第10話 御曹司と暮らすことになったおもちちゃん
※諸事情により、毎週木曜更新となります。よろしくお願いします。
朝。いつものようにおもちが授業を受けていると、担任が教室に入ってきた。
「善哉。ちょっと」
担任が手招きしたので、廊下に出る。
「どうかしましたか?」
「さっき連絡があったんだけど……」
担任が内容を話すと、おもちの表情が一変した。
「……え?」
昼休みになると、稲見がおもちのクラスにやって来た。
「おもちちゃ~ん!今日もお昼食べよう……ってあれ?どこだろう?」
キョロキョロと教室を見渡す稲見に気づいた生徒が話しかける。
「善哉なら早退したぞ」
「えっ⁉なんで⁉」
「さぁ……?授業中突然出て行ったから……」
「そうなんだ……何かあったのかな?」
稲見は心配そうな顔になった。
「そうか……今日はおもちちゃんはいないのか……」
「なんでだろうね?」
おもちが早退したと聞いて、大翔と稲見の二人で食べることになった。
「でも折角二人になったし、私の魅力に気づいてもらうチャンスかな?」
稲見が大翔の顔に近づき、覗き込む。
「大翔君……私と……」
「断る」
「なんで!まだ何も言ってないのに!」
稲見がギャーギャー騒いでいると、大翔のスマホの通知が鳴る。
(メール?誰から?)
メールを確認すると、大翔は立ち上がって屋上を離れる。
「ちょっと!どこ行くのよ!」
「電話してくる」
「誰に⁉浮気⁉」
「いやお前と付き合ってないだろ……」
人通りが少ない場所に移動すると、大翔はメールを送ってきた人物に電話する。
「もしもしおもちちゃん?今大丈夫?」
『は、はい。丁度病院を出たところだったので……』
「それでお母さんは大丈夫なの?」
『実は骨折してしまったみたいで……職場復帰も難しいらしいんです』
「そうなんだ……」
『私……家事とかは手伝い程度しかできないので……これから一人でどうしようかなと思って……』
「……」
大翔は頭で考える。何か自分にできることはないだろうかと。
「……!おもちちゃん」
『はい』
「提案があるんだけど……」
(ほ、本当にいいのかな?)
おもちは自分の荷物を持ってある場所に辿り着いた。それは大翔の家だった。
(ここに住むって……迷惑にならないかな?)
不安を抱えながらインターホンを押す。
『はい?』
「あの……大翔君のクラスメイトの善哉おもちです……」
『善哉様。お待ちしておりました。少々お待ちください』
少し経つと、ドアが開いて博俊が出てきた。
「初めまして善哉おもち様。私、齋藤家の執事の秋山博俊と申します」
「ど、どうも……」
博俊が頭を下げたので、おもちも頭を下げる。
「お坊ちゃまから話はお伺いしております。善哉様のお母様が入院している間、こちらに住むと」
「は、はい……」
「善哉様のお部屋はご用意しています。どうぞこちらへ」
「ありがとうございます」
博俊についていき、家に入るとその豪華さに圧倒される。
「凄いお家ですね」
「えぇ……齋藤家の当主でお坊ちゃまのお父上でもある昴様は内装に強いこだわりがございまして、このような豪華な家を築き上げたのです」
博俊が数あるドアの一つの前に立つと、ドアを開ける。
「こちらが善哉様のお部屋でございます」
おもちが部屋を覗き込むと、その豪華さにまた圧倒される。
「あの……こんなに豪華な部屋……申し訳ないです……」
「ご心配なく。お坊ちゃまのご命令ですので」
「でも……私に似合わないですよ……」
そんなおもちを見て博俊は突然語り出す。
「……お坊ちゃまは自分が御曹司として生まれたことを嫌がっていたのですよ。今までお坊ちゃまのお友達や恋人は全員お金目当てでしたから。
しかし……今日おっしゃていたことがあるのですよ」
博俊はおもちの顔を見つめる。
「善哉様の力になりたいと。自分にできることは何でもしたいと」
「……!」
「お坊ちゃまからそんな言葉が聞けるとは思いもしませんでした。お坊ちゃまと仲良くしてくれてありがとうございます」
博俊が頭を下げる。
「これからもお坊ちゃまをよろしくお願い致します」
「いえ……私も大翔君と一緒にいて楽しいです」
おもちの微笑みを見て博俊はハッとした表情になる。
「……?どうかしましたか?」
「いえ……夕食の時間になったらお呼び致します」
「わかりました。今日からお世話になります」
おもちは頭を下げると部屋に入る。
(あの時の善哉様の微笑み……明美様に似ていましたね……)
博俊は首にかけているペンダントを眺める。
―――「秋山さん。これプレゼント!」
明美が箱を差し出す。
「何ですかこれは?」
「開けてみて?」
開けると中に入っていたのはペンダントだった。
「これ……高いのでは?」
「まぁね」
「さすがに受け取れませんよ」
「なんでよ!私、秋山さんに感謝してるんだよ?その気持ち」
「しかし……」
「いいから受け取ってよ。あれだったら売っていいし」
博俊はため息を吐く。
「……売れるわけないじゃないですか」
「じゃあ受け取ってくれる?」
「はい。大切にします」
「私がかけてあげる」
明美が博俊の首にペンダントをかける。
「似合ってる!よりダンディになってる!」
「褒めてますかそれ?」
「褒めてる褒めてる!」
明美が写真を撮る。
「お~っ!カッコイイ~!」
「明美様を見てると不思議ですね」
「何が?」
「昴様は明美様のような社交的な方は苦手ですから」
「そうね。でもあの人あぁ見えて寂しがり屋よ?」
明美が左手の薬指にはめられている指輪を見つめる。
「だからね。一緒にいるって決めたの。昴がしんどい時も、悲しい時もずっと……昴って口下手なせいで怖い印象持たれているけど本当は優しい人よ?秋山さんも分かてるでしょ?」
「えぇ」
「だからこの子にも……誰かのそばにいて、誰かがそばにいてくれる優しい子になってほしいと思ってるの」
そう言うと、少し膨らんだ自分のお腹に触れる。
「あっ蹴った。反応してくれたのかな?」
「お体は大丈夫ですか?」
「平気平気!秋山さんもこの子が生まれたらよろしくね!」
明美は博俊にニコッと微笑んだ。
―――気がつくと、ペンダントを乗せた手に涙がこぼれていた。
(明美様……)
静かに涙を拭うと、仕事に戻った。




