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図書委員のおもちちゃん  作者: 鵲三笠


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第16話 おもちちゃんの想い

帰り道、おもちがスマホを見ると大翔からメールがきていた。


『河野が俺たちに話したいことがあるらしい。終わったら家に帰ってきて』


それを見ておもちは不安そうな顔になる。


(話ってなんだろう……やっぱり怒ってるのかな……)


そう思っても帰る以外に選択肢はない。重い足で大翔の家に向かった。



家に戻り、大翔の部屋に入ろうとすると、大翔と稲見の話し声が聞こえた。


「話ってなんだよ」

「……おもちちゃんはまだ遅そうだし、大翔君から先に話をしようか」


大翔君と何話すんだろう……気になってドアをノックせず、聞き耳をたてる。


「大翔君って……おもちちゃんと友達になってから変わったよね」

「そうか?」

「うん。少なくともおもちちゃんがいなかったら私と仲良くなることもなかったし、こうして家に上げることもなかった。違う?」

「……そうだな」


確かに河野と話すようになったのも、おもちちゃんが河野と仲良くなったことがきっかけだった……


「私ね……嬉しかったんだ。おもちちゃんと友達になれて……おもちちゃんが大翔君と友達だったから大翔君と話せるようになった。やっと……やっと近づけた。

そう思ってたけど……」


大翔とおもちは自分よりも仲が良い気がする。

そう気づいてからおもちに嫉妬するようになってしまった。


「河野?」

「ううん……何でもない。私はね……ずっと……あの時からずっと……大翔君のことが好きなの。お金目当てじゃなくて……齋藤大翔という一人の人間が好きなの」


それを聞いておもちはピクッと反応する。

大翔も稲見からの真剣な告白を聞いて、息を飲んだ。


「だから……私と付き合ってほしい」


おもちはそっとドアから離れて、自分の部屋に戻った。



部屋に戻ったおもちはベッドに転がり、布団を被った。


(なんで落ち込んでるんだろう……友達なら喜ぶべきなのに……胸が苦しい……)


おもちは制服の胸の部分をギュッと掴む。


(なんで苦しいんだろう……なんで嬉しく感じないんだろう……)


そう思っていると、ドアをノックする音が聞こえた。


「おもちちゃん。入っていい?」

「……稲見ちゃん?」


ベッドから立ち上がり、ドアを開けようとすると手が動かなくなる。


(嫌だ……開けたくない……聞きたくない……会いたくない……)

「おもちちゃん?」


入らないでほしい……帰ってほしい……もう私と関わらないでほしい……

そう思っていても稲見には届かない。


「入るよ?」


ガチャッとドアが開き、稲見が入ってきた。


「あっ……」

「なんだ……寝てると思ってたら起きてたんだ……」


気まずそうな空気が2人の間に広がる。


「その……ごめんね……おもちちゃん。私……嫉妬してたからとはいえ、ひどいことを言っちゃった……」

「ううん……私も大翔君と仲良くなりすぎてた……稲見ちゃんが大翔君のこと好きって知ってたのに……ごめんね」

「……私、大翔君に告白したの」


それを聞いておもちは耳を塞ぎたくなった。でも聞かないと……友達なんだから応援しないと……


「断られちゃった」

「えっ?どうして……」


―――「だから……私と付き合ってほしい」

「えっと……」


大翔が戸惑っていると、稲見はそうなると分かっていたかのような反応をする。


「やっぱりおもちちゃんが好き?」

「……」

「分かるもん。大翔君、おもちちゃんと一緒にいる時が明るいもん。大企業の御曹司じゃなくて……特待生でもなくて……普通の男子高校生のような感じがするから」


稲見は立ち上がると、ドアに向かっていく。


「じゃあ私……おもちちゃんと話してくるね。帰ってきた音したし」

「河野」


後ろを振り返ると、大翔が頭を下げた。


「……ごめん。河野がどんな人か知りもしないで、勝手に決めつけて……ひどい態度をとってた」

「いいよ。大翔君にも事情があったんだし仕方ないよ」

「話すようになって……河野が悪いやつじゃないっていうのは分かってる。でも……ごめん。俺は河野と付き合うことはできない。俺は……」


大翔はおもちの顔を思い浮かべる。


「分かった。大翔君の恋……応援してるよ」


そう言い残し、ドアを閉めた。


(はぁ……失恋しちゃったなぁ……)


溢れそうな涙を堪えていると、博俊がハンカチを差し出す。


「どうぞ」

「……ありがとうございます」


ハンカチを手に取ると、我慢していた涙が溢れだした。


―――「タイプじゃないって言われちゃった。御曹司って理想高いんだね」


おもちは何と声をかけたらいいか分からず、無言で立ち続ける。


「おもちちゃんはさ……大翔君のこと好き?」

「それは……」

「3人でご飯食べてる時、私と大翔君が話してたら嫌そうな顔してたよね?」

「……気づいてたんだ」


おもちは制服の胸の部分を掴んだ。


「ずっと2人が仲良く話しているのを見たら胸が苦しくなってたの。でも稲見ちゃんが大翔君のこと好きって知ってたから……

応援しなきゃって思ってたからずっと我慢してた……」


おもちが涙を流し始める。


「私は……大翔君のことが好き……ずっと1人だった私を見つけてくれたから……私に優しくしてくれたから……」

「そっか……」


稲見はおもちを抱きしめる。


「私……おもちちゃんを応援する。苦しい思いをしたのは私がそうさせたようなものだから」

「ごめん……ごめんね……」

「謝らなくていい。私はおもちちゃんの親友だから……応援するよ」



外が暗くなり、稲見は玄関で靴を履いていた。


「わざわざ家に送らなくてもいいのに」

「暗い夜に1人で帰らせるわけにはいかねぇだろ。頼んだぞ」

「かしこまりました。お坊ちゃま」


博俊が頭を下げる。


「それとさ……2人に謝らないといけないことがあるんだ」

「えっ?なになに?」

「俺……転校しないんだ……」


玄関がシ~ンと静まる。


「どういうこと?」

「その……クソ親父(あいつ)に聞いたらアメリカに転校じゃなくて……短期留学だったらしい……」

「「えぇっ⁉」」


博俊はやれやれと言いたそうな顔をしている。


「だから色々準備していたのですね。何事かと思いました」

「知ってたのかよ……」

「もちろん。それと昴様は子供の将来を勝手に決めるような親ではございませんよ」

「……どうだか。とりあえずこれからもよろしくな。河野。おもちちゃん」

「うん!」

「こちらこそ……よろしくお願いします」


大翔の微笑みを博俊は嬉しそうに見つめる。


(頼もしい友人ができましたね。お坊ちゃま)

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