させちゃった……周りの子と同じような環境も与えられなかった……
だからいじめられることもあった。私はダメな母親だなって何度も思った」
あずきが大翔の顔を見つめる。
「いつも暗かったおもちがね、高校に進学してから楽しそうに行き始めたの。それは大翔君達のおかげだと思ってる。ありがとう」
「いえ……」
あずきが時計を確認すると、荷物を持つ。
「そろそろお暇させていただこうかしら。タイムセールが近いし。茶菓子を執事さんに渡したからよかったら食べてね」
「ありがとうございます」
あずきを玄関で見送る。
「これからもおもちと仲良くしてあげてね」
「はい」
あずきが出た玄関をじっと見つめる。
(おもちちゃん……大変な環境で育ったんだな……)
これから自分が出来ることはなんだろうか?
『おもちちゃんと出かけたい』
「そこまで。ペンを置いて解答用紙を前へ」
期末試験が終わり、解答用紙が前へ送られていく。
(おもちちゃんのおかげで化学基礎の点数は中間より高いだろうな)
大翔はおもちとの勉強会で手応えを感じていた。
「これで試験は終了だ。次の登校日で結果を発表する。では解散」
大翔が鞄を持つと、稲見がやって来た。
「大翔君!どうだった?」
「90いったと思う。河野は?」
「私は……80はいったかな?」
「そうか。じゃあ帰るわ」
「待って!」
稲見が引き止める。
「何だよ?」
「このまま家に帰るつもり?」
「そうだけど?」
「折角、期末試験が終わったんだからさ。おもちちゃん誘ってどこかに行ったら?」
大翔がピクッと反応する。
「それは……」
「別に私の意見だから聞かなくてもいいけど。じゃあね!」
稲見が教室を出て行くのを見ると、スマホを取り出す。
(どこがいいか調べてみるか……)
大翔はスマホで数分間調べていたが、頭を抱えていた。
(どこがいいんだこれ?)
調べても分からない。どこを選べばおもちちゃんが喜ぶか分からない。
(っていうか調べても全部デートのおすすめサイトだし……まだ友達なんだからそんなところ行ったら……)
いや……もう好きって言うか?
(ダメだろ!まだ出会って三ヶ月だぞ!告白には早すぎないか?)
こうなったらおもちちゃんに聞こう。
おもちちゃんが行きたいところならどこでもいい!
そう思い、おもちのクラスに向かったが誰もいなかった。
(もしかして……結構な時間調べてた?)
一応電話しよう。まだ近くにいるかもしれない。
『はい?』
「おもちちゃん……今どこ?」
「今……駅のホームですけど……」
「……もしかして帰る?」
『……?はい……』
マジか……こんなことになるのなら聞けばよかった……
『あの……何か?』
「いや……試験終わったし……一緒にどこか行かない?って聞きたかったんだけど……」
『あっ……ごめんなさい……』
「ううん。じゃあまた二学期に……」
電話を切ろうとすると、おもちの声が聞こえる。
『そ、それなら!な、夏休み……どこか行きませんか?』
駅に電車がやってくる。おもちは顔が赤くなりながら電話していた。
『……いいの?』
「はい……私も……大翔君とお出かけしてみたいです……どこでもいいので……」
『よかった。ありがとう!またメールするね!』
「はい」
電話が終わると、大翔はガッツポーズする。
(よっしゃぁ!)
喜んでいたが何かを思い出し、動きを止める。
(どこでもいいって……結局どこにすればいいの?)




